言い訳「貴方の為にというより、自分の為に」――白の供述
喜劇は笑えるからこそ喜劇であって、どれだけ傷ついてもひな壇では、笑顔を取り繕うこと。
役者が悲しんでたり、怒っている喜劇なんて、誰も楽しくないから――。
アレクスが戻ってきて、オルカの城の情報を手に入れてきました。
城には秘密通路というのがそれぞれあって、何かあったときの退路として備わっているそうです。
その退路を聞き出してきた模様でした。
「密偵にも調べさせた、これでエミリがオルカを裏切ったという事実も作られる」
「……そう、それなら……」
「ああ。オルカを退位させる。一人の女の為に、死を平等にしなかったと」
「次の王位は誰に?」
「皆で話合ったが――お前に任せるそうだ」
アレクスは私へいやらしい視線を交じらせた、私がオルカを好きに出来る権利を与えようとしているのだと、すぐさま判った。
私がじっと見つめてから、アレクスは咳払いし、「下世話だったな」と非礼を詫びた。
「……では、明日より攻め入る。向かうは、死の国だ」
「同盟国は?」
「こうなってくると哀れなもんだ――皆、死の国なんて無くなれば良い、と民衆は唱えているそうだ」
「あら、じゃあうちにもそのうち攻め入られそうね」
「天国に刃向かう馬鹿はいないだろ、地獄と違って」
「アレクス……全ては私の為。いえ、私との契約の為なのでしょうけれど、あの人が大事にしてきたものを馬鹿にしないで」
「何が契約だ、私が何のために動くか、よく考えろと言ったはずだ。
――お前に言い訳の機会を与え続けたが、もう良いだろう。
私はお前を慕っている、だからお前のために全てを与えたい。それだけだ」
アレクスの言葉に、息が詰まる――そんな予感はしていたわ。
していたけれど、私の想いはオルカに一直線に向いていました。
謝罪をすれば居たたまれなくなるだけだから、アレクスの言葉には無反応とするだけしかできません。
アレクスもそれを知っているからか、無反応でした。
城はあっさり攻め入ることが可能で、オルカは静かに捕まったそうです。
オルカは捕まってから、機械人形のようでした。
オルカの私を見つめたときの、切ない嬉笑が心に焼き付いて離れませんでした。
臆病で卑怯な時間は、あと少しで終わる。
さぁ、最後はオルカ、貴方が全て語って?




