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ヘーベルは、相手の着ていた軍隊のような迷彩柄の特殊な装備に身を包むとキューを連れて、脱出を試みる。白で染色された廊下には、様々な絵画が飾られており、どこかの豪華な屋敷だということがうかがえる。

廊下が、二つに分かれていたため、右に曲がると同じ格好をした兵士の二人に出会ってしまう。キューはすぐに天井へと張り付き、ヘーベルは平然とした様子を装う。



「見つかったか?」

「いえ、まだ見つかりません」

「そうか、くそ。どこ行きやがった……!」

「落ち着けよ、それにしても本当に逃がしちまったら……俺らどうなるんだ」

「多分、八つ裂きだぜ。あの人に慈悲なんてないだろうし……」



二人が話し合っているうちにヘーベルは、頭を下げてどこかに探しに行くように逃げようとすると、一人から声を掛けられる。



「おい、そういえばお前見たことないけどさ。所属どこだよ?」

「えっ? 所属……?」

「んぁ~、そうだな。もしかしたら、紛れてるかもしれないし」

「所属は……」



ヘーベルは、答えようとするように、近寄っていく。ヘーベルに、二人は銃を向ける。だが、瞬間的に素早く動かれ、二人は反応ができない。

二人の顔面を同時に殴り抜け、気絶させる。



「ふぅ~……危ない、危ない。銃なんて発砲されたら……」

「ご主人様、大丈夫ですか?」

「まぁね、これくらいじゃやられないから心配しないで」



キューの頭を優しく撫でて、ヘーベルはすぐに脱出するために駆けていく。キューは、歩幅が小さいながらもそれに必死に付いていく。

二人が、駆けた先には外の光景が広がっていた。だが、そこにはまだ壁がないだけで外が見える造りなだけだ。完璧に脱出できたわけではない。

一歩踏み出すとその足先を、弾丸が掠めていく。



「くっ、危なかった」

「ご主人様、大丈夫むぐっ!」



ヘーベルは、すぐに遮蔽物である大きな柱にキューを抱えて隠れこむ。どこに敵がいるのか、確認するためにヘーベルは少しだけ顔を出すと、銃弾がスレスレを通っていく。

だが、今の一瞬でどの場所にいるかは、ヘーベルには辛うじて確認できた。見張り台のように高くそびえ立つ塔にいるのが分かった。



「くっ、流石にここからじゃ遠い……」

「おいおい、どうしてお前がここにいるんだ? お姫様?」



声を掛けられ、横へ視線を移すとそこにはオーディンが笑みを浮かべて立っていた。



(ちっ……こんな時に……)



オーディンは、ゆっくりとその距離を詰めてくる。カツカツと床と靴の接触する音がその静寂な場に響き渡る。ヘーベルは、どうするのか考えを巡らせようとしたその時だ。



「ご主人様、お任せください! 私が、遠くの狙撃手を撃退します。ですから、ご主人様。あいつと戦ってください」

「……分かった。頼むわ」

「お任せあれ!」



バチュンという音とともに青白い閃光を放ち、キューはその場をあとにする。



「さて、お姫様。お部屋に帰りましょうか」

「いや、私は帰らない。私には、帰る場所がある!!」



ヘーベルは、二人の距離を一気に縮め、顔面をめがけて拳を振るうが、その手は掴まれる。だが、威力を浸透させ、その衝撃はオーディンの身を内側から引き裂く。



「ぐっ……。相変わらず、妙な技を」

「私は、お前を倒す!!」



ヘーベルの拳打の応酬が、オーディンを内側から切り裂いていく。だが、オーディンも決して負けてはいない。その分、掌底をヘーベルに食らわせ、ヘーベルに確実にダメージを与えていく。

彼女達の荒っぽい技の応酬は、自分達の身どころか建物を傷つけ破壊していく。様々な部屋を壊しつくし、オーディンの掌底を受け、別の建物に飛ばされる。

その内部は、とても豪華につくられており、至るとこに刀剣などがオブジェとして飾られている。



「くっ……。やっぱり一筋縄じゃいかないか……」

「だ、誰だ!! お前は!!」



声を聞き、後ろへ振り向くとそこにはヘーベルにとっての因縁のある人物が立っていた。その人物を見て、ヘーベルの眉間にシワが寄る。



「お久しぶりですね……王様」

「わ、私を知っているのか? どこかで会ったことが、あったか?」

「いえ、過去からの因縁といいますか……。私には、身に余るほどの怨みが貴方にあります。だから……王様、死んでください」



バンッと地面を蹴り、詰め寄ると部屋の外から西洋の鎧を身にまとった者が現れる。ヘーベルにはまったくそれを障害として認識せず、拳をぶつける。

拳が当たった鎧には、傷はないが鎧を着ていた者の動きが止まり、鎧の内部からドロドロと赤い液体が、染み出してくる。



「邪魔です、いいから一発殴らせてください」

「ひいぃぃ!!」

「大丈夫です、一発で済みますから。痛みが怖いというなら、それを感じる間もなく……してあげますから」



その瞳に光は一切ない。だが、ヘーベルの顔からは、意識せずとも笑みが溢れてくる。手を握り、パキポキと鳴らし、首を回す。体が全力で動けるように慣らしているようだ。



「おっと、いけねぇ。危なく王手を取られるところだった」

「邪魔しないでください」

「そうはいかねぇ。俺の雇い主だから、当然守るだろ?」



壁に飾られていたハンド・アンド・ア・ハーフと呼ばれる大剣とも一般的な剣とも取れない中程度の長さの剣を二本取り、一本は、ヘーベルに投擲する。

ヘーベルは、それをクルリと回転してかわし、柄を握り、その勢いのまま刺突する。

剣先が喉元に届く前にオーディンは避け、剣先を当てて鍔迫り合いをする。



「どきなさい……どけよ!!」

「おいおい、どんだけ王に怨みがあるんだよ」



鍔を横にずらし、オーディンの勢いが横へずれる。ヘーベルは、間髪入れずに斬りこむが、オーディンも横凪ぎの一撃を放つ。

ヘーベルは、斬られる寸前に横へ空中で回転しながらなんなくかわし、袈裟斬りを繰り出す。その一撃は、オーディンの眉間を掠める。眉間から水滴のように赤い液体が、一筋に垂れる。



「いってぇ!! やるなぁ~」

「その首をはねたつもりだったんですけどね」



ヘーベルは、斬撃を入れる。キィンキィンと火花とともに金属音が鳴り、攻防が白熱する。だが、その白熱した二人の勢いに耐えられなかったのか刀身がパキィンと折れ、使い物にならなくなる。



「くっ!!」

「やれやれ、ナマクラかよ。こんくらいで折れるとか……。でもやっぱり俺らはコレだろ?」



ニカッと笑ってオーディンの拳を握りこむ。ヘーベルは、剣を乱暴に捨て、拳を握りこみ構えをつくった。





キューは、雷のような素早さで狙撃手であるスクーシナに向かっていた。



「ちょ、ちょ!? こっち、来てるぅぅ!!」

「ご主人様の為です。お願いです、銃撃をやめてください」

「止めたいけど、止めるわけにはいかないの。こっちも仕事だから」

「なら致し方ありません。私が、お相手します」

「私の相手できるの?」

「試してみてはどうですか?」



ふっと笑うキューの姿に少し不気味がるが、すぐに敵と認識したスクーシナは狙撃用の銃を捨てて、肩から掛けていたホルスターからデザートイーグルとナイフを取りだし、構える。



「行くわよ!!」

「どうぞ?」



銃を構え、弾丸を放つ。大砲のような、けたたましい音がこの空間を支配する。それをキューは、軽々と避ける。

距離をスクーシナが詰めていき、ナイフを使いながら、攻撃を加えていくが、キューは全てを見事にかわしていく。



「私の仕事は、貴方の足止めであって傷付けることではないのです。ですから、攻撃はしません」

「なら私は、ひたすら攻撃を加えていくわ!」



ナイフを使い、切り込むが肘を押さえられ、切り込むことが出来ない。すかさず、デザートイーグルを使用し撃ち込むが、クルリとダンスを踊るかのように軽やかにかわし、距離を離す。

それをスクーシナは、すかさず距離を離されないように詰める。足を払いのけ、体の重心をずらし、転ばせようとする。だが、キューも見た目以上には歳をとっている。

それにすぐ、反応し、払いのけられた右足とは反対の左足を軸に体を回転させ、離れる。



「なかなかやりますね」

「あんたこそ」



二人がニコリと笑みを浮かべた時に、凄まじい暴風が吹きあれ、二人は目を瞑る。髪が風になびき、乱れを直すように二人は、髪をかきあげると吹き荒れた先を見る。

見事に建物は崩れ去り、その先には殴りあい、最後の一撃を放ったヘーベルとオーディンの姿があった。先程の暴風は、二人の戦いの余波らしい。

ヘーベルの拳は、届く前に寸前で止まり、かわりにオーディンの拳は腹を打ち抜いていた。



「ご主人様!!」

「きゃ!!」



バチッと電撃の余波が残り、彼女はすぐさま向かうが途中で、ヘーベルの口からパクパクと動いてるのを感じ、動きを止める。

キューは、口の動きで彼女が何を伝えるようとしているのかを理解しようとする。そして口の動きから、彼女の言葉を理解した。



今は、逃げろ。



彼女は、その言葉を無視して助けに行こうとした。だが、彼女は、ひたすらに逃げろと口をパクパクと動かし続けるその姿を見て。その必死に自分を生きて帰そうとする意思を感じて。

彼女は、小さく歯を食い縛り、目から悔し涙を流し、キューはその場から全力で逃走した。

ヘーベルは、それを確認すると、口をふっと歪ませて笑みをつくると意識を闇に落とした。

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