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親父の苦悩

「改めまして、『ソレノイド王国』『副騎士団団長』『マウス』と申します。あなた様がクロード様とライト様ですね。王よりお噂はかねがね」


「ん??おう、そうだ、ライト様だ」


「テメェは調子にのんな!」


聞きなれない言葉を並べられ困惑をしていたため適当に返事をしたのだが親父に思いっきり拳骨をくらわされた。


「いってぇな親父!」


「ったりめぇだ!テメェが失礼なことをするからだクソガキ!」


俺は痛む頭をさすりながらしぶしぶ親父に言われたように頭を深く下げ「ライトです」と改めて名前を言った。


「息子がすまねぇ。世間知らずなんだ。俺がカイトだ」


「なぁ親父」


「あぁ、『ソレノイド王国』ってのはカイトの住むでけぇ国だ。国ってのは沢山の人がいるところな。『副騎士団長』ってのは国で2番偉い王様を守るやつな。『マウス』は名前だ」


「ふーん」


よくわからないがとりあえず返事をしておこう。


マウスは後ろを振り返りほかの人間たちを紹介し始めた。どうやら後ろにいる結構な人数はマウスの『部下』らしい。


「というわけで異常が今回の『護衛』に当たる部隊になります」


「ったくカイトの野郎、俺が守られる必要ないってわかってやがんのに逃げられないようにこんな『大部隊』用意しやがったな」


「なぁ、親父」


「向かう途中で説明してやるからてめぇは向こうの服持っている奴に教わりながら着替えてこい」


そういわれ親父の指さす方向を見ると服を持つ『部下』が俺の方を見ながら目を伏せていた。


「おう、ありがとうございます?」


「ったくえらそうだな」


親父に文句を言われながら『部下』についていき布でできた三角形の家へ入った。


中は見た目通り狭いつくりとなっていて俺の身長ではぎりぎり頭がつかないぐらいの高さだった。


「ライト様、こちらが着替えの服となっております」


「おう、ありがとうございます?」


俺は服を受け取ると一つを残して足元へ落すと手に持っている服を広げた。


だが普段俺が来ているような毛皮の服とは勝手が違い、丸い骨のようなものが縫い付けてあった。


「………」


さて困った。これはどうやって着替えるんだろう。着方が分からない。普段着ている物は羽織って着るからこれも同じようなものだろうが、空いている場所は腕などを通すところだけだ。


「着方が分からないのですか?」


「あぁ、そうだ。『部下』さんどうやって着るか教えてくれないか?」


「かしこまりました。それと、私の名前は『ユージーン』と申します」


「ん、ユージーンさん、よろしくお願いします」


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「わりぃなアーシャさん。うちの息子あんな感じで」


「いえ、構いません」


「そういいながら顔はすげぇキレてんだけどな…」


「いえ、生まれつきです」


そう淡々と返してくるアーシャだが、人の気持ちに鈍感な方である俺でもわかるぐらい「不機嫌です」と顔に書いてある。


うちのバカ息子のせいであるが、それを踏まえてもうぶなのだなと感じる。おそらく昔から厳しい家庭環境にいて男なんぞ知らんのであろう。


「あー、それにしてもソレノイドに襲撃だなんて世の中も変わっちまったな」


「カイト様や他の皆様のご活躍もあり、平和な時代が続いていたおかげでしょうね。他の国の方々は争いが愚かであったことなど忘れているのでしょう」


俺が出ていた戦争から二十年。俺も老けたし、当時世界を牛耳ろうとしていた帝国もなくなった。これだけの時間がたてば欲が出て自国の強化をしたいと考えるバカも出てくるだろう。


「まぁ、俺としちゃあ丁度良かったがな。あのバカに社会勉強させてやるいい機会だ」


「…失礼を承知で申し上げますが、ご子息は常識だけではなく知識も欠落しているように見受けられます。王国につき次第教育を受けさせるべきと考えます」


「あぁ、だな。いくらバカとはいえ会話の流れで最低限理解できる人間になってると思ったんだが俺の見通しが甘かったみたいだわ」


昔話をしたり文字の読み書きを教えて最低限の教育をさせたつもりだったがそんなことはなく素晴らしいまでにあのガキはバカだった。


このままカイトに会わせればあいつはきっと腹を抱えて笑い、俺の事をバカにしてくるだろう。それだけは避けなければならん。


「わりぃな嬢ちゃん。本当なら俺だけでも先に王都に向かうべきなんだろうけどよ、あのクソガキに教育しなきゃなんねぇから馬車でゆっくり向かわせてもらうぜ」


「来る前の話し合いで決まっていましたし構いません。それよりも聞きづらいお話ですが奥様は?」


「あ?俺が結婚できる訳ねぇだろ?」


「…はい?」


「あのガキは森ン中に落っこちてたんだよ。俺が拾って育てた」


「………」


アーシャは何を言っているかわからないような顔で俺の事を見つめてきた。まぁ説明するのも面倒だしいいだろう。


「あいつは捨て子で俺が育てた。以上だ」


「はぁ」


まぁ理解できないだろうな。王国に流れている俺の話なんてロクなもんないだろうし。


「親父ー、この服動きずれぇよぉ」


「カイトさん我慢してください。王都であんな格好していたらすぐに女性から通報されますよ?」


「んだよ、通報されても騎士団のみんなが出てくるだけなんだろ?そしたら説明すればいいじゃんか」


「そういうわけにもいかないでしょ。それに面倒くさいのでやめてください」


「はいはい」


「本当にわかってますか?」


間の抜けたような声が聞こえ、その声の主が自分の愚息であると一瞬で理解した。


俺はため息をつきながらどんな風にバカにしてやろうかと考えライトの方向を見た。


「………っけ、なんだよクソガキ似合ってんじゃねぇか」


ただ思ったよりうちの息子は小奇麗な恰好が似合うのかもしれん。その証拠にアーシャもぼーっとクソガキを見つめている。

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