フィギュアは買うばかりじゃないんですよ?
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フィギュアねたです。
「いただきます」
「いただきます」
「いつも弁当ありがとうな。すげー美味いしこれで材料費だけってんじゃホント申し訳ないんだけど」
「だからそれはいいって。美味しいって言ってくれるので十分報われてるし」
「そうか、うん。ありがとう」
「ところでさ、最近フィギュアとかどうしてるの? あんまり話を聞かなくなった気がするんだけど?」
「ああ、そういえば話してなかったかもな。勉強会じゃ基本勉強か妹の話ばっかりだし。まあ、順調にフィギュアライフを送ってるぞ。こないだも2つ手に入れた」
「ホント好きねえ。何がそんなにいいの? いや、否定的な意味じゃなくてね」
「わかってるって。そうだな、アニメとか特撮の映像コンテンツって基本的には製作された絵面しか見られないじゃん」
「絵面って、画像ってこと?」
「まあその理解でもいい。映像の再生をお気に入りのシーンで一時停止した時、その画像は確かにじっくり見られるけど、角度を変えてみたりとかはできない。あくまでその一枚の絵として完結している」
「ははあ。つまり、フィギュアは物理的に立体物として手元に置けるので思うままの角度から眺めることができる、と」
「流石理解が早い。でもそれはどちらかというと表面的な理由なんだよね」
「ふうん?」
「フィギュアの作り手、原形師とか造形師とか呼ばれるんだけど、その人たちの技術はもとよりキャラクタへの愛が半端なくてね。製作するときには持てる技術を余すことなく投入し、元となるキャラクタの魅力を最大限に引き出すべく何度も何度も試行錯誤するんだよ」
「へ、へえ。なんかそれって市販品の製作というよりも職人の域に入ってない?」
「職人でもあり芸術家の面もあるのかもしれない。中にはキャラのネームバリューに頼っただけのテキトーなモデルもあったりするけど、俺らみたいなのはただ好きなキャラだからってだけで買うことはしない。きっちり作り込まれた作品を狙って買うんだ。これらは確かに量産品ではあるけれども俺は芸術品だとも思っている」
「なるほどねー」
「魂のこもった作品に魅かれるんだよね。ましてや好きなキャラクターに魂がこもってたら最高だし、それが目の前にあるのならば、我が手に入れるしか他はあるまい」
「熱いわねー。改めてあんたのフィギュアへの思いが分かったわよ」
「そうか、聞いてくれてありがとうよ」
「あんたはフィギュアとアニメ、それとゲームが好きなんだよね?」
「そうだな。趣味っつったらそれくらいだな。お前はどうなん? あんまり趣味の話って聞いたことないけど」
「あたしは専ら料理だね。ケーキとかお菓子作りも含めてね。他は趣味ですって言えるくらいのめり込んでるのは無いわねえ」
「お前の料理の腕は全くたいしたものだからな。今日の弁当のおかず、どれもこれも美味い」
「作るのが楽しくてね。で、それが美味しければなおさらいいでしょ? 喜んでくれる人がいれば幸せよ」
「俺も幸せ、お前も幸せってか?」
「そうそう。あんたが美味しそうに食べてるの見るとホント幸せよ」
「おう」
「でね。ちょっと思ったんだけど、提案っていうか。聞いてもらえる?」
「なんだ? いいぞ」
「あんたの趣味ってどっちかって言うと消費系の趣味じゃない?」
「えーーーと、確かにそうだな。考えたこともなかった」
「あたしのは製作系?とでもいうのかな? 創造系? まあ、食べたら無くなるって意味では消費かもしれないけど、料理を作る行為は製作よね?」
「おう、確かに」
「で、提案ていうのは、あんたもなんか製作系の趣味を持ってみない?ってこと」
「ほほう。……趣味を消費系・製作系に大別するとした場合、現在の俺は消費系しかやってない、ということか」
「ま、まあ、ややこしく言えばそうね。あたしは単になんか作るの楽しいからあんたもやってみないかってだけなんだけどね」
「いや、お前の提案はすこぶる興味深い。言われてみればその通りだ。……だがしかし、製作系の趣味なんてパッとは思いつかん」
「なんで? 今の趣味に直結してるのあるじゃん」
「へ?」
「フィギュアの原形って人が作ってるんでしょ?」
「あ」
「あんただって作って作れないことは無いわよね?」
「そ、それは理論的にはそうだけど……」
「あんた、職人が作ってるような原形を想像してるわね?」
「まあ……」
「趣味でこれから野球を始めようって人がプロ野球で三冠王取れそうもないからやーめたって言ったらどう思う?」
「人それぞれの考えはあるから一概には否定しないけど、端的にはあほかと」
「そう、あくまで趣味は趣味でいいのよ。あたしの料理だって一流のシェフからしたらおままごとみたいなものよ? だけど、あんたは今ここで美味しいって言ってくれてるのよ。ここに確かに幸せはあるのよ」
「そうだな。その通りだ」
「だからさ。あくまで趣味でちょっとやってみない?」
「ふーむ。あくまで趣味は趣味か。ちょっと頭でっかちになってたな。だけどなんでそこまで製作系趣味を推すんだ?」
「こればっかりはやってみないと分からない、だけどやれば絶対わかると思う。あんたは特にそうだと思うわ。答えにはなってないかもしれないけれど」
「そうか。……俺はお前に青春を捧げている。お前はいろいろと教えてくれる。お前のことは信頼している。お前がそう言うならやってみる価値はありそうだ。理由としてはそれで十分だな」
「ず、ずいぶん信頼されてるのね。そんな気構えないで、お気楽な感じでちょっとやってみたらってとこなんだけど」
「原形師かー」
「だから"師"って言葉に囚われなくていいから、もっと気軽にさぁ。そう、自分も作ってみることで、本物の原形師の気持ちがほんのちょっとくらいわかるかも?って程度でさ」
「まだ頭でっかちだったな。……よし、ちょっとやってみるかな」
「いい? あくまでも趣味よ?」
「まあ、もちろんだ」
「なんにせよ、まずはちょっと調べてみるといいね」
「こういうときにネットは助かるな」
「そうね。どんな分野でもネットには初心者向けの情報ってのはてんこ盛りにあるしね」
「先人が厚意で教えてくれるんだよな。感謝しかない」
「で、もしそこそこ腕が上がってきたら」
「上がってきたら?」
「オリジナルのフィギュアも作っちゃう」
「オリジナル? 一次創作ってこと? 例えば?」
「妹ちゃんのフィギュアとか」
「な!? い、い、妹の!? フィギュア!? おおおおお!! な、な、なんでそれを早く言わない!!」
「え? なにこのすっごい食い付き方」
「そうか、それがあったのか。どうして今まで気が付かなかったんだ。俺は馬鹿か。阿呆か。一回死んだ方がいいのか」
「そ、そこまで」
「わかった。超理解した。俺の製作系趣味はフュギュア原形だ。これは決定事項だ」
「うわー、間違えたかもしれない」
「お前のおかげで真の俺の趣味が見つかったのだ」
「ちょ、ごめん、聞かなかったことにできない?」
「ありがとう。本当にありがとう。お前は俺の女神だ」
「聞いてないし」
「はああああ、これって天啓ってやつ?」
「うっとりするな」
「いやもうなんか血が沸騰してるかも」
「滾るな」
「あああああああああ」
「うるさい」
「あああああああああ」
「うるさい」
「あああああああああ」
シスコンじゃねえから
シスコンだろが。




