二人の出会いは歯車を回していく
「…………カローラ…!?」
カローラ。俺の、一つ下の妹だ。
明るくて、誰にでも好かれるような性格で、いつも笑顔でいた妹。
その妹そっくりの少女が俺の方を見たとき、俺は直感的に思った。
違う。
この人は、別の人だ。
たしかに色彩を除けばそっくりだ。髪の色、目の色は失踪した後に変えた可能性だってあるかもしれないが。
しかし俺の記憶のカローラは、いつも笑顔だった。辛い時も無理して笑うような人だった。
この少女の表情には、感情が一切なかった。
「……あの、大丈夫ですか?」
気づけばその少女は俺の近くまで来て、俺の顔を覗き込んでいた。鳩に餌をやっていたのか、餌の袋らしきものを持ったままだ。
「あ、ああ、大丈夫、です。」
「……そうですか。」
「はい…」
そのまま少女は押し黙る。俺も気まずくなって目を逸らした。
少女はしばらく俺の顔を見ながら何か考えていたが、俺から距離を取り、そして寂しそうな顔をして下を向いた。俺が見た、初めて感情を感じる顔だった。
「…す、すみません、ジロジロ見てしまって……」
「あ、いや、その、大丈夫、ですよ」
…最近あんまり親しくない他人と仲良くしてなかったからか、会話が上手くできない。俺はこの状態を早く回避するべく、足を少し後ろに下げ、別れようとした。
つもりだった。
自分の意思だったのかはわからない。ただ、気がつけば少女に俺はぽつりと呟いてた。
「生きてて楽しいか?楽しいことって、なんなのか知ってるか?」
突然の疑問に少女はとても驚いていた。そりゃ誰だっていきなり初めて会った人にこんな質問をされれば驚くだろう。
しかし俺は、感情が欠落したかのような表情で虚無を見つめる少女を見て、ふと思ってしまったのだ。
ハッと気づいた俺は慌てて弁護しようとした。
「いや、その、ごめん、いきなりその…」
「………ない。」
「…え?」
「楽しくない!わかんない!自分が何のために生きてるのか、何のために存在してるのか、私なんかが生きてて良かったのか、何一つわかんないよ!!!」
それは少女がずっと堪えていたかのような、悲痛な訴えだった。まるで何かを失い、毎日と戦ってきたかのような、そんな悲しい叫び。俺と同じような痛みを持った少女。
そんな風に思ってしまったから、俺はこの少女に深入りして、助けたいと思ってしまったのだろう。
「…じゃあ、俺と一緒に楽しいこと、探しに行こうか。」
「…貴方と…?」
「俺も…楽しいことが、なんなのかわかんねーし…その、俺が生きてる意味あるのかなって、思ったりその、するからさ…二つなら、ほら、早く見つかるかもしれねーだろ?」
上手く喋れなくて、舌を噛みそうになる。でも俺は、何故か、この少女とだと何かが見つかりそうだと思ったのだ。
少女はしばらく黙っていたが、口を開いた。
「…名前。」
「ん?」
「貴方の名前。これから、その…一緒に楽しいこと探しに行くのに『貴方』じゃ呼びにくいから。」
回りくどいような、ぼんやりとした返事。しかしそこには承諾の意思がしっかり込められていた。
「俺はカルテ。そこの高校の2年生だ。その、これからよろしくな。」
「私はロンド。…16歳。よろしく。」
ひょんなことから知り合った少女。彼女の顔は、初めて見た時よりも少し嬉しそうな顔をしているように見えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「母さん、…この子たちは誰?」
「この子たちは…貴女の家族よ、ロンド。仲良くするのよ。」
「家族!わかった!よろしくね、私はロンド!」
「…ノックよ。よろしくね、ロンド。」
「ラプでぇす!こちらこそよろしくねぇロンドちゃん!」
……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
…今日あの人…カルテに会えたからだろうか、久し振りに、楽しかった頃の夢を見れたような気がする。
『家族』として紹介された二人。あの頃に戻れたのならどれだけ良いのだろう。
でも私は決めたのだ。これから楽しいことを、カルテと探しに行くと。過去ではなく、この先に存在する、楽しいことを。
ちょっと今回短いかな?ほんとはもっとお出かけさせる予定だった( ˘ω˘ )




