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一話 どうやら大声は自殺行為だったらしいです

——2023年、夏。


コンビニから出た瞬間、むわっとした熱気が僕を包んだ。


だが安心してほしい。


ブラック企業勤務の社畜にとって、この程度は“ぬるい”。


僕の名前は、主人 公(しゅじん こう)


名前からして主人公っぽいが、現実はただの会社の奴隷である。


世間では夏休みの時期らしいが、社畜には関係ない。


「休み? ちゃんと昼休みがあるじゃないか(笑)」


そう言って上司は今日も有給を削っていく。


栄養ドリンクとエナジードリンクを流し込みながら、どうにか生きている。


そんな俺の唯一の楽しみはラノベだった。


主人公が逆転し、無双し、報われる物語。


(……まぁ、現実にはありえないけどな)


そう思いながら横断歩道を渡る。


スマホでラノベを読みながら。


そして——


「……あぁ、異世界転生とかしてみたいな」


その瞬間。


――プップー


クラクション。


目の前に迫るトラック。


(あ、これテンプレだ)


最後にそんなことを思った。


――世界転移(ワールドシフト)


遠くで声がした気がした。


僕の意識はそこで途切れた。


――サァァァ


僕は風の音で目を覚ました。


「は?」


僕が最初に出た言葉はこれだった。


念願の異世界転生?がかなったのにヤッターとはならないらしい。


僕が着ている服を見てみると血がべったりとついている。


(おいおい、こういうの綺麗なっている定期だろ……。)


このままだと血が付いた変質者だ。


早く服を買わなければ。


(てか、何ここ?森?)


周囲を見渡してみるが、

木、木、木……木しかない。


(詰んだぁぁぁぁア!こんなところに村あるわけないじゃん。エルフの隠れ里が先にありそうだよ?)


僕は枝をかき分けて進む。


そういえば、とポケットを漁ると現代人の相棒スマホがあった。


(使えると嬉しいなぁ……)


起動したとき淡い希望はすぐに打ち砕かれた。


電波がない。


(ですよねぇ……。はぁ。)


てか、なんで美女女神とかなしに直転生なの?と僕はブツブツと文句を言いながら進む。


しかし、いくら進んでも森だ。


「いつになったら出るねん!」


僕は半ギレ気味に叫ぶ。


……まぁこの声を聞いてるのは自分だけだと思うけどね。


そうか、自分だけなら近所迷惑にならないな。ん?大声出せば人呼べるのでは?


我ながら名案だ。


僕は大きく息を吸う。


「誰かぁァァァア!いますかァァァア!」


まさかここで元剣道部のメリットが出てくるとは。


「臭い」とか「宗教(笑)」とか散々言われてきたが、役に立つんだぞー


って言いたいけど誰もいやしねぇよな。


——ガルルル


獣の声!?


明らかに違う猛獣だ。


その声はどんどん近くなる。


僕の足がガタガタと震えだす。


(なになに?怖い怖い?)


近くの茂みがガサガサと揺れる。


——来る!


そう思った瞬間だった。


茂みから姿を現したのは巨大な狼だった。


終わった。


僕の異世界ライフここでジ・エンド?


どうやら大声は自殺行為だったらしいです。


異世界転移したらまず最初にやること。


それは情報収集?

それとも武器集め?


……違う。


巨大な狼に追いかけ回されることである。


コウ「いや待って!? なんでこっち来るの!?!?」


しかも何故か殺されない。


むしろ距離が近い。


近い近い近い怖い怖い!!


次回、

「ペットが増えました」


なお本人に飼う意思はない。

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― 新着の感想 ―
ま、そりゃそうなるわな(笑) 主人 公さん⋯⋯。初めて見る名前ですねw 「ペットが増えました」  ん? ペットがもともといるってこと? 要は命乞いしてペットしてもらった的な?
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