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魔力吸収


「エリナ、そろそろ狩りに行くか」


「はーい!」


「今日は日本刀も取りに行くから駄妹も行くぞ」


「はい、お兄様」



 全員が朝飯を食い終わったのを確認してエリナと駄妹に声を掛ける。

 こいついつの間にかお兄様とか言うようになりやがったんだよな。

 お前には本物の兄さんがいるだろと言うと、あれは兄上でトーマ様はお兄様ですからとかわけわからんことを言い出した。

 駄姉妹は最初戸惑っていたが、今ではすっかり子供たちとも仲良くなり、一緒に遊んだり絵本の読み聞かせをしたり、女子チームの連中を風呂に入れてあげたりとかなり助かっている。

 男子チームは綺麗なお姉さんという事で、少し照れて遠巻きにしているが、女子チームは常に駄姉妹から離れようとしない。

 ミコトですら「くりすねー」、「しるねー」と名前で呼ぶようになった。悔しい。


「兄さま、これお弁当です。頑張ってきてくださいね」


「ああ、孤児院の方は任せたぞ婚約者」


「任せてください兄さま。てへへ」





 西の平原に到着すると、早速狩りを始める。

 狩りの方法も熟練してきた。



「じゃあエリナ、ほれ」


「うん! えへへ!」



 駄妹の探査魔法でダッシュエミューを発見すると、俺はエリナをお姫様抱っこして、疾風を使って一気にダッシュエミューに近づく。

 エリナが俺に抱かれたまま風縛でダッシュエミューを拘束するのだ。



「お兄ちゃん……んー」


「走ってる最中にキスをねだるな。もう少しでダッシュエミューが射程に入るぞ」


「あとでしてくれる?」


「あーもうわかったわかった、早く俺の魔力を使って風縛しろ」


「わかった! <風縛>!」



 エリナが抱かれたまま俺の魔力を吸収して一緒に使い、射程を百メートルほど伸ばしてダッシュエミューを拘束する。

 駄姉との研究で、おんぶよりお姫様抱っこの方がエリナが俺の魔力を吸収する効率が増えるのだ。

 理由はよくわからん。

 吸収した魔力も、威力を増すのか射程を伸ばすのかを使う目的を自由に選べるので、消費魔力が多くなることに目を瞑れば非常に使い勝手が良い。



「良し、じゃあこのまま近づくぞ」


「お兄ちゃん! んー!」


「あーもう」



 軽くエリナにキスをして、疾風を使ったままダッシュエミューに近づく。



「てへへ!」



 駄妹はもう一匹のダッシュエミューを捕捉したのか、単独で土魔法を使って高速移動し、氷の棺を使うようだ。

 普段はエリナと二人で狩りをするようになって、駄姉妹は託児所でガキんちょの相手をさせてるからたまに一緒に狩りをする場合は、それぞれ別に行動したほうが効率が良いのだ。


 それぞれ獲物を集合場所に設定した見晴らしのいい丘の上に運んでくる。

 駄妹のマジックボックスのお陰で大分楽になったな。

 貴重なものなので借りたりはしないが、地竜の討伐報酬が出たら買っても良いかもな。



「お兄様、お弁当を出しますか?」


「そうだな、飯にするか」


「はーい!」



 駄妹がマジックボックスからレジャーシートのようなものと三人分の弁当が入ったバスケットを取り出して並べる。

 便利だなーマジックボックス。



「飯を食ったら一時間位獲物を探して、駄目だったら帰るぞ。日本刀を受け取りに行かないと」


「楽しみです! 今借りている日本刀ですら習作なのに素晴らしい斬れ味ですし」


「まあそこまでの業物が必要かというと微妙ではあるんだが、実際死にかけたから仕方がない」


「備えあれば憂いなしと言いますしねお兄様」


「なんかお前に兄呼ばわりされるの慣れないなー」


「そんなお兄様……」


「お兄ちゃん酷いよ、シルお姉ちゃん頑張ってるのに」


「ポンコツなりに頑張ってるのは認めるがな。子供受けはいいから助かってるし」 


「エリナ様ありがとう存じます!」


「シルお姉ちゃん頑張ってね!」


「はい!」


「なんでそんなに仲良くなってんのお前ら」





 昼食後、俺とエリナのペア、駄妹とそれぞれ一匹ずつダッシュエミューを狩り、帰路に就く。



「やっぱマジックボックスは便利だな」


「リヤカーはカートにしちゃったから、たくさん乗せるには元に戻す必要があるしねー」


「お兄様、マジックボックスはいつでも差し上げますのに」


「いやいや、流石にそんな高額品を貰うのは嫌だ。魔力登録の関係で気軽に貸し借りが出来ないしな、いちいち業者に持って行って所有者を書き換えなきゃならなくなるし」


「地竜のお金で買っちゃっても良いよね!」


「それは俺も考えてた。ダッシュエミュー三匹、いやブラックバッファローが一匹は入るくらいのが欲しいな」


「容量少ないと結局使い勝手悪いしねー」


「お兄様、姉上経由で魔導士協会に問い合わせしてみてはいかがでしょうか?」


「安く手に入るのか?」


「可能性があるというだけですが、中容量程度のマジックボックスであれば所有者も流通量も多いですし、大容量タイプへの買い替えを考えてる方がいれば再登録料を考えても、市場で中古品を探すよりは安く手に入るかもしれません」


「新品は、形態を自由に選択できるってメリットはあるけど、百キロの容量で金貨十枚って相場らしいからな。ブラックバッファローが一匹分入る容量の品を新品で買うと地竜の売却益でも足りないだろうし」


「大抵は指輪の形状を選ぶ人が多いのですけれど、魔導士協会所属の人間は姉を筆頭に変わり者が多いようですし、その辺りは何とも言えません」


「むしろ一般的でない形状の方が下取り価格も安そうだし、こちらも安く買えて良いかもしれないがな。まあ駄姉に聞いてみるか」



 てくてくと歩いていると、西門が見えてくる。

 門番に何人目の嫁さんだっけ? って聞かれるのはいつものことだからスルーだ。


 換金の為に冒険者ギルドに到着すると、いつも通りに他のギルド員は皆無だ。

 極わずかにいるまともな冒険者は日が暮れるまでせっせと採取したり狩りをしたりするらしいからな。

 ちなみに俺達は今現在採取は行っていないが、託児所の敷地の一部で薬草栽培を行っている。

 孤児院よりも広い庭だったので、土地を買った時から畑を作って婆さんが管理しているのだ。

 サルノコシカケみたいな高額の物は栽培できないが、季節に合わせて栽培の容易な薬草でも定期的な収入になるだろうと婆さんも言ってるしまあ大丈夫だろう。



「「こんにちは!」」


「ういっす」


「トーマさん、エリナさん、シルヴィアさん、今日もご苦労様です」


「駄妹のマジックボックスにダッシュエミューが入ってるから、取り出す場所を指示してやってくれ」


「かしこまりました。そのまま査定いたしますので少々お待ちください」



 駄妹が奥に案内されている間にエリナと掲示板のチェックだ。

 ランクが上がっても美味しい依頼が無いんだよな。午前中だけで終わる依頼しか受けないからだけど。

 エリナが「えへへ!」と俺の前に移動してきたから軽く後ろから抱きしめてやる。



「って魔王の奴生きてたのか……。まあ実際死んでても気分悪かったから生きててくれて良かったけど」



 <徴税局からの依頼 貧民街〇区〇番△△に住む「魔王」の捕縛依頼 報酬 銀貨二枚>


 掲示板に貼られている魔王の捕縛依頼を見て眩暈がする。



「お兄ちゃん、また税金滞納なのかな」


「いい加減にしろよ魔王……徴税局も無能揃いなのかよ」


「また捕まえる?」


「関わりたくないから無視だ無視」


「でも私が絡まれたらお兄ちゃん助けてくれるんでしょ?」


「次こそちゃんととどめを刺すと思うぞ」


「えへへ!」



 こちらを振り向き、「ぎゅー」と言いながら抱き着いてくる嫁の頭をなでながら依頼を見る。

 碌な依頼がないな。

 資金が足りなくなったら高額依頼の護衛任務とかやるしかないのかね。


 色々考えてると、事務員から査定終了の声が掛かったので、カウンターに向かう。

 


「ダッシュエミュー四匹で、税金分を差し引いて銀貨七十一枚と銅貨八百枚ですね」


「わかった。その金額で問題無い」



 俺とエリナが登録証を出して、処理が終了する。

 駄妹は立場が色々あれだし、冒険者登録をしていないから登録証を出す事は無い。

 分け前は要らないから全て託児所の運営に回してくれとの事なので甘えている。



「それと地竜のオークションは本日王都で行われております。結果は本日中に出ますのですぐにトーマさんの口座に入金処理がされます。早ければ本日午後、遅くとも明日にはお引き出しが可能ですよ。明細は一週間以内に届くと思いますので、届きましたらお渡しします」


「わかった。高値がつけば良いけどな」


「地竜目的の入札者が結構来場されているようですよ」


「なら期待しておくよ。また来る」


「お待ちしてますね」



 受け取り手続きをすべて完了したので冒険者ギルドを出る。

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― 新着の感想 ―
[一言] 魔王がボルカン、ドーチン、的な立ち位置になったら笑う
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