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高額依頼の理由


「お兄ちゃん、今日は何人か見かけるね」


「異常発生で馬車や一般の人は通らなくなってたんだけどな。あれが猟師とかハンターって奴かな」



 今日も今日とて異常発生中のブラックバッファロー狩りである。

 事務員が言ってたように、猟師なのかハンターなのかはわからんが四、五人のパーティーをたまに見かけるようになった。

 この辺じゃ見かけない銃を装備してるから、銃なんか効かないドラゴンじゃなく明らかにブラックバッファロー狙いだろう。

 冒険者とは明らかに装備の質も腕前も良さそうだ。


 なので落とし穴は使わず、視界内に野菜を三ヶ所程撒いて様子を伺う。

 あまり多く撒いていっぱい釣れると危ないからな!



「今日はブラックバッファローは見かけないね」


「今朝は商業ギルド登録を先にしちゃって出遅れたから、猟師っぽいのが俺達よりもっと先の方で狩ってるのかもなー」


「猟師の人たちなら効率よくたくさん捕まえる方法を知ってるかもしれないね!」


「あまり狩られ過ぎて俺達の分が無くなっても困るんだがな」


「私はダッシュエミューでも良いけどね」


「たしかにダッシュエミューでもって、なんだ? エリナ注意しろ、でかい反応がこちらに向かってる!」


「えっ、うん!」



 俺の探査魔法に何かが反応する。半径四百メートルの探査範囲に、ブラックバッファローよりでかい生物が引っかかった。


「噂の地竜かもしれん、疾風で逃げる準備をしろ」


「わかった!」


「ん? ブラックバッファローか? いや馬に乗った人か」


「地竜の近くに人がいるの?」


「追われてるようだが、探査範囲ギリギリで良くわからん。でかい反応は地竜だろうな。たしかに馬並みの速度だ」


「助けなきゃ!」


「ああ、誰も居なきゃさっさと逃げ出したいところだが、流石にな。でも本当にヤバくなったら見捨てるぞ。それは承知しろ」


「うん!」



 四百メートルを競走馬が走った場合四十秒だっけ、サラブレッドは走りに特化してるし軍馬は仮に一分必要として、俺の魔法の射程圏百メートルまで四十五秒か、時間が無い。



「一応落とし穴は掘っておくべきか。もし地竜がジャンプして避けたら空中にいるタイミングで業炎球をぶち込めば、そのまま穴に落とす位は出来るかもしれん」


「うん」


「エリナ」


「なに? お兄ちゃん」


「いいか、さっきも言ったが、本当にヤバくなったらエリナだけでも逃げろ。俺が危なくなっても振り返るな」


「えっ、嫌だよお兄ちゃん!」

 

 

 俺はエリナにキスをする。

 不意にキスされたエリナは戸惑う。



「いいから聞け。すぐそこに落とし穴を掘るから、エリナはその落とし穴に近づいた地竜に業炎球を連打しろ。ただし町までの疾風を使う分は残しておくんだぞ」


「嫌だよ! お兄ちゃん!」



 駄々をこねるエリナをぎゅっと抱きしめる。



「頼むから聞いてくれ俺の大好きなエリナ。俺は大丈夫だ。奥の手があるし逃げるだけなら俺一人でも問題無い」


「でも」


「これが金貨百枚の仕事の怖さなんだぞエリナ。でも大丈夫だ、俺はなんてったって全属性魔法が使える勇者だからな!」


「お兄ちゃんもちゃんと危なくなったら逃げてくれる?」


「約束する。だからエリナも約束してくれるか?」


「わかった」


「良い子だ」



 抱き合ったままエリナと再度キスをする。



「じゃあエリナはこの穴が射程距離の半分になるあたりまで町側に下がっててくれ。俺はこの穴の手前で待機して、後退しながら魔法をぶち込んで穴に誘導していく。エリナの業炎球を食らっても飛び越えて来るようなら、疾風で町に逃げるんだぞ。ちゃんと門番に言って門の閉鎖と支援要請もしてくれ」


「うん。お兄ちゃん、絶対に帰って来てよ」


「当たり前だ、死ぬのが怖いからヘタレなんだぞ。ヘタレ舐めんな。行けエリナ!」


「はい!」


陥穽(トラップホール)!」


 エリナが泣きながら東門の方に走っていくのを確認した俺は、東門と地竜の間に、深さ十メートル、縦二十メートル、横二十メートルの穴を掘り、背中に背負っていた籠をその場に置く。



 ガガガガガッ



 馬蹄の音がかすかに聞こえてくると、一騎の騎兵を、顔だけで人間の身長はありそうな竜が追っているのが視認できた。

 地竜はコモドドラゴンのように四つ足で這いつくばり、騎士を追っている。



「こっちだ!<フレアアロー>!」



 追われている騎士にわかるように、普段よりも小さい炎の矢を数十発、騎士から見えるように射出する。

 するとこちらに気づいたようなので、落とし穴とエリナの攻撃魔法の射線上に入らないよう手を振って誘導する。


 段々と騎士と地竜が近づいてくる。

 俺もエリナの射線を確保しながら、地竜が射程圏に入るのを待つ。


 騎士が俺とすれ違う。



「すまない!」


「任せろ、門はもう少しだ!」



 女の声だ。

 だがすぐにそんなことは忘れて、射程圏内に入った地竜が落とし穴の方に来るように挑発する。



土の槍(アースグレイヴ)!」



 土の槍を地竜の顔にぶち当てる。

 ダメージはほとんどど与えられなかったようだが、こちらに気を引くことには成功した。

 次はエリナの業炎球次第だが。



 ドバアアアアアアアアアアン!!



 そう思った瞬間に俺の横数メートルを業炎球がすり抜けていき、地竜に直撃する。



砂嵐(サンドストーム)!」



 効いたかどうかを確認する前に、視界を奪う為に土と風を合成した砂嵐の魔法を発動する。



 このまま落とし穴に落ちればっ!



 ドバアアアアアアアアアアン!!


 ドバアアアアアアアアアアン!!



 業炎球の連発だ、流石エリナ。頼りになる。



 ギシャアアアアアアアアアアアアアア!



「効かないのか?! なら審判(ジャッジメント)(サンダー)!」



 中級の雷魔法だ。俺の手持ちで最強の魔法を、魔法石の力を使って放つ。

 指定したポイントの半径三十メートル内に、無差別で連続落雷攻撃をする魔法だ。

 だが地竜の周辺は砂塵や爆炎、黒煙で有効打を与えたかわからない。

 ただ動きが遅くなったのが確認できる程度だ。

 これなら疾風を使わずに走りながら後退して、魔法で攻撃ができる。



 ドバアアアアアアアアアアン!!


 ドバアアアアアアアアアアン!!



 エリナも業炎球を連発する。全て地竜に命中しているが、それでもまだ地竜は止まらない。

 俺も射程圏内に地竜を保ちながら後退し、魔法を浴びせていく。



電撃の槍(ライトニングスピア)!」


 ドバアアアアアアアアアアン!!


 ギシャアアアアアアアアアアアアアア!


電撃の槍(ライトニングスピア)!」


 ドバアアアアアアアアアアン!!



 くっそ、止まらんぞこいつ!

 だが、煙と砂嵐で目くらましは出来ているから、落とし穴には引っかかるかもしれん。



炎の槍(ファイアランス)!」



 雷撃の槍も効果が無さそうなので、より目くらましになるように炎の槍に切り替える。



 ドバアアアアアアアアアアン!!



 よし、もう落とし穴だ!



 ダダダダダダンッ!



 何っ⁉ ジャンプした⁉



 ドバアアアアアアアアアアン!!

 ドバアアアアアアアアアアン!!

 ドバアアアアアアアアアアン!!

 


 予定通り空中にいる地竜にエリナの業炎球が連続で命中する。

 流石俺のエリナ! 愛してるぞ!



暴風(ストーム)!」



 空中で少しでも押し戻せるように突風を起こす風魔法を使う、が



 ドォン!!



 落とし穴を飛び越えやがった!

 地竜のジャンプで百メートル弱あった俺との距離が一気に半減する!

 逃げるか?!


 後ろを振り向くと、さっきの女騎士は馬が潰れたのか、馬を捨てて一人走っている。

 移動速度が上がる疾風のような魔法は使えないのか、もしくは魔力切れなのか。


 だが、これで逃げる選択肢は無しだ。

 俺一人ならなんとかなるが、あの女騎士を抱えたら地竜に追いつかれる。


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