婚約しました!
「おっエリナちゃん、婚約おめでとうね!」
「ありがとうございますおばさん! やっと口説き落としました!」
そう言うと、エリナは俺の腕にしがみつきながら野菜売りのおばちゃんに指輪を見せる。
エリナとペアで着けてる指輪は指輪高級ゾーンの宝飾店で買った物だ。
極細のワイヤー状のミスリルを何百本も使って細かく編んで作られた指輪で、魔力を増幅する効果がある魔宝石をあしらってある。
エリナへのプレゼントにあのアマからの金は使いたくなかったので、自分で稼いだ金だ。
この世界では婚約指輪や結婚指輪は一般的だが、魔宝石の指輪を使うのは貴族や富豪だけだ。
魔物から取れる魔石とは違って、天然の鉱脈から極稀に採取される魔力を帯びた宝石は魔宝石と呼ばれる。
エリナの為に買った指輪には、常に微量の光を放つ透き通ったエメラルドの魔宝石があしらわれており、エメラルドは特に風魔法との相性が良いんだと。
サイズも自動調節される優れものだ。
魔宝石は非常に高価だが、一カラットと小さい石なので、値段はペアで金貨三枚。
俺の指輪は雷魔法と相性のいいトパーズでエメラルドより安かった。
握りこぶし大の魔宝石をあしらった魔法杖は国が買えるレベルらしい。
物語の中では魔宝石の指輪でプロポーズされるのが一種のステータスとされている。
恋愛物語が大好きなエリナは、知り合いに見せまくって常にご機嫌なのだ。
「お兄さんはヘタレ勇者だしねぇ。黙ってればいくらでも男が寄ってくる位の良い女なのに、こんな美人なエリナちゃん自ら口説き落とさないと決断出来ないなんてねぇ」
「でもお兄ちゃんは、私が結婚式で着るドレスまで用意しててくれたんですよ!」
「へー、ヘタレ勇者なりにちょっとは勇気を出したのかねぇ。結婚式が楽しみだねエリナちゃん」
「式には絶対に来てくださいね、おばさん!」
「楽しみにしてるよ」
大晦日に年越し蕎麦ならぬ年越しスープパスタを食い終わった頃に、予定通り服屋が来てくれた。
数時間早かったが、誕生日のサプライズプレゼントとしてガキんちょ共にはおしゃれ着二着、エリナには純白のウエディングドレスを贈る為だ。
ドレスを見てびっくりしていたエリナに結婚式用のドレスだと言うと、エリナは更にびっくりし過ぎてふわふわした状態のまま、服屋の女性にサイズ調整するのでと言われるままに部屋に連れ込まれて行った。
部屋でドレスに一度袖を通した姿を鏡で見た時に、やっと実感したらしく、そこからエリナの異常なハイテンションが収まらない。
イヴの夜からハイテンションで俺から終始離れなかったが、ウエディングドレスを試着してからは着替えと風呂とトイレ以外は絶対に俺から離れようとしない。
いや、着替えの時は平気で俺の前で服を着替えるから、俺が目を背けてるだけで一緒に居るのは間違ってないか。
寝る時ももちろん一緒だ。
キス以外はしてないけどな。ヘタレだし。
健康状態の欄も
<健康状態:幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ幸せ……>
とバグってやがる。
というか重すぎて怖い。
文字だけはみ出てるから、エリナが胸元から登録証を出すたびにめんどくさいし、レーザービームみたいに半透明の「幸せ」って文字が五十メートルくらいまで伸びやがる。
俺の心以外にはノーダメージだから人畜無害で安全だけど。
というか健康状態じゃないだろ、感情だろと突っ込むも誰も聞いてくれない。
余りにも酷いバグだったので、元日でも営業していた冒険者ギルドに朝一で乗り込み、クレームを入れてエリナの登録証をタダで作り直させた。
が、表示バグは変わらなかった。「公式な身分証として問題無く使えますよ」とニヤニヤ答えたあの事務員はいつか不幸な目にあえばいいのに。




