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月明かりの下で <プロポーズの挿絵あり>



 食事も風呂も終わり、他に誰もいないリビングで、エリナの髪をドライヤー魔法で乾かしている。

 いつもの風景だな。



「よし、終わったぞエリナ」


「ありがとうお兄ちゃん!」


「そろそろガキんちょどもは寝たかな?」


「もうとっくに寝ちゃってると思うよ?」


「じゃあプレゼントを枕元に置いてきちゃうか」


「わかった! 結局みんなに手鏡とぬいぐるみとリボンを買ってきちゃったよ」


「俺も結局全員一緒にしちゃったな。あと婆さんに万年筆を買ってきたから一緒に渡してやってくれ。どうせお前も婆さんに何か買ってきたんだろ?」


「うん。服を買ってきたよ」


「ガキんちょどもに渡し終わったら、院長室でまだ仕事してるだろうけどそのまま渡しちゃってくれ」


「お兄ちゃんはお礼を言われるのが苦手だからね!」


「まあそういう事だ。それが終わったらお前にプレゼント渡すから。......そうだな、裏庭で待ち合わせるか。さっきちょっと見たら月が綺麗だったから月を見ながら待ってるよ。婆さんの話は長そうだからな」


「わかった!」



 一旦部屋に戻って婆さんの万年筆と男子チームのプレゼントを持ち出し、エリナに万年筆の入った箱を渡す。

 ボールペンは試作品ですら満足な物がまだ出来ない上に、コストが高すぎて量産なんかはまだまだ年数が掛かるとの事だったが、万年筆は比較的手の届く値段で買えた。


 俺は男子チームの部屋にこっそり入り、プレゼントを枕元に置いておく。

 一号が気づいて起きたようだが、気づかない振りをして狸寝入りをしているようだ。


 プレゼントを渡し終わると、一旦部屋に戻って予め用意しておいたエリナへのプレゼントを持って裏庭に行く。

 ちょっとドキドキしてきた。

 シミュレーションは何度もしたんだが、いざとなるとヘタレが出てくるな。

 随分待たせたけど、エリナは喜んでくれるだろうか。


 丁度満月なようで、月をぼーっと見てみる。

 この世界も、ここが地球であれは月なんだろうか、などと考えてると、エリナが布の包みを抱えて裏庭に出てくる。



「お待たせお兄ちゃん」


「随分早かったな。婆さんに捕まってるかと思った」


「んー、なんかよくわからないけど早く行きなさいって院長先生が。あと素敵な万年筆をありがとうございますだって」



 そういや婆さんには既に話をしておいたんだった。

 エリナはまだ未成年だし、婆さんはエリナの保護者だからな。



「ああ。気に入って貰えたようで良かったよ」


「でね、お兄ちゃん。これ私からのプレゼント!」



 エリナが恥ずかしそうに包みから、毛糸で編まれたマフラーを取り出して俺に差し出してくる。



「マフラーか、暖かそうで良いな。ありがとうエリナ」


「うん! 手編みなんだよ!」


「お前凄いな、市販品みたいな出来じゃないか」



 早速マフラーを巻いてみる。

 かなり暖かい。

 でも妙に長い。


 エリナを見ると、真っ赤な顔が月明かりに照らされている。

 なるほど、そういう事か。



「エリナ、こっちこい」



 軽く抱き寄せて、かなり余ってるマフラーの端をエリナに巻いてやる。



「このマフラーはこうやって使うんだろ?」


「……うん。えへへ!」


「凄く温かいよ。ありがとうなエリナ」


「うん!」


「エリナは今幸せか?」


「すごく! お兄ちゃんのおかげだよ!」


「そか。俺な、エリナやガキんちょどもが元気になってくれて、幸せだと言ってくれて本当に嬉しいんだ」


「お兄ちゃん……」


「こんな俺でも、社会に絶望して生きる気力が薄弱になっていた俺でも。少しはエリナ達の力になれたんだって。それを教えてくれたエリナには感謝しかない」


「……」



 そういって俺はポケットから箱を取り出し、中に入った指輪を取り出す。



「エリナ」


「はいっ」



 真面目な空気を感じ取ったのか、エリナもいつものアホ妹モードから真面目モードになる。



「左手を出してくれるか?」


「? はいお兄ちゃん」



 なんだろう? という感じで出してきたエリナの手を取ると、薬指に指輪をはめる。

 シュッっと小さな音がしてエリナの指にぴったりはまった。


 俺からのプレゼントが指輪だとわかると、エリナの目が大きく開かれる。

 月が綺麗ですねなんて言っても絶対に伝わらないから、勇気を出してはっきり言おう。



「エリナ、愛してる。一生大事にするから俺と結婚してくれるか?」


「はい! お兄ちゃん!」



 エリナが俺に抱き着いてくる。



「待たせてごめんなエリナ」


「ううん! ううん!」



 俺の胸に顔を埋めて一生懸命に首を振って否定するその声は、既に涙声だ。



「エリナ、こんなヘタレな俺を好きになってくれてありがとう」



 エリナはうんうんと一生懸命に頭を動かす。

 もう声が出せないようだ。



「エリナ、顔を見せて」


「……今ちょっとお兄ちゃんに見せられない顔をしちゃってるから……」


「俺の大好きなエリナの顔が見たいんだ」



 エリナの耳が、月明かりでもわかるほどに赤く染まる。


 恥ずかしいのを我慢するように、おずおずとゆっくりと顔が俺に向けられる。

 エリナのエメラルドの目から溢れた涙が、柔らかな月明かりの下で輝いている。



「エリナ、綺麗だ」



 そう言って、俺はエリナと唇を重ねる。



「っ!」



 唇を重ねながら、エリナはぎゅっと俺を強く抱きしめてくる。


 何時間も経ったような感覚の後、ゆっくりと唇を離すと、エリナは名残惜しそうな表情をしながらも、恥ずかしがってすぐに俺の胸に顔を埋めてしまったので表情が良くわからない。


 

「エリナ、そのままで良いからちょっと俺の話を聞いてくれるか?」


「……はい」


「俺の誕生日が、六月一日って事になってるんだよ。俺も捨て子だから実際に合ってるかどうかはわからないんだけど」


「……」


「でな、俺もお前たちと一緒に新年の日を誕生日にしたい」


「……」


「で、六月一日は俺とエリナの結婚記念日にしたいと思うんだ。また待たせることになるけど、丁度その頃は俺がこの世界に来て一年位になるし、六月に結婚する花嫁は幸せになれるっていう話が俺の世界にあるんだよ」



 女神ジュノがこの世界にいるかはわからないけど、どうやら神は存在するようだしな。



「はい!」



 エリナが俺に満面の笑顔を向ける。



「いいのか? 待てないと言われたら俺としては早くても構わないと思ってたんだが」


「だって私凄くうれしいんだもん! 私の事を考えて六月って言ってくれたんでしょ⁉」


「誕生日の話を聞いた時からな。俺もガキんちょどもとみんなで一緒に歳を取って祝いたいし」


「うん! うん!」


「元々合ってるかもわからなかった俺の誕生日は好きじゃなかったんだけど、エリナとの結婚記念日になるなら良いなって思ったし、丁度新年の日から半年だからガキんちょどもとみんなで結婚記念日を祝えたらなって」


「お兄ちゃん! 私もお兄ちゃんの事愛してる!」


「ああ、俺も愛してる。エリナ、俺の指輪をエリナにはめて貰って良いか?」


「はい!」



 エリナに俺の指輪を渡し、左手を差し出す。

 ゆっくりと俺の薬指に指輪をはめたエリナは、我慢しきれないというように俺の唇を奪う。

 抵抗せずにそのままエリナを抱きしめようとすると、俺とエリナの胸元が光出した。

 俺はエリナから唇を離し



「おいエリナ、光ってる光ってる!」


「えっ、ほんとだ!」



 二人してごそごそと胸元から光り輝く登録証を取り出して見せ合う。

 やがて光が収まり、表示内容が変わったことがわかった。



 名前:トーマ・クズ


 年齢:18


 血液型:A


 職業:ヘタレ勇者


 健康状態:良好


 レベル:――


 体力:100%


 魔力:100%


 冒険者ランク:E





 名前:エリナ(エリナ・クズリューに変わるまで残り日数:158日)


 年齢:お兄ちゃんより三歳年下


 血液型:お兄ちゃんと一緒


 職業:お兄ちゃんの婚約者(嫁に変わるまで残り日数:158日)


 健康状態:すごく幸せ!


 レベル:15


 体力:100%


 魔力:100%


 冒険者ランク:お兄ちゃんと一緒




 ツッコミどころが多過ぎてどうすれば良いのかわからない。

 バイト数12以上あるじゃねーか。どうやって表示してんだ、プレートからはみ出てるぞ。

 あとカウントダウンは辞めろ、気分的に嫌だ。


 あと俺の職業って……。



「えへへ!」



 自分の登録証を眺めているエリナは、まだ涙を流しながらも嬉しそうに笑ってるし、まあ良いか。

 カウントダウンだけは消してほしいけど。



「お兄ちゃん大好き!」



 再び俺の唇はエリナに奪われる。

 俺は一切抵抗せずそれを受け入れると、優しくエリナを抱きしめ、頭をなでる。


 みんなで幸せになろうなエリナ。

挿絵(By みてみん)

プロポーズ

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― 新着の感想 ―
[一言] おめでとう!ヘタレ勇者のトーマ!すごく幸せのエリナ!
[良い点] (´;ω;`)…エリナ、良かったなぁ [気になる点] 「ヘタレ勇者」とはいったい・・・
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