クリスマスパーティ <エリナサンタコスのファンアートあり>
昼過ぎにそれぞれ買い出しが終わり、それからエリナと二人でパーティーの食事の準備だ。
婆さんに確認した所、やはり一部の貴族の間ではクリスマスパーティーというものを行ってはいるが、年越しイベントの方が大きい為、クリスマスパーティーは一般的ではないようだ。
ついでにシスターだった婆さんにこの世界の宗教について聞いてみたところ、多神教な上に無神論者が大半で、教会というか多神教の偶像を祭る祭壇が置かれている礼拝所がある程度との事。
婆さんは無償の奉仕を教義とする宗派のシスターで、簡単な救護施設や一時預かりの託児所などの管理をやっていた繋がりで、聖職を辞した後にこの孤児院を国の要請で始めたとの事だった。
託児所か……。貧乏人は無料で、支払いに余裕のある一般家庭や金持ちは寄付という形で一定の金銭を貰えば寄付金を増やすことはできるかもな。
食事と風呂、読み書きや簡単な計算を教える。
うん、このスタイルなら需要はありそうだな。
とはいえどれくらいの金額を貰うか、大店か富豪の子息が入所して大金を寄付してくれれば余裕だけど、孤児と一緒に扱うなとか言ったら俺がブチギレるな。
効率よく収益化を図るには……、日本の有名進学塾みたいに高度な学習が受けられるとかっていう付加価値が必要だな。
コンセプトを理解して出資してくれる金持ちとかいればいいが。
「お兄ちゃん、ぽてさら出来たよ!」
っと、つい考えこんでしまった。
学校は無さそうだけど、後で婆さんに色々聞いてみるか。
どうせあのアマから貰った金だ。
稼げなくても貧民のガキんちょ連中が助かるだけ良い金の使い方として納得できるしな。
「おう、じゃあピザを焼きながら唐揚げに取り掛かるか。揚げ終わったらラスクだな」
「はーい!」
台所の入口は封鎖してある。
腹をすかせた欠食児童共がしょっちゅう覗いてくるからだ。
火を使うし揚げ物もするから危険だしな。
でもつまみ食いとかはしないんだよなあいつら。
エリナと二人でガンガン料理を仕上げていく。
エリナは、今まで俺が作ったメニューは全て作れるようになったし、元々料理をしてたお陰で既に俺の腕前を超えている。
更に手慣れたもので、エリナは特に指示を出さずとも手際良く料理を作ったり、料理の合間に俺をサポートしてきたりする。
クレアも最近は手伝ってくれるようになったのだが、ミコトに取られてしまった。
「お兄ちゃんピザ焼けたよ!」
「こっちもラスクが仕上がったし、どんどん運び出してくれ」
「わかった! アラン達も呼んでくる」
「頼む。俺はクリームシチューを鍋ごと運ぶから」
◇
婆さんや年長組の手伝いもあってあっという間にリビングのテーブルに料理がぎっしりと並べられる。
苺のショートケーキは一人一ピースだが、唐揚げ、ピザ、ポテサラ、サラダ各種、偽ラスクが大量に並べられた。
クリームシチューは最近購入した馬鹿でかい寸胴鍋に入れられて俺の横にスタンバイされている。
飲み物も普段はあまり買ってこない果実を絞ったジュースを用意した。
弟妹共の目がテーブルの上に釘付けだ。
ハンバーグを除く人気料理が全部並んでる訳だからな。
ミコトの食事は既に済んでいるようで、クレアにだぁだぁ甘えてる。
「いいかー弟妹ども! 今日はクリスマスというリア充がパーティーをする日だ!」
「りあじゅう? りあじゅうって何お兄ちゃん」
「兄ちゃんがまた変な事言い出した」
「兄さま、前にくりすますは偉人の生誕を祝う日だと言っていたじゃないですか」
「今日はリア充の日です。俺達はリア充なんです」
「兄ちゃんが何を言ってるか全然わからないよ」
「特に今日は良い子にしてた奴は夜にサンタさんからプレゼントが貰えるからな! 良い子にして早く寝ろよ! 遅くまで起きてるとプレゼント貰えないからな!」
「「「はーい!」」」
「よーし、いい返事だ良い子達! じゃあ食って良いぞ!」
「「「いただきまーす」」」
「……」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「もう諦めた」
「?」
「さあエリナも気にせず食え食え」
「うん!」
みるみる料理が減っていく。
しかもさっきから「おかわりー」とクリームシチューのおかわりの列が途絶えない。
たまにエリナがピザやら唐揚げを「お兄ちゃんあーん」と食わせてくれてるので食事自体は出来ている。
あーんするならちょっとだけ代わってくれよアホ妹。
あーんしたいだけだろ。
餌付けするな。でもちょっと嬉しい。
「エリナ、オレンジジュース取って」
「うん! これもあーんする?」
「気管支に入るから嫌だ」
「兄さま、おかわり係代わりますよ」
「おっ、クレアサンキューな。ちょっと食ったらまた代わるからそれまで頼む」
「もークレア!」
「あっ姉さまごめんなさい。お邪魔しちゃいましたね」
「エリナはちょっとアホなだけだからクレアは気にするな」
「お兄ちゃん!」
「うっさい、ポテサラ取ってこい」
「はーい!」
「返事だけは完璧だなお前は」
「えへへ!」
「誉めてないんだけどな、アホ妹よ」
俺の近くにあったポテサラが盛られた皿は既に弟妹共に食い尽くされていたので、他のポテサラを探しにエリナが席を立つ。
「ふふふっ、兄さまと姉さまは本当に仲が良いですね」
「まあパートナーだしなー」
「兄さま、姉さまをよろしくお願いしますね」
「クレアもか。わかった任せろ」
「こういう時の兄さまは本当に頼りになって好きですよ」
「まあヘタレはなかなか治らん」
「頑張ってくださいね兄さま。私応援してますから!」
「ありがとなクレア。でもお前も俺の大事な妹なんだからな。変に遠慮しないでたくさん甘えて来いよ」
「ありがとうございます兄さま。凄く嬉しいです」
「お兄ちゃんぽてさら持ってきたー!」
「ありがとな」
エリナの持つポテサラが盛られた取り皿に手を伸ばすと、さっと遠ざけられる。
「何してんのお前」
「はいお兄ちゃん! あーん!」
「いや、今はおかわり係じゃないんだが」
「いいから! あーん!」
「めんどくせー」
と言いながらも口を開けると、エリナがスプーンに盛られたポテサラを俺の口に突っ込んでくる。
「美味しい?」
「ああ美味いよ。エリナも随分料理の腕が上がったな」
「ありがとうお兄ちゃん!」
エリナの笑顔が弾ける。
自覚はしてたけど、やっぱ俺はエリナに惚れちゃってるんだよな。
三歳年下のこいつに。
「よし、次はお前のおすすめを持ってこい」
「任せて!」
「兄さま、姉さまは凄く幸せそうですね」
「クレアは今幸せか?」
「はい! とても!」
「そか」
エリナが次々と料理を持ってくる。
一通り食った俺はクレアと交代して、偽ラスクをポリポリ齧りながらクリームシチューの最後のおかわりをミリィに渡してお役御免だ。
「おにーさん、きょうのごはんもすごくおいしかったよー、ありがとー」
「おう、ラスクもまだ残ってるしいっぱい食えよ」
「うん!」
ぽててと少し速足で、クリームシチューを大事そうに抱えながらミリィは自分の席に戻る。
料理はそろそろ無くなりそうだ。
既にデザートに手を伸ばしてるガキんちょも出始めた。
みんな笑顔だ。
うん。
良かった。




