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クリスマスの準備


「ダッシュエミュー狩りだと仕事が早く終わって良いな」


「あとは安定して狩れれば良いね!」


「そこなんだよな。週に六日狩りに行ったとして、二~三日狩れれば十分ではあるんだが、貯金は多くても困らないしな」


「おじさんに貰った野菜屑も食べてくれたし! お兄ちゃんの罠にも掛かったし大丈夫だよ!」


「罠も腹案があるから次は追い込まなくても掛かるんじゃないか? その代わり野菜屑が多く必要だから、今度からは正式に購入するか。屑だけじゃなくて傷んだ奴とか売れ残りとかも一緒に。その辺の話はおっちゃんじゃなくておばちゃん通さないといけない力関係っぽいけど」


「その辺はお兄ちゃんに任せる!」


「良いぞアホ妹。ちゃんと自分の能力をわきまえてて偉いぞ」


「えへへ!」


「誉めてないんだけどな。でも何か癒されたから良いか」



 偉いぞと言われてご機嫌なエリナが俺の腕を軸にぐりぐり体を擦り付けて来る。

 痛い痛い胸甲が痛い。

 でもお兄ちゃんだから痛いとは言えない。



「そういえばお兄ちゃんの言ってた くりすます っていうの今日だよね?」


「ああ、今夜やるぞ。多分こっちにも伝わってるんじゃないか? 貴族だけで流行ってたりしてるのかも知れないが」


「くりすますってからあげパーティーなの?」


「ローストチキンでも良いんだけどな。ローストチキンは量を用意するの大変だし、あいつら唐揚げ大好きだろ。あとポテサラ大量に作ってやるんだよ。それにピザな」


「くりすますって凄い豪華だね!」


「日本じゃ一番盛り上がるイベントかもな」


「あと皆の欲しい物を聞いておいたよ」


「おお、女子チームの分か。どんなのだった?」


「手鏡とか新しいリボンとかぬいぐるみとか。あとラスク」


「ミリィ……。ケーキは予約しておいたけどラスクも作るか、プレゼントはまぁ手鏡で良いだろ。あいつの唯一の食い物以外に興味を持ったのがそのあたりしか思いつかん」


「くりすますってプレゼントもするんだね!」


「夜寝てる時にこっそり枕元に置くんだぞ。女子チームの分は任せたからな」


「わかった!」


「で、お前の欲しい物は?」


「お兄ちゃんが考えてくれたものなら何でも嬉しいよ!」


「わかった、実はもう買ってあるから期待しておけ。ネタバレしてるから枕元じゃなく夜に渡してやるからな」


「うん!」


「昼飯食ったらあちこち行かなきゃいけないし、飯の準備も忙しいからな。覚悟しておけよ」


「はーい!」


「いつも最高の返事で素晴らしいぞ妹よ」



 えへへ! と笑顔を向けるエリナ。

 こいつほんと元気になったなと思いながら、ほっこりした気分で帰宅する。


 いつものようにエリナが扉を開けて俺を迎え入れる。

 まだ昼前だからか、ガキんちょ共が群がってくる。



「「「おかえりー!」」」


「みんなただいま!」


「ガキんちょ共出迎えご苦労。ちゃちゃっとスープだけ温めるからすぐ飯にするぞ」


「「「はーい!」」」


「返事は最高なんだよなお前らも」



 空っぽの籠は玄関に放置してマントやら胸甲を外して着替える。

 もう弁当は持ち歩いていない。

 ダッシュエミューが見つから無くても昼前に戻る予定だしな。

 緩すぎだな、この仕事感覚。


 エリナのマントと胸甲を外してやると、自室に着替えに行った。

 リビングに行くとクレアがミコトに哺乳瓶を使ってごはんをあげているようだ。



「あっ兄さまお帰りなさい! すみません今日もお出迎え出来なくて」


「いいっていいって出迎えなんか。それより今日の髪型はポニテなんだな」


「おだんごだとミコトちゃんが喜びすぎちゃってすぐ疲れちゃうみたいなので、なかなかお昼寝しない時だけするようにしたんです」


「たしかに滅茶苦茶喜んでたからなー」


「ふふふっ凄く可愛かったですよね!」



 ちゅーちゅー哺乳瓶を吸ってるミコトを見る。

 可愛い。

 まさに天使だ。



「早く大きくなれよーミコト」


「あっ! ミコトちゃんにお乳あげてる!」



 騒がしいのが着替え終わったようだ。



「姉さまお帰りなさい。お出迎え出来なくて済みません」


「ただいまクレア! そんな事よりミコトちゃん見せて!」


「はい姉さま。姉さまも哺乳瓶でミコトちゃんにお乳をあげてみますか?」


「うん! やりたい!」



 ぼくもーわたしもーとガキんちょが群がってくる。



「順番ですよー」



 さて、ミコトの可愛さを堪能したし、さっさとスープを温めて昼飯にするか。


 台所に行き、今朝のスープの残りに簡単に具材を足して温める。

 今日の昼は焼肉バーガーだ。

 自作の焼肉のタレが好評だったので豚焼肉をレタス等の野菜とバンズで挟んでみた。

 アメリカンサイズのバーガーを一人二個。

 五歳児とかでも平気で平らげるんだぞ。

 大丈夫かな、見た目は全然太ってないけど。


 年明けから少しずつ減らしてみるか。

 クリスマスと年越しはそんなこと気にせずに食わせてやりたいし。



 あいつら誕生日が無いから年を越したら全員一歳増えるんだよな。

 拾われた時期の育ち方によって春生まれとか夏生まれかなっていうのはあるらしいけど、まったくわからない子もいるって話だし。

 一応両親が亡くなって親戚にも引き取られなかったような子は誕生日もちゃんと伝えられているが、他の子と一緒に年越しに祝って、誕生日は特に何もやらないそうだ。


 エリナも春生まれって話だけど、登録証の年齢表示は年越しで一歳増えるらしいので正確な日付はわからないらしい。


 なのでクリスマスプレゼントとは別に、年越しの時には誕生日プレゼントとして、こっそり全員に新品のおしゃれ着を二着ずつ服屋に頼んである。

 エリナにも内緒だ。

 冬物を頼んだ時に全員採寸済みだし、子供の成長もある程度考えてくれて、その場で調整もしてくれるとの事。


 ちょっとしたイレギュラーもあり、流石に高額だったが、服屋が大みそかの夜に孤児院まで届けてくれるそうだ。

 大みそかの夜に配達とサイズ調整ってすごいな。日本のサービスを超えてるんじゃないか?

 しかも採寸の時に、会話をしつつそれぞれの好みの色やデザインを聞いたのを全て記録してあるから、それぞれが気に入るような服を仕立てられるとか。

 流石に泣いちゃった子とは話せなかったが、それでもどんな色や形に興味を引くかを調べたとの事。

 有能過ぎて恐ろしい。



「お兄ちゃんごめん! ミコトちゃんに見とれててお兄ちゃんの事をすっかり忘れてた!」



 軽く酷い事を言いながらアホ妹が台所に飛び込んでくる。

 結局昼飯の準備を手伝わなかったエリナに焼肉バーガーを運ばせる。

 俺は出来上がったスープを鍋ごと運び、いつもの騒がしくも楽しい昼食が始まる。


 昼食が終わったら俺とエリナは手分けして買い物だ。



「いいかお前ら! 今日はおやつは無いが、その分晩飯が豪華だからな! 晩飯まで頑張って勉強しておけよ!」


「「「はーい!」」」


「相変わらず最高の返事だぞ弟妹ども! じゃあ行ってくる!」


「行ってくるねー!」


「「「いってらっしゃーい」」」



 俺とエリナは買い物の為に孤児院を出る。

 早く買ってこないと料理をする時間もあるからな。

 あいつらの喜ぶ顔を想像すると、いつもより少し足早になる俺だった。


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