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魔王覚醒


 ダッシュエミューの入った籠を背負いながらエリナと共に冒険者ギルドに入る。



「こんにちわー」


「わー」


「お兄ちゃん! ちゃんと挨拶しないと碌な大人にならないよ!」


「クレアの口癖は止めろ、しばらくは聞きたくない。それに既に手遅れだ」


「いらっしゃいませエリナさん、トーマさん」


「今日もダッシュエミューを狩ってきた。あと魔石も一つ」


「いつもありがとうございます。他のクズ連中もエリナさんとトーマさんを見習ってくれればいいんですけどね」



 カウンターの前に籠をおろして、魔石はカウンターの上に置く。

 どうやらちゃんと魔石だったらしい。

 良かった、「これ尿管結石ですよ」とか言われたらどうしようかと思った。

 洗ったとは言え素手で触ってたし。

 まあ鶏むね肉付近から尿管結石は出ないだろうけど。



「あいつら普段どうやって稼いでるんだ?」


「所持金が無くなると何人かで組んでホーンラビット等魔物を狩るのはまだマシな方で、借金取り立て依頼等のそこそこ腕っぷしさえあれば馬鹿でも出来る依頼を受けるとかですかね。あとはどこかで犯罪まがいの事をしてると思いますよ」


「登録証に出ちゃうだろ」


「殺人や強盗、傷害などの犯罪行為はそうですけれど、受け子や運び屋等は、これは単に集金しただけだ、頼まれて運んでるだけだといくらでも回避する方法はありますからね。ですので定期的に間引いてるんですよ」


「犯罪者予備軍そのままだな。というか既に犯罪に手を染めてるなそいつら」


「その内冒険者討伐依頼が出るかもしれませんね」


「一緒くたにするのは止めろ。まともな冒険者もいるんだろ?」


「まともな冒険者?」


「おいおい」


「冒険者ランクがC以上になれば一応まともな人間扱いはされる可能性が高いですからね。Cランク以上の冒険者は殆ど王都で活動してますよ」


「そりゃそうだよな、高額依頼なんかも多そうだし」


「一応こちらにもそこそこ高額な依頼は来ているんですけれどね」


「見た事無いが」


「屑に見せるような依頼じゃないですからね、ふさわしい冒険者に直接オファーする形になっています」


「そうか、まだ俺達はEランクだしな」


「個人的にはトーマさんエリナさんには、お願いしても良いと思う依頼も多いのですが、高額依頼は大抵失敗した場合にギルドの補償が絡んできますのでCランク以上、もしくは素行が良く一定の信頼が置けると経歴で判断されたDランクの方のみとなっています」


「俺達がDランクに上がるにはどうしたらいいかわかるか?」


「そうですね、これは本当は秘密なのですけれど」



 そういうと事務員は周囲を見渡す。

 冒険者も他の職員も今は見当たらない。



「実は貯蓄額なども判断材料になってるんですよね。貯蓄が無いと、それまで品行方正だった者ですら切羽詰まって犯罪に走るケースが過去に何度か発生したので」


「あーなるほどな。マジックボックス持ちか市民権持ちで銀行に預けるでもしない限り、タンス預金なんかよりギルドに預けた方が安全だしな」


「Cランク昇格が見えてきた頃の冒険者には、一応財政状況や所有財産の確認はしますし、所有財産次第では貯蓄が無くても昇格が認められる場合があります」


「貯蓄はまあ大丈夫だとして、あとは依頼達成数か」


「はい。ダッシュエミューであれば、このペースで数ヶ月程度狩っていれば昇格できると思いますよ」


「わかった。助かるよ」


「いいえ、仕事ですので。それにトーマさんとエリナさんには上層部も期待しておりますから。では査定をしてきますね、少々お待ちください」


「頼む」



 相変わらずこの時間は人が居ないので、暇つぶしに掲示板を見る。

 ダッシュエミュー以外にもこういう細かな依頼達成もこなした方が昇格も早いだろうしな。


 んー? 貨幣造幣ギルドの依頼書が見当たらないな......。

 これでまた犯罪が未然に防がれるのなら良いのかな。

 まぁ襲わなきゃそのまま報酬受け取れるんだから本人次第だわな。


 ん? なんだ?


 <徴税局からの依頼 貧民街〇区〇番△△に住む「魔王」の捕縛依頼 報酬 銀貨二枚>


 魔王? なんだこれ。

 魔王を捕まえるのに銀貨二枚?



「お待たせいたしました」



 事務員が戻ってきたので一応確認しよう。

 大体予想はつくけど。



「なぁ魔王って何?」


「魔王さんという方が税金を滞納してますので、その為の依頼ですね。徴税局まで出頭させれば銀貨二枚ですよ」


「いやいや、魔王が税金滞納ってのもあれだけど。何なの魔王って」


「お名前が魔王さんなんですよね。昔は別の名前だったんですけれど、魔法が使えるようになってから登録証の名前が魔王に変わりました。こちらで冒険者登録時に保管しておいた登録証でも確認しています」


「冒険者が魔王として覚醒したって事か?」


「どうでしょう? しょぼい炎の矢が使えるだけみたいですけれど、ある日突然『余はこの世界を統べる魔王であるからして税金は納めない』と独立宣言してアパートに引き籠っちゃったんですよね。世界を統べる前に滑ってますが」


「相変わらず辛辣過ぎだけど、治癒魔法で治るんじゃないのか?」


「で、徴税官が集金に行ったら炎の矢で脅されて追い出されてしまったようです。ですのでここに依頼が」


「なんでここなんだよ。兵士数人で拘束しろよ」


「今の所引き籠っているので実害は無いですし、あわよくば冒険者と滞納者二人を傷害罪か殺人罪で引っ張りたいんじゃないですかね? 魔法が使えると書いてないのはそういう理由ですし。魔王さんも冒険者ですしね」


「もうほんと酷い扱いされてるのな冒険者って」


「受けますか?」


「受けるか馬鹿」


「お兄ちゃん、風縛で運んじゃえば?」


「関わりたくない」


「そうだねー」


「そういや税金って俺払った記憶が無いけど」


「登録した年は非課税ですよ。来年からというか年を越す来週以降からは、収入から一律五%が天引きされます。一定以上の収入を超えると課税率が上がりますが、市民権をお持ちでない方は五%のまま変わりません。ご自身で納税されるならそのままお渡ししますが」


「天引きで良いよ。支払い忘れて捕縛されるの嫌だし」


「かしこまりました。で、ダッシュエミューですが銀貨十九枚と銅貨二百枚、魔石が銀貨十枚と銅貨二百枚です。両方買取で良いですか?」


「頼む」


「ではこちら銀貨二十九枚と銅貨四百枚になりますね」



 いつものように孤児院の取り分を少し多くしてエリナに渡す。

 エリナも同じように分けた後、自分の取り分をギルドに預ける。



「お兄ちゃん帰ろう!」



 ギルドから出ると、またエリナが腕に掴まってくる。

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