上手に焼けました
「炎の槍!」
逃がすくらいならもう魔石だけでも良いか、と炎の槍を出現させ射出する。
ばふん!
俺の射出した炎の槍は、ダッシュエミューにしっかり誘導したお陰で着弾し、ケツに火が着いた状態になる。
ケツに火が付いたダッシュエミューは混乱し、とにかく俺達から逃げようと迷走しだす。
えっ、まともに直撃してもあれだけなの? 俺の魔法しょっぱくない?
と、唖然としながら滅茶苦茶混乱して走ってるダッシュエミューを眺めていると
ぼごん! メラメラメラ
迷走したダッシュエミューが落とし穴に落ちた途端、火が全身の羽毛に回ったのか、黒い煙がもうもうと落とし穴から立ちのぼる。
「お兄ちゃん凄い! ダッシュエミューがお兄ちゃんの作った落とし穴に落ちたよ!」
「……狙って追い込んだからな」
「凄い! 凄い!」
純粋なエリナについ嘘をついてしまった罪悪感に苛まれつつ、まずはエリナの方を終わらせようと歩き出す。
「威力の高い土の槍を使っても、あれは速度が遅いから避けられただろうしなぁ」
「近くからなら風刃は当たったかもね、お兄ちゃん」
「射程距離ギリギリだとどうしても避けられるからな。風の刃もある程度は誘導できるけど、急にあんなジャンプをされたら無理だわ」
てくてくと風縛で拘束したダッシュエミューにたどり着く。
「じゃあまたひっくり返してくれ」
「はーい!」
エリナがくるんと風の玉をひっくり返して首を下にする。
そうか、日本刀の初めての出番だな。
汚したくないし風の魔法で刀身を覆うか。
「陥穽!」
血を捨てる為に直径一メートル、深さ二メートル程の穴を空ける。
これの射程距離があれば逃げるダッシュエミューの前に穴を空けられたんだけど、これ十メートル位しか射程距離が無いんだよな。
「風の剣!」
刀身を風の魔法で覆い、一気に首を斬り飛ばす。
すぽーん! とダッシュエミューの首を斬ると、血と一緒に先程まで食っていた野菜屑らしき物がでろでろと出てくる。
ゲロかよ……。
キモいキモいと思いながらその場から少し下がる。
しかし斬れ味が凄いな、魔法の分が上乗せされているとはいえ、ダッシュエミューの首に触れた感触すらなかったぞ。
一応血振りをした後、魔法を解除して刀身を見るが、汚れなどは着いていないようだ。
そのままくるんと回して納刀する。
「ぎゅー」
「絞るな絞るな。鳥モツが出るから」
しばらくダバダバと血が出てるが、グロ耐性の無い俺は目を背けている。
「ヘタレなお兄ちゃん、血抜き終わったよ!」
「ご苦労エリナ。じゃあ籠に入れてくれ」
グロ耐性持ちの妹が血抜き処理を終了したので、籠を穴の横に置き、土魔法で穴を埋め戻す。
「土砂の雨!」
ドサドサと砂利を穴に入れ、丁度良い所で魔法を止める。
「お兄ちゃん、籠に入ったよ」
「よし、じゃああのまだ燃えてる奴の所に行くか」
「お兄ちゃんの全属性魔法って便利だよねー」
「まさに器用貧乏って感じだけどな。ダッシュエミューに効く有効な攻撃魔法が無いんだぞ」
「でも色々な魔法を使ってダッシュエミューを罠に追い込んだよ! 流石お兄ちゃん!」
「ソウデスネ」
「私は風縛を使うと何も出来なくなっちゃうしねー」
「まぁお互いを補い合う良いパートナーって事で良いんじゃないか?」
「そうだね! えへへ!」
完全に俺の方が助けられてるよな、と思いながらも、未だもくもくと黒煙を上げている落とし穴に近づく。
「まだ燃えてるな」
「ちょっと美味しそうな臭いがするね!」
「すごいなお前」
血抜き中から出来るだけ鼻で呼吸しないようにしてた俺だが、少し勇気を出して鼻呼吸をしてみる。
言われてみればそんなに悪臭はしないな。
むしろちょっと香ばしいかもしれん。
「どうすっかなー、水ぶっかけて火を消したら、風縛で持ち上げて魔石を回収するか」
「もう剥ぎ取り出来ないしね」
「落水流!」
滝のように水が注がれると、即鎮火する。
今はこれで風呂の水を溜めている。
ポンプはガキんちょ共が家庭菜園とか洗濯用に有効活用してくれてる。
無駄にならなくて良かった。
「じゃあ風縛を使うね!」
「いや、俺がやるよ。暴れないなら持ち上げられるだろうし」
「わかった!」
「風縛!」
真っ黒に焦げたダッシュエミューを風縛で拘束し、持ち上げて穴の外に出して魔法を解く。
「さてどうやって魔石を探すか」
「心臓の近くらしいけどね。私がやろうか?」
「ある程度風の刃でバラそう。キモいし」
「じゃあお願いするね」
「任せろ。風刃!」
サクサクとダッシュエミューだった物を切り刻む。
断面を見ると中身はまだ半生じゃねーか。血はそれほど出ないけど。
「ダッシュエミューはあまり美味しくないみたいだから残念だったね!」
美味ければ食うのかと突っ込む余裕も無く、魔法で刻んで、鳥もも肉や手羽先など魔石の無い所をどんどん穴に蹴り入れて行く。
このあたりは鳥胸肉っぽいからそろろそハツが出てくるかなーと魔法で解体していると、コロンとピンポン玉サイズの鈍く光る石が出てくる。
「これかな?」
「多分!」
「結石とかじゃないよな? あと鳥って石とか砂を飲みこまなかったっけ?」
「わかんない!」
「まぁ光ってるし多分これだろ。間違ってたら勉強代だな。これ以上解体するのは精神的に無理」
「ヘタレー」
「これでもまだ鳥だから何とかなったんだぞ。手羽元とか丁度良く火が通ってて見た目は悪くなかったし」
「美味しい種類だったらねー」
もうエリナの食欲には突っ込まない事に決めた俺は、水魔法で魔石を軽く洗ってから回収する。
残りの部位をガシガシと穴に蹴り落としたら、穴を埋めて完了だ。
「さー帰るか。ダッシュエミュー狩りは結構効率良いんじゃないか? 時間も早く済むし」
「そうだね! それに籠には一匹しか入らないけど、風縛で捕まえたまま冒険者ギルドに持って行けば一回の狩りで二匹分稼げるかも!」
「町がパニックになるかもな」
いつものようにアホな妹との会話を楽しみながらながら町に帰るのだった。




