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日本刀 <武器屋&防具屋 の挿絵あり>


 武器屋にたどり着くと、親父に用件を伝える。



「親父、剣を買い替えたい」


「やっと来たか。刀だな?」


「いや、そんな高級品はいらない。やっとダッシュエミューを狩り始めた程度だぞ、ミスリルですら分不相応だ」


「何か希望はあるのか?」


「作業用の頑丈なナイフと、両手でも片手でも使えるバスタードソードとか欲しいかな」


「ふむ、手を見せてみろ」



 手を真っ直ぐ親父に向けて伸ばして掌を見せると、親父は棚に商品を探しに行く。


 財布の中身を見ると銀貨が百枚以上入ってる。

 そりゃそうか、哺乳瓶十個買うのに銀貨足りなくて、ギルドで金貨下して六個返品したしな。


 そうこうしてると親父が戻ってきた。

 おい、日本刀も混じってるぞ。



「お前さんに合うのはこれだ」



 親父が目の前に置いたのは三振りの刃物。

 一振りはサバイバルナイフのようなゴツめのナイフ。

 一振りは片手半剣とも言われるバスタードソード。

 最後の一振りは日本刀だ。



「日本刀は買わないってのに」


「まぁ持ってみろ」



 サバイバルナイフ、バスタードソードを持つと、流石に親父だ。しっくりくる。

 で、日本刀だが、やはりこれもしっくりくる。



打刀(うちがたな)か? でも少し長くないか?」



 鞘から抜いて刃を眺める。



「刃長二尺七寸、たしかに打刀では少し長めだが、お前さんなら扱い易いはずだ。というかお前さん打刀(うちがたな)太刀(たち)の違いも解るんだな」


「長さと反りと鞘で判断しただけだぞ。(なかご)の銘の向きを見れば流石に解るけどな」


「ふむ」


「選りにも選って刃文(はもん)数珠刃(じゅずば)かよ、長曽祢虎徹(ながそねこてつ)で御馴染みの。素人の俺でも直刃(すぐは)の次に知ってる刃文だぞ」


「お前さんコテツを知ってるのか?」


「虎徹を見たら偽物と思えって位に有名で大人気なんだよ。どこかの局長が騙されちゃう程にな」


「<転移者>の持ってきた本を譲って貰ってから惚れちまってな。それ以来作刀を続けている」


「銘は?」


「あるわけ無いだろう。玉鋼(たまはがね)ではなく鉄鉱石で俺が打った習作だぞ、鍛造方法は同じだがな」



 うーん、先生と時代劇を見まくったせいか、日本刀に憧れはあるんだがな。

 ただ剣道って中学高校の授業でしかやったことないから使いこなせるかどうか。



「素人だから刀の良し悪しがわからないんだよな」



 日本刀をくるんと逆手に持ち直して納刀する。



「随分と納刀が様になってるじゃないか」


「お兄ちゃんかっこいい!」


「素振りはやらされてたんだけどな、納刀のかっこよさに憧れて色んな納刀を練習しまくったんだよ」



 今のはバラエティ番組で白塗りの殿様がやってた回転納刀だけど。



「ほう、ちょっと他のもやってみろ」


「じゃあエリナちょっと離れてろ。刀を振るから」


「うん!」



 俺はベルトに刀の収まった鞘ごと挟んで構える。

 鯉口(こいくち)を切って抜刀すると、右袈裟で刀を振り下ろす。

 ぶんぶんと血振りをしながら鞘を引き上げ、ゆっくりと刀身を鞘に納めてく。

 エリナと親父に見せつけるように刀と鞘を目の前に持って行き、敢えて鍔鳴(つばな)りをさせて納刀完了だ。

 桃太〇侍完コピだ。めっちゃ練習した。


 本当は(つば)切羽(きりば)が傷むから鍔鳴りをさせたら駄目なんだよな。鳴るとカッコいいけど。



「ほう!」


「お兄ちゃん凄くかっこいい!」


「そうか? こっそり練習した甲斐があったよ。先生に見つかると怒られたからな」


「よし、まけてやるから買え」


「値段は?」


「ナイフが銀貨三枚、バスタードソードは銀貨二十三枚、刀は金貨一枚と言いたいところだが、銀貨八十枚で良い」


「うーむ、八十枚かぁそれでも高いなぁ」


「お兄ちゃん、哺乳瓶十個は即決で買ってたじゃない。あれも十個で銀貨八十枚だよ」


「そう考えると昨日の俺とエリナって相当ヤバかったな」


「怒られたしね」


「どうだ? そうだな、一ヶ月は手入れを無料でやってやろう。もちろん手入れ方法も教えるし、砥石等の手入れ道具も付けてやる」



 親父は買えと色々アピールしてくる。

 質の違う鉄鉱石や焼き入れを色々組み合わせてやっとこの刃文が出たんだとか、習作の中じゃ一番出来が良いだとかすっごい饒舌だ。



「なんでそこまでして売りたいんだ? 俺としては色々して貰って助かるけど」


「俺の作ったこの刀に合う手の長さと掌だったからな。<転移者>だし、打刀やコテツを知ってるだけでもある程度の知識はあるんだろ?」


「納刀だけじゃなくて、素振り用の刃の無い日本刀なら振ってたぞ。指導者は柔道の先生だったから正しい型かは知らんが」


「それだけでも十分だ。それにその剣を引き取る代わりにナイフをやろう。どうだ」


「わかった。そこまで言ってくれるのなら買うよ。あれ? そこからギルド割引は効くのか?」


「効くぞ、国からの補助だからな。取りっぱぐれも無い。どんどん使え」



 俺は銀貨七十二枚と登録証を首から外して親父の前に置く。

 親父が商業ギルド登録証を俺の登録証にかざす。

 良かった、音なんて鳴らなかったんだよ。



「親父、良い買い物をしたよ。手入れの件頼むぞ」


「ああ、何かわからない事があればいつでも来い。こちらも色々聞かせてもらうかもしれんがな」



 購入者レビューか。この店の日本刀を買ったら金髪美女の彼女が出来ましたとか言えば良いか。

 まだ付き合ってないからセーフだろ。いつになるかわからんが。


 呪いの装備を引き取ってもらって助かったな。

 真の呪いの装備であるヘタレは外せないし、捨てようとするとそれを捨てるなんてとんでもないって言われちゃうけど。



挿絵(By みてみん)

武器屋&防具屋

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― 新着の感想 ―
[一言] トーマ君、とうとう日本刀を手に入れましたね!
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