罠依頼
ダッシュエミューを入れた籠を背負って冒険者ギルドへ向かう。
もう慣れたもので、町中にも結構知り合いが出来た。
しかも腕を組んで歩いてるから冷やかされて仕方がない。
その度にエリナは笑顔で応対してるが、これもう完全に既成事実化されてるな。
まぁ断る気が全くないどころかエリナの事は好きだし問題無いんだけど。
問題と言えば収入なんだよな。
安定して稼げて孤児院を運営できる資金を、ミコトが成人するまで続けられるかどうか。
その間に新入りが入ってきたら更に稼ぎ続けなきゃいけない期間が延びるしな。
今の所高い収入を稼げてるし、これがこのまま続けばいいんだけど。
俺とエリナは魔法が使えるので、就職先はかなりある。
ただし、エリナは三属性で高い潜在能力を持つが、平民出身という事もあり、良い職場に採用され難い上に、仮に行けたとしても周囲が貴族だらけなので、色々やりづらいだろうという事だ。
俺は<転移者>なのでまだ差別的なものはマシだが、全属性持ちと言えど潜在力が低く、それほど良い職場には採用されないらしい。
などと色々考えてる間に冒険者ギルドに到着する。
「ういっすー」
「こんにちはー」
「トーマさん、エリナさん、こんにちは。あら? エリナさん珍しい髪型ですね」
「たてろーるって言うらしいですよ!」
「ボリュームが出て華やかな髪型ですね」
「えへへ! ありがとうございます!」
「それでご用件は何ですか?」
「今日はダッシュエミューを狩ってきた」
籠をその場に降ろし、いつもの事務員がカウンターから身を乗り出して中を覗く。
「ダッシュエミューとは珍しいですね。中々ここのクズどもは狩ってこない魔物なので」
「魔法が使えないと難しいしな。というか毒舌がすごいな」
「矢も中々通さない硬い羽毛を持っていますしね。では査定しちゃいますね。少々お待ちください」
流石に女性事務員一人だと運べないので、他の職員を応援に呼んで籠ごと奥へ運んでいく。
他の職員居たんだな。
まだ昼時より早いので誰もいないし、気兼ねしないで待てるのは良いな。
待ち時間の間暇なのでいつものルーティーンの依頼を張られた掲示板を眺める。
んー? なんだこれ。
<F、Eランク限定特別依頼 貨幣造幣ギルドから貨幣輸送馬車の護衛任務 隣町へ一泊二日の片道のみ、宿場町を通らないので野営の準備をお願いします。 報酬は銀貨四枚>
怪しすぎだなこれ。
こんなのに引っかかる馬鹿いるのかな?
「トーマさん、お待たせしました」
「あのさ、あの貨幣造幣ギルドの依頼って引っかかる馬鹿居るの? そもそもこの町に貨幣造幣ギルドは無いだろ」
「居るから定期的に間引いているんですが」
「間引くって......言い方考えろよ」
「毎回、大体十人位で徒党を組んで受注しますね。積んでいるのは貨幣の入った箱ではなく、中に腕利きの兵士が入った箱なんですけれどね。帰りには馬車襲撃犯の棺桶になるんですけれど。この依頼書を見つけると、依頼書を即剥がして仲間を集めてこっそり受注するので、手口が広まらないでずっと同じ方法で間引けるんですよね。わかってる連中もわざわざ教えたりしないですし。害虫の方がよっぽど賢いですよ、同じ殺虫剤を使ってると効かない害虫が出てきますから」
「野営中に輸送馬車を襲わない連中も居たりするの?」
「殆ど居ないですね、食い詰めた連中ばかり集まりますので。受注されますか?」
「するか馬鹿」
「そういえば半年程前にトーマさんに絡んだクズですが」
「まさか」
「前回のこれに引っかかってお掃除されました。そのロングソードは遺品という事になりますね」
「うわあ買い替えよう」
「で、ダッシュエミューですが、銀貨二十枚です。魔石はどうされますか?」
「そのままで買取で」
「かしこまりました。ではこちら銀貨二十枚になりますね」
その場でエリナに、エリナと孤児院分として銀貨十五枚を渡す。
俺の今日の取り分は銀貨五枚だ。
エリナも自分の分として五枚をそのままギルドに預ける。
「そういえばダッシュエミューって何を食うかわかるか?」
「雑食性なので何でも食べますよ。それこそ野菜屑でも」
「それは良い事聞いた。また来るわ」
「お待ちしておりますね」
冒険者ギルドから出て、先ずは武器屋に向かう。
剣を新調する為だ。縁起が悪すぎる。
でもあのおっさん居なくなったのか。
天寿を全うできなかったし<転生の間>へは行けないんだな。
一応祈っておいてやろうかと思ったけどやめた。
顔すら思い出せないからな。




