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初めてのお給金


 孤児院に到着すると、エリナが院長先生戻りましたと挨拶をする。

 ガチャリと鍵が開き、エリナが組んでた腕をするっと抜いて扉を開け、俺を招き入れる。



「あれ? あの子達来ないね?」


「飯食ってるんだろ。まだ昼時だし」


「そっか。じゃあリビングに行こうお兄ちゃん」


「おう」



 リビングに入ると、ガキんちょどもは昼飯をパクついていた。

 籠をリビングの隅に降ろし、エリナの胸甲のベルトを緩め、マントを外してやると、エリナが後ろに回って俺のベルトとマントを外してくれた。



「お前らちゃんと昼に昼飯食ってるんだな。ごめんな、兄ちゃんお前らは俺らが出た後、すぐに昼飯食ってるだろうと疑ってたわ」


「おっちゃんこれうめー」


「お前はいい加減お兄さんと言え。口にケチャップついてるぞ」



 しょうがねーなーとガキんちょの口のケチャップを拭いてやる。ちなみに昨日のハンカチはエリナが洗濯すると言って強奪されたので予備のハンカチだ。



「兄ちゃんこれもうめーぞ」


「いっぱい食えよ一号」


「おにーさん、おかえりー、これおいしー。なんていうの?」


「お、気に入ったか? ソーセージを挟んだパンがホットドッグ。ベーコンレタストマトを挟んだパンがベーコンレタストマトサンド、略してBLTサンドって言うんだぞ」


「ほっとどっぐとびーえるてぃーさんど、おいしー」


「よしよし、いっぱい食えよ。足りなかったら俺のも少し食うか?」


「たべるー」



 籠から俺とエリナの分の飯を出し、エリナの分を渡すと、俺の分を広げ、ホットドッグとBLTサンドをひとつづつボブカットの皿に置く。



「ほれ食え食え。俺の分のホットドッグはちょっとマスタード入れちゃったから、辛かったらマスタードは取れよ」


「おにーさんありがとー」



 ボブカットは自分の分を食い終わると、俺から貰った分に取り掛かる。

 この体のどこにこんなに入るんだろう?

 食べ過ぎは良くないが、こいつらはまだまだ痩せてるから大丈夫かな?



「お兄ちゃん美味しいねこれ」



 エリナが早速渡した昼飯をパクついている。



「なら良かったよ。あの肉屋のソーセージとベーコンのおかげだけどな」


「そんなことないよお兄ちゃん!」



 はいはいと返して、手早く飯を食うと、飯を食い終わってニコニコとガキんちょどもを見ている婆さんに話しかける。



「なあ婆さん、婆さんの作ったヨモギの葉を干した奴なんだが、一グラムで銅貨十枚の査定だったんだよ」


「まあ、随分高額なのですね」


「で、百株近く採取して来たんだが、このまま冒険者ギルドに卸すと銀貨一枚なんだ。でも、もし全てが婆さんが作った品質のヨモギになれば、銀貨三枚にはなるんだよ。それで出来れば婆さんにヨモギの加工をお願いしたいんだが」


「ええ、ええ、是非やらせてください。私でお役に立てるのでしたら嬉しいです」


「その際に、品質や葉の厚さ、大きさなんかである程度分別して納品できるようにしたいんだ」


「わかりました」


「借りたヨモギを返しておく。大きさ厚さが均一で、貴族用のハーブティーの葉として売れる品質だそうだ。午後はヨモギを籠から出して置いておくから、ヨモギの処理を頼む」


「任せてください」


「で、ちょっと込み入った話があるんだが、院長室で話をさせて貰って良いか?」


「はい、構いませんよ」


「エリナも飯を食い終わったら婆さんの部屋に来てくれ」


「もう食べ終わったから一緒に行く」


「じゃあ行くか」



 三人で婆さんの部屋に入り、応接テーブルに備え付けの長椅子に座って早速本題に入る。



「婆さん、まずはこれを」



 応接テーブルの上に銀貨四十五枚と銅貨の束六本の六百枚分を置く



「今日稼いできた分だ。孤児院の為に使ってくれ」


「トーマさん、これはトーマさんのお金ではないですか。受け取れません」


「いや、エリナが見つけたサルノコシカケと葛、あとエリナが血抜きしたホーンラビットの買取金額だ」


「お兄ちゃん、二人で頑張って売れたものだって話したでしょ!」


「ああ、そうだったな。今日の二人の稼ぎだ」


「でしたら余計に受け取れません。ヨモギの加工から得られる差額を分配するのかと思っておりましたし」


「それだと孤児院に入る分が毎月銀貨五十枚に届かないんだよ。だから是非受け取って欲しい。孤児院の建物の修復なんかもあるし、ヨモギの加工もあの量になれば専用の道具とか必要なものも出てくるだろうし、いくらあっても困らないだろ?」


「院長先生、お兄ちゃんの言う通りです。あの子たちの為にも受け取ってください」



 婆さんはじっと考え込む。



「でしたらこうしましょう」



 そういうと婆さんは、俺、エリナ、自分の前に銀貨十五枚と銅貨二百枚ずつを置く。



「トーマさんもエリナもお金は必要でしょう? 特にエリナはこれから外に出て活動をするのですから、いつまでもトーマさんに甘えるわけにはいきませんし」


「院長先生……」


「……わかった。ただし、ガキんちょどもの飯はまだしばらく俺が面倒を見るのは譲れない。あいつらはまだまだ栄養が足りてないからな」



 俺は銅貨二百枚を婆さんの前に置く。

 婆さんも頑固だし、まずは銅貨の端数だけでも、孤児院の取り分を多くしたって実績さえ作っておけば今後はもっと割合も増やせるだろう。



「それに最優先にするのはガキんちょどもだ。こちらの稼ぎが十分な額に達した場合は孤児院を優先する。これが俺の妥協できるギリギリのラインだ」


「大変心苦しいのですが、トーマさんがそうおっしゃられるなら、そのようにさせて頂きます。子供たちに代わってお礼申し上げます」


「あと銀行ってこの世界にあるのか?」


「ええありますよ。市民権を持っていれば国が運営してる銀行で、ギルド登録証を持っていれば各ギルドで預かって貰えます。国の運営する銀行ならば利子が付きますよ。年一%ですけれど」


「ギルドの場合は預かるだけか。うーん、金貨一枚で市民登録しておくのもありっちゃありだが、まずは年間通して安定的に収入を得る方法を見つけるまでは無駄遣いできないしな。銀行から借金はできるのか?」


「市民登録証で収入等を把握できていますので、安定した収入と職業と実績があればその信用度に応じて借り入れが可能なようですが、私のような場合ですと借金は不可能です」


「いや、借金が無くて良かったよ」


「お兄ちゃん、私には銀貨十五枚って多すぎなんだけど」



 といって銅貨二百枚を残して残りの銀貨全てを婆さんの前に置こうとするのを俺は止める。



「エリナは貯金しておけ、その内ミスリルみたいな高額な装備が必要になるかも知れないしな」


「うん……じゃあせめてお兄ちゃんと一緒にする!」



 そういうと銅貨二百枚を婆さんの前に置く。



「エリナもありがとうね」



 婆さんがにっこりとエリナに微笑む。



「お兄ちゃんといっぱい稼いで、もっと孤児院にお金をいれますからね、院長先生!」



 うんうんと頷く婆さんが泣きそうだ。苦手なんだよな、こういう雰囲気。



「よし、じゃあ話は済んだし、ってそうだ婆さん、ホースってわかるか?」


「ほーす? ええと、水を通す管でしょうか? 導入管とは違ってある程度柔軟性を持った」


「そう! それ! この世界にもあるのか?」


「ゴムが高価なので木工ギルドで貴族様向けに販売していますが、皮で作った管を補強した代用品ならば皮製品を取り扱っている店で購入できると思いますよ?」


「助かった! ありがとうな婆さん。よし買い物に行くぞエリナ」


「わかった! ヘタレで照れ屋なお兄ちゃん!」


「うっせー早くしろ。置いて行くぞ」


「待ってよお兄ちゃん! じゃあ院長先生行ってきますね!」


「いってらっしゃい、トーマさん、エリナ」



 院長室から出て、ヨモギを取り出して空になった背負い籠を背負う。

 孤児院の扉を開けるといつものようにエリナが腕にしがみついてくる。

 胸甲が無いから痛くない。

 かといって凄く柔らかいかと言えばそうでもないのが悲しいな妹よ。


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[一言] トーマもエリナも実に良い子じゃのう、うんうん。(誰?)
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