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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
最終章 未来

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404/405

説得。


「…ですので、今のところ取り急ぎ必要な設備や施設は御座いません。」



タロスが応接間で頬張ったお萩を緑茶で流し込んだ浩二へと告げる。

その隣には満面の笑みを浮かべたナオの姿が。



「ほら!タロスもこう言ってるし、行こうよ!浩二っ!」


「…いや、だけど何日も領を空けて大丈夫なのか?」



超乗り気なナオに対し、心配性の浩二。

この男、本当に骨の髄まで社畜の様だ。



「…マスター。」


「…はい。」



若干座った目でボソリと呼ぶ主の名。

これは正座案件だなと掘り炬燵から足を出しその場で正座する浩二。



「先程も申し上げた通り、現在取り急ぎマスターの手を煩わせるような案件は御座いません。私がこのような事を言うのは非常に心苦しい上に差し出がましいのは重々承知しておりますが…あえて言わせて貰います。」


「…はい、どうぞ。」


「マスターはもう少し心の余裕を持ち合わせた方が宜しいかと思います。今現在のサーラ領はマスターの存在が無くても数十年は問題なく維持出来ます…いえ、それどころか、更に発展する可能性すらあります。」



タロスは正座する浩二の前に片膝を付き、真剣な表情で真正面から自らの主を見つめる。



「それは、マスターの存在が必要なくなったのでは無く、見守る立場へ変わられたと言うことです。子供は育てばやがて親元を離れます。いつまでも親元で養われている子は居ないでしょう?それとも、マスターは我々の事が未だに心配ですか?」


「それは無い!タロスも、他の皆も本当に良くやってくれている。」


「でしたら、もう少し力を抜いて我々を見守って下さい。もし、我々の手に負えない事があったならば…その時は真っ先にマスターを頼ります。貴方はこのサーラ領の領主なんですから。」



それは慈愛に満ちた表情で浩二の肩に手を置くタロス。

そして、スッと立ち上がり後ろに控えていた女性とその場所を代わる。



「それともう一つ。奥様は大切になさって下さいね、マスター。」



そう悪戯っぽく言うと、襖の向こうへと行ってしまった。

それを見届けた女性…ナオは浩二の前でしゃがみ込む。



「だって浩二。私は不満なんて無いよ?ただ…」


「あぁ、流石にここまで言われたら俺だって理解するさ。」


「じゃあ…っ!」


「あぁ、行こう新婚旅行に。」


「っっっやぁったあぁぁっ!!!」



それは屋敷を震わせるレベルで雄叫びをあげるナオ。

浩二と結婚式を挙げて早2年、待ち待ったこの時を噛み締めながらも湧き上がる興奮を抑えきれずに居ると、浩二の後ろの襖がスーッと開く。



「五月蝿いわね、外まで聞こえてたわよ?」


「凄い声だったけど…まさかナオちゃん、やったの!?」



中を覗き込みながら呆れた様子で入って来た麗子の後ろから現れた舞が何かに気付きナオに尋ねる。



「うんっ!やったよ、舞ちゃん!!」


「嘘っ!?やったね、ナオちゃん!!」



喜び飛び付いて来たナオを受け止めながら自分の事のように喜ぶ舞。



「…やっと連れて行く気になったのね…何年待たせてんのよ、全く。ナオに言わないでって言われてたから今迄言わなかったけどさ。」


「いや、返す言葉も無いです。」



ジト目を飛ばす麗子に軽く説教されながら、舞と抱き合って喜ぶナオに声を掛ける。



「でもナオ、何処に行きたいんだ?おれはナオの行きたい所なら何処でも良いけど…」


「あぁ、それならもう決めてあるんだ!!」



舞に抱きつきながら顔をこちらに向けてそう言うナオ。

一体何処に行くつもりだろうか?

そんな事を考えていると、廊下の奥の方から何やら騒がしい声が近付いて来る。



「あ"あ"ぁ〜〜っ!!また負けたぁっ!!」


「もう少しだったのにぃーっ!!」


「また半年後にチャレンジしようよ!次は行けるよ!」



頭を抱えながら悔しがる『永遠の二位』のお二人とそれを励ます栞が麗子と舞に続き応接間へと入って来た。



「お疲れ二人とも。今回も二位か?」



浩二が少し意地の悪い顔をしながら猛に問い掛けると、右手で髪をくしゃっとしながら開いたその口からは予想外の答えが返ってきた。



「ちげーよ!三位だよっ!三位っ!!」


「それはまた、予想外の展開だな。」



舞のドライビングテクニックはともかく、猛だって下手な訳では無い。

まして、この世界で人族組以上にエアバギーを上手く操る事が出来る人物が居るとは到底思えなかった。



「じゃあ、準優勝は何処の誰なんだ?猛を抜くとなると相当だよな?」


「………私達よ。」



ん?今麗子がボソリと何かを呟かなかったか?



「…え?何て?」


「だから、二位は私達よっ!!文句あるのっ!?」


「マジか!?嘘だろう?」


「本当ですよ、岩谷さん。私もびっくりしました。」



怒り狂う麗子とは対照的に何処か冷静な舞。

彼女は本来は人と競うと言うよりは、サーキットを作った当初から変わらず、楽しく走れれば順位等はあまり気にはしないそうだ。

それにしても、舞のエアバギーを抜く?

一体何処の誰だろうか?



「なぁ、舞と麗子を抜くって一体何者なんだ?」


「…一人は人族だった気がするわ。少し長めの茶髪で二十歳半ば位の女だった気がする。」


「そうです。もう一人はエルフの女性だった気がします。色素が薄くて耳が尖っていましたし。」


「人族とエルフ?…また特殊な組み合わせだな…で、二人の名前は?」


「えーと…何だったかしら…」


「人族の方がアカツキ、エルフの方はアウトキュナーだったような…」


「…全く聞いた事がないな…って、アカツキって勇者か!?」


「いや、俺等のクラスにアカツキなんて奴居なかったぞ。」


「そりゃそうだよ。苗字の方は名乗った事ないもんね。」



その時、謎の優勝者の考察をしていた一同の後ろから知らない声が掛かる。

振り向けばそこには、たった今説明された二人がご丁寧に靴まで脱いで廊下に立ってコチラを見ていたのだ。


そして次の瞬間、浩二は額に手を当て首を振りながら絞り出すように口にした。



「…神様、こんな所で何やってるんですか。」

読んでいただきありがとうございます。

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