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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第二章 レベルアップと種族進化

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栞、舞う。


辺りが静かになる。

実際にはそんな事は無いのだが、栞の周りの空気だけが明らかに変わった。


やがて栞は静かに舞い始める。

それほど速い動きでは無いが、美しい姿勢で扇を手に優雅に舞う。

その表情は何処か凛としており、それでいて舞の中に感じる微かな艶の様なもの。

普段の栞とは明らかに違う…大人の女性がそこに居た。



「栞ちゃん…綺麗だね!」


「あぁ、本当に。」


「日本舞踊って始めて見ましたけど…凄く綺麗なんですね…」



浩二達が互いに感想を口にする。

そして、舞の治療を受ける為に並んでいた兵士達も息を呑んで栞の舞に見蕩れている。

エルフのお姉さんなんて、目をキラキラさせながら魅入っていた。


その時だった。

栞の舞に合わせて振られた扇から桃色の光の粒のような物が舞い始めた。

良く見ると…それは桃色に輝く花弁だった。


栞が舞う度、扇子を振るう度、舞い散る光の花弁はやがて栞を取り巻き宙を舞う。


ふと彼女の頭にある詞が浮かぶ。


そして栞は…迷うこと無くその(ことば)を口にした。



「咲き誇る花よ…その花弁にて傷つきし者を癒したまえ…『癒しの舞《桜花》』っ!」



舞の名と共に栞の扇が大きく振るわれる。


瞬間、栞を取り巻いていた光の花弁が、辺にいる兵士達に降り注ぐ。

桃色の花弁は兵士達の傷に吸い寄せられるように集まり、桃色の光を放つと…そこには傷など初めから無かったかのように完治していた。


そして、ざわめく周囲を他所に栞は静かに舞を終える。



「栞ちゃぁーーん!!」


「きゃあっ!」


「凄いよっ!栞ちゃんっ!すっごく綺麗だったよーっ!」



沈黙とざわめきを打ち破ったのは、飛び付くように栞に抱き着いた蓮だった。

やれやれと首を振りながらも何処か嬉しそうに栞に近付く浩二。



「栞ちゃん…凄かったよ…凄く…綺麗だった。」


「お兄ちゃん…」



浩二の素直過ぎる褒め言葉に顔を真っ赤にして俯く栞。

でも、その顔は嬉しさに満ちていた。


そして、栞のステータスプレートにひっそりと新たなスキルが刻まれた。

『癒しの舞「桜花」』と。



□■□■



「お願いっ!栞さんっ!私に舞を教えてっ!」



ざわめく兵士達を押し退け栞の手を握り、あのエルフのお姉さんが詰め寄る。



「え?あ、あの…」


「ずっと…ずっと知りたかった!あの日、勇者の一人が私達を癒してくれた…あの癒しの舞を!ずっと憧れてた…ずっと…ずっと…」



エルフのお姉さんはいつの間にか涙を流していた。

余程の事なのだろう。

それに気付いた栞は小さく…でもハッキリ



「…私で良ければ…お教えします。」



と告げたのだった。



後から聞いた話だが、あのエルフのお姉さん達は百数十年前、魔物に襲われ傷を負いながらも何とか魔物を倒したが、余りにも傷が深く死を覚悟していた時、たまたま通りかかった勇者の一人が舞ったのがあの癒しの舞だったらしい。


名前も名乗らず、足早に去っていった彼女の舞が頭に焼き付いて離れず、自らも同じ様に舞いたいと思い独学で数十年かけて、やっと多少の癒しの効果が出るまでには出来たのだが、完全に行き詰まっていた。


そこに現れたのが、全く同じ舞を舞う栞だった…と。



当の栞はいつの間にか兵士達にも取り囲まれ、「あの舞凄かったなー!」とか、「痛みも引いたし助かったよ。」とか、「うちの孫の嫁に来ないかい?」等と言われながらもみくちゃにされていた。


ちょっと苦笑いと驚きが入り混じったような複雑な表情をしているが、そこに悲壮感や孤独感のようなものは無かった。

「誰かに認められたい」そんな思いもあったのかもしれない。


たった一回の舞で、栞はそれ等を手にしてしまった。

それだけあの舞は周りの人達にとっても、栞にとってもインパクトが強かったんだろう。



「俺も…負けてられないな…!」



浩二は自らに気合いを入れながらも、人集りの中心にいる栞を優しい眼差しで眺めていた。



□■□■



「んー…これってどうなんだ?」



掌の上でコロコロと転がるビー玉より少し大きい程度の透明な球体。

その球体は淡く青色の光を放っていた。



「これが…魔核(コア)なんだよな?」



浩二はスキルの『魔核作成』にて、魔核を作っていた。

しかし、魔核の善し悪しなど分からない彼は、掌で魔核を転がしながら途方に暮れていた。

足元には既に数個の魔核が無造作に転がっている。



「コージ、調子はどう?…って、それ魔核じゃない!何処で手に入れたのよ!?」



浩二の様子を見に来たソフィアが掌で転がる魔核を見て驚く。

足元にも無造作に転がっていることに更に驚く。



「あぁ、ソフィア。何処も何も今作ったんだよ。」


「はぁ!?」


「へ?」



二人揃って素っ頓狂な声を上げる。



「作ったって…魔核を!?」


「うん、ほら…『魔核作成』」



浩二は特に気負う事無く掌に新たな魔核を創り出す。



「なっ!?」



目を見開き唖然とするソフィア。

浩二の掌には新たに創り出された魔核がコロコロと転がっている。


やがてソフィアは額を抑えながら首を左右に振る。



「コージ、貴方…やっぱり変よ。うん、おかしい。」


「失礼な。」


「いい?よく聞いてねコージ。」



ソフィアは浩二の目の前に人差し指を立てると、説明を開始した。

可哀想な子供に話して聞かせるように。



「まず!魔核は普通作るものじゃないの。本来魔核っていうのは、魔物の体内…主に心臓付近に精製されるものなの。そして、その純度は魔物の強さに比例するわ。」



ソフィアは浩二の掌から魔核を一つ摘み上げると、日に翳してから改めて浩二に向き直る。



「この純度の魔核だと、この辺りの森でもそうそう手に入らないわ。分かる?自分のした事。理解した?」



ため息混じりにソフィアは問い掛ける。



「普通じゃない事は理解した。」


「よろしい。」



ソフィアは腕を組み満足げに頷いた。

読んでいただきありがとうございます。

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