タロスの仕事。
「それじゃ、早速行くか。あ、ナオとタロスは急な温度変化に対応出来るよな?」
「うん、大丈夫だよ。この身体になってから、常に適温って感じ。」
「私もサーラ大砂漠程度の温度差ならば問題ありません。」
「よし!それじゃソフィア、行ってくるよ。」
「ええ、気を付けてね。」
ソフィアの見送りに頷くと、又もや足元に作ったゲートにナオ、タロス、浩二の順番で飛び込み領地へと転移していった。
全く、忙しない限りである。
□■□■
「うわぁーっ!高いねーっ!」
「マスター、ここは?」
見渡す限り赤茶けた砂漠地帯が広がる光景に驚きながらも喜ぶナオと、冷静に状況判断しようとするタロス。
三人が降り立ったのは、地上500mの大灯台の最上部。
灯台の光源の更に上に作られた展望台だった。
展望台とは言っても、直径5m程の円形の床に手摺が付いただけの簡素な作りで、光源の部屋から梯子で繋がっているだけであり、その高さも相まって高所恐怖症じゃなくても足が竦むレベルである。
「ここはこの間俺が作った大灯台の最上部だよ。ここからなら領地が一望出来るからな。位置はこのサーラ半島の丁度中央辺りだと思う。」
「ここが、サーラ大砂漠ですか…書物で知るのと見るのではやはり違いますね。」
「書物には何て書いてあったんだ?」
気になる自領の書物での評価。
「はい、『土地は開拓に向かない不毛な砂漠地帯であり、砂塵と灼熱の昼、乾燥と極寒の夜は等しく全ての生物にとって死の世界である。』と。」
「…うわぁ…」
「更に、『幾度と無く送られた様々な種族の調査隊は、尽くこの過酷な環境に耐え切れず撤退を余儀なくされた。その最大の理由は「水不足」である。』と。」
「………」
「更に、『未だ全ての土地を探索出来ていないのは、龍が住まう「大山脈」とこの「サーラ大砂漠」だけである。』と。」
「………」
「更に、」
「ストップ!ストップ!分かった!了解!」
これ以上自領の悲惨さをアピールしないで欲しい。
取り敢えず、未開の地である事がよーーく分かった。
やっぱりネックはこの寒暖の差と水不足なんだな。
この間まで暑さと寒さに苦労していた浩二だったが、今は違う。
『ソフィアと愉快な仲間達』によるお仕置きによって壊れてしまった『風の衣』と言う魔道具。
それの改良版たる『風の衣・改』通称『エアコン』により、今浩二の体の周りには程良い湿度と気温が保たれている。
風魔法の他に水魔法と火魔法を追加する事により、温度調整と湿度調整が可能になった。
今の浩二ならば、普通に生活する分には気温の変化など屁でもないのだ。
あくまで普通に生活すれば…だが。
「やっぱり当初の予定通り、幾つかここと同じ様に水場を作るか。」
「ここと同じ様に…ですか?」
「ああ、全く同じじゃなくて良いんだ。ある程度遠くから見えるように目印としてここみたいに灯台を建ててその周りに水場を作るんだよ。」
「成程、では私が此所に来た理由はその候補地を探す事ですね?」
話が早くて助かる。
「そうだ。ここみたいに砂が少なくて岩盤が剥き出しになっているような場所を探してマーキングして欲しい。その場所の中心辺りに目印として…20m位の塔を建ててくれ。太さはそれ程要らないが、強度はそれなりに。そして、先端に光を灯してもらえれば、この大灯台の天辺から俺が『転送』で飛べるからな。」
「岩盤が剥き出しになった場所を探し、中心に砂嵐に負けない程度の簡素な塔を建て、その先端に光源を置く…了解しました。他にご要望はありませんか?」
浩二の命令を復唱する様に呟いた後、タロスは追加の命令が無いかを確認してくる。
心做しかやる気に満ちているようにも見える。
それはきっと間違いでは無いだろう。
今正にタロスが待ち望んだ『マスターのお役に立つこと』が出来るのだから。
「そうだな…万が一だが、もし先住する種族が居た場合、戦闘は避け友好的に接する事。」
「はい、畏まりました。」
「後…無理はするな。一日で終わらせる必要は無いから、ある程度作業を進めたら帰って来る事。」
「了解しました。」
「それじゃ、今から『土魔法』と『千里眼』を魔核に新たに書き込むから、それを使ってよろしく頼む。」
浩二がそう言うとタロスはその場に膝間づき胸を露出させ自らの魔核を顕にする。
魔核に触れ、新たに『土魔法』と『千里眼』を書き込んだ浩二は立ち上がり真っ直ぐにタロスを見て口を開く。
「頼んだぞタロス。」
その言葉を聞いたタロスは、一瞬身震いをすると露出した魔核を体内に収め素早く立ち上がる。
その瞳はやる気に満ち溢れていた。
「それではマスター、行って参ります。」
「あぁ、よろしくな。」
タロスは胸に手を当て優雅に一礼すると、瞬く間にその場から姿を消した。
「よし、後はタロスに任せてこっちはこっちの仕事をしよう。」
「タロス嬉しそうだったね。それで?浩二は何をするの?」
「取り敢えずこの大灯台を城壁で囲ってしまってから、城壁の中に砂が入り込まないように風の結界で覆うんだ。せっかくの水場が砂だらけになっちゃうしな。」
前回浩二が作った大灯台周りの水場が、既に砂により一部埋まってしまっていたのを見てからやらなきゃならない事の一つに加えられた事だった。
たかが一日ぐらい大丈夫だろうと、砂漠の砂嵐を完全に甘く見ていた。
これ程までのスピードで砂が吹き溜まってしまうのならば、やはり城壁は必須だろう。
そして、砂自体を防ぐ結界も。
「そう言えば、この砂漠の砂も『アラビア半島』の砂漠の砂みたいに85%は石英なのかな?」
吹き溜まった砂を手で掬いサラサラと零しながらナオがボソリと呟く。
「え?」
突然のナオの呟きに驚く。
「だって、アラビア半島にある砂漠の砂って殆どが石英って聞いたよ?ってより、砂漠の砂自体が主成分が石英だった筈だよ?」
「……ナオって意外と物知り?」
「失礼だなぁ!これでも私は浩二より年上なんだからねっ!」
「え?マジで!?」
「アレ?言ってなかったっけ?」
いやいやいや、聞いてない聞いてない!
「残念ながら、初耳だよ。」
「そっかぁ。前世と猫の時も合わせたら私は今27歳なんだよ。…この身体を貰ってから、妙に若返ったみたいではしゃいでたけどねー!」
まさかの新事実!
なんとナオは一個上のお姉さんだった!
「まぁ、それはそれとして、今まで通り接し方は何にも変わらないけどな。」
「えー!」
年上だろうが何だろうがナオはナオだしな。
読んでいただきありがとうこざいます。




