大灯台。
「へぇ…砂漠地帯でもこういう場所があるんだな。」
半島のほぼ中央、そこに降り立った浩二は辺りを見渡し呟く。
岩肌が剥き出しになった小高い山には、枯れ木のような葉のない木がポツポツと生えており、それ以外は剥き出しの岩盤の様な大地が広がっていた。
砂漠と言えば『砂』だが、その砂すら見当たらない。
ただ、時折吹く強めの風が、何処からか運んで来た砂を巻き上げて吹き抜けてゆく。
「…あの風が砂をみんな攫って行ったんだな…」
顔を守るように手を翳し風が通り過ぎるのを待つ。
やがて風が収まると浩二は早速作業に入る。
「砂が無いのはラッキーだった。」
硬い岩盤に手を付きそう呟いた瞬間、浩二の目の前に半径20m程の円形をした土壁が出来上がる。
その壁を高さ3m程まで伸ばした所で浩二は立ち上がり強度を確かめる様に軽く拳で叩く。
厚さ1m程の土色と言うより砂に近い色の壁は、コンコンと硬質な音を返す。
「うん、強度は問題無いな。後は…半島の何処からでもコレが見える様にひたすら上に伸ばすだけだ。材料は山ほど有るしな。」
辺りを見渡し、その全体から土を集める事を意識しながら、塔のようにひたすら壁を上へと伸ばしてゆく。
強度を保つ為50m置きに床を作り、その高さが500mを超えた辺りで一旦作業を中断する。
「少し補強しようか。」
塔の一箇所に手をつくと、すぐ隣の壁からズズズッ…音を響かせ厚さ5m程の壁が生えてくる。
塔に対して垂直に10m程伸びたその壁は上に行くにつれて短くなり、塔の7割の辺りまで続いていた。
更に別の三ヶ所で同じ様に壁を作った浩二は腕を組み満足そうに頷く。
丁度真上から見れば塔を中心に十字に壁が伸びている感じだと言えば分かりやすいだろうか。
その壁が塔が倒れない様に補助しているのだ。
まぁ、浩二が作った段階で強度的な心配は全く無いのだが。
訓練所にて強度を上げながら土壁を作り、それをひたすら壊すというドMな訓練がここに来て実を結んだ。
「良し!取り敢えず一番上まで登ってみるか。」
浩二は足元に物理結界で足場を作ると、それを蹴り飛び上がる。
次々とそれを繰り返し、やがて平坦な塔の最上部へと降り立った。
「おお…っ!」
見渡す限り赤茶色の砂の大地。
所々にこの場所の様に砂の無い場所も見える。
少しぼやけてはいるが…遠くには海だろうか?…青色が見て取れた。
「…これが…俺の領地…!」
改めて感動と共に実感する。
見渡す限り生物の住まない死の大地。
しかし、今迄この世界で手に入れた力と地球での知識。
それを使えばきっと、もっと住み良い土地に変える事も出来る筈だ。
浩二は自らの両拳を打ち付け気合いを入れる。
「やるぞぉぉーーっっ!!」
あらんばかりの叫び声と共に。
□■□■
「それで?どうだった?初めて見た領地は。」
「んー…砂と岩ばかりで、ただただ暑かったな。広さだけは半端じゃなかったけど。」
「…やっぱりね。どう?なんとかなりそう?」
「…何とかするよ。ただ、時間はかかるだろうけどね。」
お馴染みの小部屋でせっせと何かを作りながらソフィアの質問に答える浩二。
あの後、変に気合いの入った浩二は、水源を作りつつ塔の周りを水場で囲い、橋を渡して塔まで行けるようにしたり、塔の最上部に屋根と柱を作り、暗くても塔の位置を確認出来るようにと中心に強い光源を置き『塔』を『灯台』へと変えた。
気付けば辺りは暗くなり始め、気温も肌寒いを通り越して来た辺りで作業の切れも良いという事でシュレイド城へと戻って来たのだ。
戻って来て直ぐにナオに感づかれ、連れて行かなかった事をこっ酷く叱られた。
「私は浩二のパートナーなんだからねっ!」と。
明日からはナオを連れて行こう…それと…
「なぁ、ソフィア。タロスを連れて行っても良いかな?」
「…良いんじゃないかしら?そもそもタロスはコージのマシナリーだもの。」
「そっか。それじゃ、遠慮無く連れて行くよ。」
作業をしながら確認を取る浩二を見てソフィアが気付かれないように笑顔を浮かべる。
(やっと出番よ、タロス。頑張りなさい。)
心の中でタロスにエールを送りながら。
実は一度ソフィアの元へとタロスが訪れた事があった。
何事かと聞いてみれば「もっとマスターのお役に立ちたい。」と。
その時ソフィアはタロスに向けてこう言ったのだ。
「いつかコージがこの城を出て行く時が来るわ。その時、コージには絶対にサポートが必要になる。」
「その役目を貴方が担いなさい。今からでも遅くは無い、知識と経験を積んでおくのよ。」
と。
それからタロスは学んだ。
日中はメイドに付いて周り掃除、洗濯、料理、裁縫。
兵士に付き合って戦闘訓練。
更に夜になればシュレイド城の書庫に篭もりひたすら知識を蓄えた。
睡眠を取る必要もなく、食事も必要としないタロスは、丸一日使い知識と経験を蓄え続けた。
浩二に新調して貰った、底が見えない程の容量を持つその魔核へと。
全てはマスターである浩二の為に。
「所でコージは何を作ってるの?」
「あぁ、コレは…」
浩二は出来上がったばかりのソレをソフィアに見せる。
「…グリーブ?」
「そう。久しぶりの俺専用装備だ。まぁ、用途は防御じゃないけどな。」
見た目は普通の足装備に見えるそのグリーブはオリハルコン製であり、配色は黒。
膝上辺りまでを覆う作りになっており、多少厚くなっている底には大きな穴が空いていた。
そして、所々に謎のスリットが刻まれている。
「…グリーブを防御以外につかうの?」
「そう。ちょっと俺の力だけじゃ姿勢の制御と方向転換なんかに不安があってさ。コイツに補助を頼むつもりなんだ。」
グリーブをポンと叩きながら説明されたが、ソフィアにはなんの事を言っているのかさっぱり分からない。
「何の話かさっぱり分からないけど…まぁ、良いわ。どうせコージの事だから突拍子も無い事だろうし。それで、そっちは?」
テーブルに置かれた布で包まれた何か。
それを指差してソフィアが訊ねる。
「あぁ、ソレはミラルダさんに渡そうと思って作った装備だよ。随分とお世話になったのに、何のお礼もして無かったからさ。」
「そう、喜んでくれると良いわね…ってミラルダならコージから貰った物なら何でも喜びそうだけど。」
喜んで浩二に抱き付くミラルダの姿をリアルに思い浮かべ苦笑いつつ、渡しに行く時は付いて行こうかと本気で考えるソフィア。
多分…いや、間違い無くその予想通りになるだろうが。
読んでいただきありがとうこざいます。




