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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第五章 砂の大地

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『縮地』式ブースター。


以前、浩二が麗子に言われるままに『縮地』を使い、縮めた空間が元に戻る際に発する衝撃波で城壁までスッ飛んだ事があったのは記憶に新しいが…


今回浩二の試した『特殊な方法』とは、この衝撃波を利用したものだった。


約10m以上『縮地』で移動した際生じる衝撃波。

これは移動する距離が伸びれば伸びるだけ強くなり、常人ならば粉々になるレベルの衝撃だ。


そう、常人(・・)なら。


最上位種たる浩二はこの衝撃波をまともに受けてもほぼ無傷で耐えられる程の強靭な肉体を持っている。

この事は既に実証済みだ…本人の意思とは無関係に。


後は『縮地』と言う名前の通り、地面に接して無ければ使用出来ないのかどうかの検証のみだった。


結果は、空に向けての縮地に成功した段階で終わった。


地面を軽く蹴り、足を後ろに向けた状態で空に向かい斜めに縮地を使う。

今回は20m程の距離を縮めた。

瞬時に20mの距離を移動し終えた浩二の後ろから激しい衝撃波が襲う。

その衝撃波を全て、後ろに置いた足で受け止め一気に加速する。


ここまでは予想通りだった。



加速した直後、浩二の目の前にあったのは見えない壁。

硬い訳ではなく、重く沈み込むような感覚。

そして、何よりもキツいのはその感覚になってから起きた呼吸困難だ。


今の浩二を倒しうる唯一の方法。

それは呼吸を出来なくしてしまう事だ。

まぁ、それもいずれは解決してしまうんだろうが…


話を戻そう。


耐えられなくなった浩二は事前に用意していた方法で減速…そして今に至るわけだ。




「…アレが空気抵抗って奴か…更に加速すると、もっと硬くなるんだろうな……なら、前方に風魔法で円錐を作って……でも…加速し過ぎると摩擦熱が発生するらしいし…水魔法も必要か?…いや…でも、この大陸間でそこまでのスピードは…」



浩二はその場で胡座をかき座り込み、顎に手を当て何やらブツブツ言い始めた。



「…えーと…コージ君?」


「…あ!はい。何ですか?」



ミラルダに話し掛けられ我に返る浩二。

何かに夢中になると周りが見えなくなるのは浩二の悪い癖だ。



「どう?あの方法、上手く行きそう?」


「…多分ですが、飛ぶだけなら次は大丈夫だと思います。」


「…そう。あのスピードで飛ばれたらぁ…私はついていけなさそうだし、この辺で帰るわぁ。」



少し寂しそうにミラルダはそう言うとサキュバス領に帰るゲートを開く。



「…すみません…送って貰ったのに、何も出来なくて。」



ミラルダの様子を見て少し申し訳なくなったのだろう。

俯き加減で言葉にする浩二を見てミラルダは優しく笑う。



「ふふっ…良いのよぉ♪その代わりぃ…」



そこまで言って浩二に近づき耳元で囁く。



「今度はゆっくり二人でデートでもしましょうね?」



そう言って浩二の頬にキスをする。



「!!」


「ふふっ♪それじゃあ、またねぇ♪コージ君♪」



ミラルダは浩二の反応に満足したのか、それだけ言うとゲートに飛び込みサキュバス領へと帰って行った。



「…今度ちゃんとお礼しなきゃな…」



一人残された浩二は、頬に残るキスの感触を思い出しながら呟いた。




□■□■



「うん、左右に安定しないけど…取り敢えずは及第点かな?」



上空を生身で高速飛行…と言えば聞こえは良いが、単にスッ飛んでるだけなのだが…

両腕をしっかりと身体に固定し、前を向き目の前には鋭角に捻った高密度の風が展開してあり、空気抵抗を緩和すると同時に酸素の確保も出来る様になった。


言ってしまえば『人間弾頭』である…ドワーフだが。


浩二が言う通り今の所及第点位だろう。

少しでも両腕を動かすと途端に空中姿勢が乱れ、錐揉みしながら落下してしまうのだから。



「何らかの方法で姿勢制御出来る様にしなきゃな…」



高速で飛行しながらそんな事を考えていると…前方に茶色とも赤とも言えるような大地が見えてくる。

今現在の眼下は草原であり緑一色なのだが…先に進むにつれ徐々に緑は失われ、色彩はほぼ土色に変わる。


そして、少し遠方…

見渡す限りの広大な砂漠地帯が目に入る。



「…あれがサーラ地方か…」



何度目かの追加ブーストをするとあっという間に眼下は砂漠一色になる。

丁度正午辺りになるだろうか、太陽がギラギラと照りつけ予想していたよりクリアに遠くを見渡せた。



「やっぱり…砂嵐とかあるんだろうか?」



そんな事を呟きながら浩二は姿勢を変え、一旦砂漠のど真ん中に着地する。


先程と同じ様に。


ボフンッ!という少し柔らかい音がして浩二は砂に埋まる。

結構深く。


勢いを物理結界で殺したとは言え、地面を足で10mも削る勢いが残っているのだ…この柔らかい砂の大地では受け止めるだけの硬さはない。



「ぷはぁっ!!危ねぇ…砂で溺れる所だった…」



足元に作った物理結界を蹴るように砂から脱出した浩二はペッペッと口に入った砂を吐き出しながら項垂れる。


しかし…砂漠の洗礼はそれだけでは無かった。



「…暑い…」



ジリジリと肌を焼く太陽。

汗は出ず、ただただ暑い…むしろ熱い。


先程までは高速飛行による影響でどちらかと言えば肌寒い位だったが、まるで真逆の環境だ。



「…確か…夜は氷点下だったっけ…?」



日中は気温が50度を上回り、夜は氷点下まで下がる。

砂漠というのは実に生命体に優しくない場所だ。


こんな場所を領地として与えられた浩二は不運以外何者でもない。


しかし、浩二は然程気落ちはしていなかった。

むしろ、自由に好き勝手出来る土地が生き物の住みにくい環境ならば、多少の無茶をしても誰にも迷惑は掛からないのだから。



「よし!暑さ寒さは後から対応するとして…今は具体的な広さが知りたいな。」



浩二は暑さを痩せ我慢しながら上空を見上げた。

そして、またもや縮地式ブーストをする。


ある程度上空へと飛んだ浩二は眼下を見下ろす。

見渡す限り砂の大地。

更に上昇すると、全体的な半島の形が見え始める。



「取り敢えず…見える半島は全部領地なんだよな…?…なら、先ずはド真ん中に拠点を作ろう。」



ブーストによる加速が無くなり、自由落下しながら腕を組み大体の目安となる場所に当たりをつけた浩二は、その場所目掛け一気に加速した。

読んでいただきありがとうございます。

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