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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第四章 新しい種族と新しい魔王

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最強の男。


「…ねぇ、コージ?今のコージの全力でこのフィールドどれ位まで広げられる?」



浩二が重力魔法の範囲を広げるのを見て目を見開き…溜息をつき…浩二に問いかけるシルビア。



「う~ん…試さなきゃハッキリは言えませんがこの感じだと… 」



身体の中の精神力量を測っているのか、腕を組んで目を閉じウンウンと唸る浩二。

そして、口を開く。



「この城全体なら多分行けますね。後、今の状態は『見習い』なんで、魔法効果が本来の10%しかないんです。ですから、見習いが終われば今の加重力でその10倍の広さ位行けます。」


「…聞かなきゃ良かったわ。」


「え?」


「いいえ、何でもないわ。」



浩二はシルビアの言葉に首を傾げながら背後に殺気を感じ素早く身を躱す。

その直後に浩二の脇腹を蹴りが掠める。



「おお、脱出おめでとう。」


「お陰様でっ!身体がっ!すこぶるっ!軽いわよっ!」



数倍の重力から開放された麗子は、身体が軽くなるのを感じながら連続で浩二に蹴りを放つ。

多少鋭くはなっているものの、やはり加重力下で体力が消耗していたのだろう、最後の蹴りを浩二に躱された後その場に座り込む。



「あ”〜~~っ!腹立つっ!後で見てなさいよっ!」



はぁはぁと肩を揺らして叫ぶ。

麗子は少し後からフィールドに入った事もあり多少は余裕があった様だが、同じく脱出に成功した蓮は訓練所の地面で大の字だ。

猛にいたっては下半身がまだフィールドに収まったままの状態で突っ伏している。



「浩二っ!またやろうね!」



そして、当然の様にナオだけはいつもと変わらず元気に浩二の腕に絡みつく。

何やら過負荷訓練が気に入った様だ。

マシナリーであるナオに過負荷訓練が有効なのかは謎だが。



「何やら面白そうな事をしておるのう。」



唐突に声を掛けられる。

誰だろう?

振り返るとそこには一人のドワーフが笑顔でこちらを見ていた。


種族がドワーフだと浩二が分かったのは鑑定を掛けたからではなく、見た目そのものが正にドワーフと言わんばかりの風貌だったからだ。


年齢は初老…と言うには少し若い位で、立派な髭を蓄え、見た目だけでも分かる程の筋肉量は年齢を感じさせない程に盛り上がっていた。


そのドワーフは浩二が振り返ると、目をこれでもかと言わんばかりに見開き一歩後ずさる。



「…パイトス…そんな馬鹿な…!」



そして、聞いた事の無い名で浩二を呼んだ。



「お爺様!?」



首を傾げる浩二の横からソフィアが現れ大声で彼を呼ぶ。

お爺様…と。



「お爺様?この人がソフィアのお爺さんなのか?」


「ええ、そうよ。…お爺様、色々言いたい事はあるでしょうけど…先ずは紹介するわ。彼がコージよ。」



紹介された浩二はペコリと頭を下げ自己紹介を始める。



「俺は岩谷浩二。この間エルダードワーフになりました。今回は色々ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」


「あぁ、それは構わぬよ。…儂はソフィアの祖父でギルと言う。ギル爺とでも呼んでくれ。…それにしても…驚いたわい。」


「…何にですか?」



何やら浩二をマジマジと観察するように見詰めながら驚きの表情を浮かべるギルに浩二は少し落ち着かない様子で訪ねる。



「ソフィアには聞いておらんのか?…お主は死んだソフィアの兄に瓜二つなんじゃよ。儂でさえ最初見た時はパイトスが蘇ったのかと思ったくらいじゃ。」


「ソフィアの兄さんと…?」



パイトスと呼ばれるソフィアの兄はどうやら浩二と瓜二つだったらしい。

そんな事ソフィアは一度も口にした事無かったな。



「違うからね!」



何も言っていないにも関わらず浩二の心を読むようにソフィアが慌てて口にする。

恐らく、浩二が兄に似ているから人属領から助けたと思われたくはないのだろう。



「分かってるよソフィア。ソフィアは俺がお兄さんに似ていなくたって、きっと助け出してくれただろ?付き合いはそんなに長くは無いけど…その位は分かってるつもりだよ?」


「…コージ…良かった。」



心底安心した様に笑顔を見せるソフィア。



「でだ、それはそれとして…そんなに似てるのか?」



そんなソフィアに改めて聞いてみる。

信用しているとは言ったが、これは話が別だ。



「ええ、そっくりよ。黒髪の頃は違和感があったけど…銀髪になった時は本当に驚いたわ。」



何故か少し顔を赤らめてソフィアが口を開く。


そして、それを見て何故かムッとするギル。



「今度お兄さんの話、聞かせてくれるか?」



浩二が何気無く言ったその一言。

その言葉を聞いた瞬間、ソフィアの顔に影が差す。

ここに来てから初めて見る顔だ。


そして、それに激しく食いついたのはギルだった。



「お前に話す事など何も無いわっ!」



肩を震わせ怒りを顕にするギル。



「お爺様っ!コージは何も知らないんだから、仕方ないじゃない!」


「それでもじゃ!ソフィアをその様な顔にさせる輩を許せる筈あるまい!」



何やら聞いてはいけない事だった様だ。

確か…死んだ兄と言っていた。

浩二は、自分の言葉が二人を少なからず傷付けたことに気付き深く頭を下げる。



「すみません!言葉に配慮が足りませんでした!」



そう言って目の前で頭を下げ続ける浩二に、自分の怒りが的外れな事を自覚したギルはバツが悪そうに視線を外す。



「…ふん!…知らなかったのだから仕方あるまい…ソフィア!儂の部屋へ案内してくれるかの。」


「え、ええ、分かりました。…コージ、また後でね。」


「あぁ、ごめんな…ソフィア。」


「ふふ、良いのよ。」



少し寂しそうな笑みを残し、ソフィアは急かすギルを連れ城へと戻って行った。



「なんか訳アリみたいだなぁ…こんな言い方したらアレだけど…兄貴も災難だよ。」


「そうね、アンタはただ似てるだけなんだから。」



気遣うように歩み寄って来た猛。

珍しく麗子にまでフォローを入れさせてしまった。



これから…明日戦う相手とギクシャクしてしまった事に少し後悔する浩二。

出来る事ならば、なんのわだかまりも無くぶつかりたかった。


世界最強と言われる男に。


ギルだけでは無く、どうやら浩二もこの闘いを少なからず楽しみにしていた様だ。



「んー…参ったなぁ…」



浩二は空を見上げ途方に暮れるしか無かった。

読んでいただきありがとうございます。

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