的VS砲台(ただし的は動く)
「先ずはルールの説明をするわ!的は魔法が身体に触れた段階でアウト。爆風や風魔法の風圧なんかはセーフよ。そして両手は触れてもOK。制限時間は30分。何か質問はある?」
「ハイっ!」
綺麗に指を揃え手を上げる猛。
「何?猛。」
「盾はOKですか?」
「ダメよ。」
「マジか…姉貴は俺に死ねと…」
「他には?」
華麗にスルーされる猛。
「一つ良いか?」
シュナイダーが軽く手を上げる。
「どうぞ。」
「せめて足首から下は許してもらえないだろうか…蹴りを使うかも知れないんでな。」
「ん〜…シルビア、どうかしら?」
「良いんじゃない?それぐらいなら。」
「OKだそうよシュナイダー。」
「助かる。」
「他には?無いなら始めるわよ?」
ソフィアが互いの陣営に視線を送り最終確認をする。
□■□■
訓練所の真ん中に引かれた1本の白いライン。
そこが砲台側の立ち位置だ。
的側はそのラインを割らない限り何処へ逃げてもOKだ。
つまり訓練所の半分が逃げ場となる。
砲台側は撃ち放題。
魔法の種類は問わず、唯ひたすらに的を狙う。
アウトになった者への追撃は不可だ。
まぁそれは当然だが。
的側の勝利条件は30分逃げ切るのみ。
サッカーグラウンド1面半程ある訓練所内を4人の魔法から逃げ続ける。
案外簡単そうだが…
そう簡単に行く筈が無い。
何せ4人のうちの1人が『魔導の魔王』なのだ。
シュナイダーは顔を青くしている。
猛は最初から青くしていた。
やる気満々なのは浩二とナオだけだ。
「良いか、先ず蓮の獄炎弾。アレは見た目はデカいしスピードも速い…が、問題なのはその爆発力だ。アレが目の前で爆発されたらもう何処から何が飛んでくるか分からないから、出来るだけ爆発の範囲から離れる事。」
浩二を含め四人が円陣を組み対応策を練る。
「次に麗子だが…何やらシルビアさんと悪巧みをしている臭い。昨日の風呂場での話を聞く限りでは面制圧で来るようだが、明らかな逃げ道には絶対に逃げ込むなよ…間違いなく罠が待ってるからな。」
「でもよ、面で来られたら逃げ場なんて左右しか無いんじゃ…」
「飛び込め。」
「は?」
「だから、面に向かって飛び込むんだよ。手を前に出して身体をなるべく真っ直ぐに伸ばして最低限の魔法のみを打ち消して潜り抜ける。」
「んな事出来るのか?」
「出来なきゃアウトだ。」
「………」
「まぁ、抜けた所を狙い撃ちってのも有り得るけどな。」
浩二は苦肉の策を更に塞いで来る。
「一番の対策はひたすら逃げろ。足を止めるな。縦横無尽に走りまくれ!」
「やっぱりそれしか無いよなぁ…」
「あぁ、止まったら狙い撃ちされて終了だ。」
どんよりとした空気が四人を包む。
「まぁ、そんな顔するな。二人にプレゼントを用意した。シュナイダーさんは瞬動使えますか?」
「いや、残念だが…」
「なら良かった。二人にコレを渡すよ。『瞬動の首飾り』だ。これを首から下げとけば『瞬動』を使えるようになる。」
「マジか!?」
「こんな高価な魔道具をいつの間に用意したんだ?」
「あぁ、今作りました。」
「…は?」
「あぁ、シュナイダーさん。浩二の兄貴はいつもこんな感じなんで諦めた方が良っスよ?」
「成程、猛は要らないんだな?」
「嘘だろ!?冗談だよな?兄貴!」
「…ったく。一応注意しとくけど、瞬動を使う時はくれぐれも足に力を入れ過ぎないこと。間違いなくすっ飛ぶからな。本格的に使うのは、逃げながら軽く慣らしてからにした方が良い。」
「分かった。」
「了解した。」
「んじゃまぁ、色々言ったが…どうせなら楽しくやろう。」
「だな。」
「うむ。」
「それじゃ、頑張ろーっ!」
「「「おう!」」」
ナオの掛け声に気合を入れる的一同。
そして四人はそれぞれを巻き込まないようにバラバラに散った。
□■□■
「それじゃ…始めっ!!」
ソフィアが腕を振り下ろすと同時に狩りが始まった。
いつの間にか城中の人が集まったのではなかろうかと言わんばかりのギャラリーがそこかしらに群がっていた。
殆どは白線の外側に居るが、中には城壁の上で観戦すると言う猛者までいる。
危ないから気を付けて欲しい。
そんなギャラリーが見守る中、早速飛んで来ました獄炎弾。
「さあ!狩りを始めるよっ!」
物騒な言葉を発しながら放たれた獄炎弾が4つ。
その全てが…
猛に降り注ぐ。
「はぁ!?ちょっ!マジかよっ!?」
露骨に狼狽える猛。
うん。
まぁ、予想してなかった訳じゃないが。
問題は…
「ナオっ!」
「大丈夫!見捨てるっ!」
良し。
どうやら相手の意図に気付いていたようだ。
良く見れば明らかに狙撃体勢の若干2名。
恐らく猛を助けに行ったら狙い撃ちされていただろう。
何処に逃げるか分からない相手より、助けに行く奴を狙った方が行き先を限定しやすいもんな。
猛は可哀想だが。
まぁ、あれぐらい潜り抜けてくれないと困る。
出来ないなら…早々に退場した方が安全だ。
時間が経過すればする程、砲台側の遠慮が無くなって来る筈だしな。
その時、爆炎の中から人影が飛び出して来る。
すかさずその人影に向かい射出されるアイスニードルとウィンドカッター。
ウィンドカッターとは簡単に言えば鎌鼬だ。
熟練者の放つウィンドカッターは鉄すらバターの様に切り裂く。
そして、今回ウィンドカッターを放ったのは…シルビアだ。
うん。熟練者だ。
彼女達は俺達を殺すつもりだろうか?
「シルビアさん!流石にウィンドカッターはえげつないですよっ!」
「馬鹿にしないでくれる?一応痛い程度に抑えてるわよ。」
あぁ、抑えても取り敢えず痛いんだ?
麗子のアイスニードルとシルビアのウィンドカッターが人影に当たったと思われた瞬間、その人影が消えた。
正確には…
「うおっ!?」
浩二の後ろを土煙をあげて転がる猛。
「くそっ!避けても結局痛いのかよっ!」
土まみれのまま素早く立ち上がりキレる。
どうやら瞬動を使ったらしい。
結果は見ての通りだが。
「だから、練習してからにしろって言ったろ?」
「どこに練習する暇があったんだよっ!」
開幕爆撃を受けているのだ、当然そんな暇はない。
「それじゃ…っ!」
「うおっ!ヤバッ!」
別々の方に飛び退く二人。
先程まで二人のいた場所に着弾する獄炎弾とアイスニードル。
「逃げながら練習しろっ!」
「くそっ!それしかねーなっ!」
幸先不安だが…頑張って欲しい。
読んでいただきありがとうございます。




