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あれ?ドワーフって魔族だったっけ?  作者: 映基地
第四章 新しい種族と新しい魔王

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ソフィアの報告。


やがて麗子がスタッと静かに着地すると翼はマントの形に戻った。



「びっくりしたわ…まさかあんなに高く跳べるなんて…」


「ようやく降りてきたか。説明しても良いか?」


「…ええ、よろしく。」



釈然としない顔をした麗子はそう言って頷く。



「麗子の『ミラージュ』と『メビウス』に加えた『皇帝鷲の風切り羽根』なんだが、風魔法との親和性が恐ろしく高い。寧ろ風魔法そのものと呼べるぐらい。アローが変化したマントは直接羽ばたいて飛ぶ事は出来ないが、さっきの様に滑空や落下の勢いを殺す事なら出来る。次にブーツだが、鉤爪の形の装飾が見えるだろ?そのブーツはほぼどんな場所でもその鉤爪で足を固定出来る。」


「…やってみる。」



麗子は城壁の側に歩いてゆくと、又もや軽々と跳び上がり城壁に足を付けた瞬間、ジャキッ!と音がして片脚につき三本の鋭い爪が壁面に食込み麗子の身体をその場で固定した。



「…へぇ、思ってた程キツくないわね。」



そのままの体勢で弓を引いてみたりしながらそう呟く。

確かにいくら足を固定されているとはいえ重力は下に掛かるのだから余程の筋力が無ければ体勢の維持など不可能だ。

更に繊細な技が必要とされる弓など撃てる筈もない。


しかし、アローの能力によりそれが可能になった。



「麗子!降りて来てくれ。説明がまだ途中だぞ。」


「あぁ、そうだったわね。今行くわ。」



軽く壁面を蹴った麗子は早くも慣れた様子で翼をはためかせ静かに着地する。



「それじゃ、続きだ。皇帝鷲の能力として、常時肉体が軽くなる魔法が掛かり続ける。」


「なる程ね、だからあの体勢でもキツくないのか。」


「そういう事。」



身を以て理解した麗子。



「後は…コレね?」



麗子は右耳で揺れる漆黒のピアスを指で弾きながら問いかける。



「あぁ、そのピアスは俺がアローを作る時に追加したものだ。皇帝鷲は元々遠くを見渡せる目を持っているんだが、それに『千里眼』と『透視』を追加した。」


「どうやって使えば…」



そう口にした瞬間、右目にだけ見える密林。

しかもご丁寧に距離、風速、高度まで数値化され中心部にはクロスゲージまで見える。

その距離の数値を見て言葉を失う。

そして何とか言葉を絞り出すようにして浩二に投げ付けた。



「私に100km先を見せて何を狙えって言うのよ!」


「いやいや、多分それが最大値だ。頭で思い浮かべれば微調整が出来る筈だ。」


「…あ、本当だ。…それにしてもコレ…城壁なんて簡単に透視しちゃうのね。」


「だって、敵が壁や家の中に居たら狙撃出来ないだろ?」


「普通は狙撃って目視してするもんなんだけどね…しかも壁や家を貫通する前提だし…」


「大丈夫!麗子なら出来るよ!」


「そんな信頼要らないわよ!」



麗子はそう突っ込むと額を抑え首を左右に振った。


ポンポンポンと麗子の肩に置かれる舞と栞とソフィアの手。

その瞳は哀れみで染まっていた。



「頑張れよー麗子。」


「麗子ちゃん!一緒に頑張ろうね!」


「うっさい!」



麗子は猛の適当な激励といつも通り元気な蓮にそう叫ぶと諦めた様に空を見上げた。



□■□■



「…と言う訳で、この城で魔王会議が開かれるわ。」



食後の紅茶を一口啜った後、ソフィアが皆に向けて口を開いた。



「魔王会議…?」


「何だか…不穏な響きね…」



猛と麗子は早速食い付いてくる。

そりゃ魔王の名が付く会議なのだ、只事ではない。



「まぁ、会議の内容自体は大したものじゃないのよ。来るメンツは普通じゃないけど。」


「まぁ、メンツは魔王だしな。」


「一応龍種の中からも誰かが選抜されて来る筈よ。」


「り、龍種!?」



成り行きを見守っていた一同もこれには驚きを隠せない様だ。

そりゃ、この世界の最強種なのだ。

下手に触れれば何が起きるかわからない。

その規模は軽く災害クラスだろう。



「そんな錚々たる顔ぶれで一体何の話をするんだよ。」



浩二が相変わらず緊張感の無い質問をして来る。

まぁ、浩二はいつもこうだが。



「…はぁ…」



ソフィアは溜息をつくと浩二に向かいゆっくりと口を開いた。



「良く聞きなさいコージ。」


「ん?」


「今回の会議は貴方の為に開くの。」


「「「「「「はぁ!?」」」」」」



一同の声が綺麗にハモった。



□■□■



時は少し遡り…



浩二に作って貰ったマシナリーとの契約を済ませた皆は思い思いに行動を開始した。

訓練所に残ったり、城の書庫へと足を運んだり。

あ、猛が蓮と麗子に呼ばれてる。

…頑張れ猛。


そんな中妙に神妙な顔つきで城の中へと戻って行くソフィアがいた。


ソフィアは足早に自室に戻ると10cm程の水晶球が乗せられた机の椅子を引き腰掛けると脱力した様に机に突っ伏す。



「…はぁ~~っ…」



その溜息は深い。



「お爺様に何て説明しようかしら…」



ソフィアは目の前の水晶球を見詰めて片肘をつき額に手を当てて唸る。


この水晶球は魔王各陣営と連絡を取り合う為に作られた言わば通信機だ。

今ソフィアは自らの陣営…ドワーフ領に通信をする為にここに来た。

自分の代わりに自領を運営してくれている祖父へと。


ソフィアの祖父は現在魔王会議において龍種の次…つまりナンバー2の位置にいる。

それだけ影響力があるのだ。

伊達に最上位種を名乗ってはいない。

その祖父にこれから浩二の事を話すのだ。



「…絶対「会わせろ」って言うわよね。」



ソフィアは不安で仕方なかった。

時を見てこちらから出向くつもりだったのだが、浩二の成長が著しく気付いたら最上位種になってしまっていた。


別に浩二を祖父に紹介する事自体は別段不味い事では無いのだが…



「お爺様…絶対コージと闘いたがるわ…」



ソフィアの悩みの種はそこだった。


ソフィアの祖父。

エルダードワーフである彼は言わば戦い好きなのだ。

簡単に言えば「脳筋」


現在この世界に彼を超える戦闘力のある者は龍種のみ。

その龍種は大山脈の天辺で引き篭もり中。

つまり、相手がいないのだ。


その彼が浩二の存在を知ったら…

浩二が戦いを挑まれたら…



「コージの事だから…絶対断らないわよね…」



再び机に突っ伏して深い溜息をつくソフィア。


彼女が心の準備を済ませるにはまだ時間がかかりそうだ。



読んでいただきありがとうございます。

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