第四十五話 一時的探索パーティー
・・・やばい。
あのあと、迷宮に入ることが出来た俺達だったが、やばいぐらい暑い。
しかもすぐそこを溶岩が流れている。あれに落ちたらどうなるのだろうか。
「・・・あ」
「どうした────」
アカリが上を見つめながら何か言ったと思ったら、上から溶岩垂れてきた。
溶岩は俺の頭に触れるとすごい煙を出し始める。
「う、うわぁっ!ジーク、大丈夫か!?」
「余裕っす」
しかし溶岩は俺を焼くことは出来なかった。
どうやら髪の毛とかも耐久とかいろいろ上昇しているようだ。
服はちょっと焼けたけどな!
「・・・熱くないの?」
「うん、全然」
とりあえず頭に乗った溶岩を下に落とす。最近忘れがちだったが、俺の固有スキルはまだ発動中らしい。
「さて、この迷宮は上に登るタイプなのか、下に降りるタイプなのか・・・」
クラウンが周囲を見渡しながらそう言った。確かに、ここは山だけど下に降りるタイプって可能性もある。
「とりあえず進んでみるとしようぜ」
ガルムが歩き出す。それにアカリもついて行った。
「なんか、親子みたいだな」
「はは、確かに」
後ろから前の二人を見ながら俺とクラウンはそんなことを話す。
「ガルムはアカリのことを大切にしてるからね。手を出したら何されるか分かんないよ?」
「いや、出すつもりはないんだけど」
「でも可愛いとは思ってるでしょ?」
「おう、美少女だ」
確かにアカリはかなり可愛い部類だ。これまで何人の男がガルムにやられてきたことやら・・・。
ちなみに聞いた話だとアカリは15歳、ガルムが34歳、クラウンが17歳だという。
さっきガルムから敬語じゃなくていいと言われたので、今は全員に対して普通の喋り方だ。
「・・・何話してるの?」
「いや、なんでも─────」
前から話しかけてきたアカリに返事をしようとした時、突然何かの気配を感じた。
それは、すぐそこの溶岩から──────
「っ、危ない!!」
俺は咄嗟に前に跳び、ガルムとアカリの二人を掴んでその場から離れた。
次の瞬間、横を流れていた熔岩から勢いよく何かが飛び出し、二人がいた場所に降り立った。
「なっ・・・!?」
「・・・魔物?」
とりあえず二人を立たせ、俺は現れた何かを見据える。
ーーーーーーーーーーーーー
◆◆WARNING WARNING◆◆
――――フロアボス――――
ーーーーーーーーーーーーー
〜フレイバーン〜
レベル67
生命:3840/3840
ーーーーーーーーーーーーー
「フロアボス・・・!?」
現れた魔物を見てクラウンが驚いた。
そのとおり、このデカブツはフロアボスだ。
「おいおい、まだ一層だぞ!?」
ガルムがそう言いながら武器を構える。どうやら剣士らしい。
「・・・強いね」
アカリはどうやら魔法を使うようだ。
「レベルは67、生命は3840だとさ」
「・・・なんでわかるの?」
「固有スキル」
「・・・すごい」
まさかいきなりこんなレベルの敵と遭遇するとは。レヴィが造り出した水神の遺跡より難易度高そうだな。
と、そこで俺はあることを思い出した。
そういえばまだこの三人のステータス確認出来てないな。
ということで俺はまずガルムからガン見してステータス確認を行った。
ーーーーーーーーーーーーー
~ガルム・リット~
★ステータス★
レベル:37
生命:780
体力:1280
筋力:750
耐久:680
魔力:310
魔攻:104
魔防:296
器用:249
敏捷:930
精神:290
幸運:98
★固有スキル★
無し
★装備★
アイアンソード
革の鎧
革の篭手
冷靴
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
~アカリ・エチュード~
★ステータス★
レベル:29
生命:240
体力:79
筋力:67
耐久:68
魔力:340
魔攻:240
魔防:180
器用:180
敏捷:167
精神:210
幸運:40
★固有スキル★
・魔法強化(中)
魔法の威力を強化
★装備★
水晶杖
熱遮のローブ
冷靴
ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー
~クラウン・ラフスキー~
★ステータス★
レベル:33
生命:715
体力:1480
筋力:643
耐久:549
魔力:320
魔攻:135
魔防:247
器用:267
敏捷:1000
精神:150
幸運:46
★固有スキル★
無し
★装備★
アイアンランス
マッドゴブリンの革鎧
冷靴
ーーーーーーーーーーーーー
普通・・・なんだろうか。
強さはシルフィと同じぐらいか。
てか、魔導士と戦士とかじゃステータスが結構違うんだなぁ。
「おい、くるぞ!!」
と、そんなガルムの声が聞こえた。
現れたフロアボスは、フレイバーンという名のドラゴン。
フレイバーンは勢いよく飛び上がると、大きく息を吸い込んだ。
「ブレスだッ!!」
クラウンが叫ぶ。次の瞬間、フレイバーンの口から広範囲に向けて炎が吐き出された。
しかし、三人とも間一髪ブレスを躱したようだ。
「・・・ふむ」
さすがに今俺以外がこのレベルを相手にするのは無理だな。
ということで俺はバッサバッサ飛んでいるフレイバーンに向かって跳躍した。
「グアアッ!?」
「はいはい、とりあえず下に降りましょうね」
そして俺はフレイバーンの頭を掴み、地面に向かって思いっきり投げた。
「グエェッ!!」
そのままフレイバーンは地面に衝突し、瀕死状態に。
「んなっ!?」
「一撃で・・・」
「・・・すごーい」
ピクピクするフレイバーンを見て、三人はポカーンとしている。
「よっと。どうぞ、トドメさしたらレベル上がるでしょ?」
「いいのか?」
「もちろん」
「・・・それじゃ、遠慮なく」
アカリが魔法を唱える。すると、フレイバーンの周りに転がっていた岩がふわりと浮かび上がる。
「・・・いけ」
そして、彼女がそう呟くと同時に岩はフレイバーンに向けて一斉に降り注ぐ。
「グギャアアッ!?」
それをくらってフレイバーンは絶命した。
相当弱っていたようだ。
「おおー、なんて魔法なんだ?」
「・・・『見えざる念力の手』。魔力で岩を浮かせたの」
「すごいな」
何属性の魔法なのかは知らないけど、中々強いな。
「・・・お、レベルアップ」
「どんだけ上がった?」
「・・・14」
「ずるいぞ!」
クラウンがそう言うのも無理はない。俺は420レベもあるから全然レベル上がらないけど、14も一気に上昇するのはすごいことなのだ。てか、この迷宮のフロアボス、経験値めっちゃ貰えるやん。
「・・・てことは」
「・・・まさか」
ガルムとクラウンが恐る恐るアカリを見る。
「・・・私が一番」
「「うわあああああ!!!!!」」
ドヤ顔でピースサインをつくるアカリ。
ああ、そうか。今のレベルアップで二人ともアカリにレベル抜かれたのか。
「ま、まあいいさ。次のフロアボスは僕が倒す!」
「いいや、俺だ!」
「・・・次も私」
などと言い合い始めた三人を見て、つい笑ってしまった。
仲のいいパーティーに出会えたな。




