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第五章 焼野の月 八幕

 べん。


 三味線を叩き、朝霧はそっと膳へ手を伸ばす。


 椿が慌てて朝霧の杯へぎこちなく酌をする。


 ついでに姫の杯にも酒を注ごうと眼を向けるが、こちらは減っていなかった。


 姫の目が腫れている。


 朝霧は杯を口元に運び、くいと煽る。


 そっと膳へと杯を戻すと、再び三味線を持ち直す。


 べん、べん、と鳴らして糸巻きを調節した。


 手を振る椿。

「いや、いいから。」


 姫も頷く。

「頼む、続きを早う。」


 朝霧は小さく微笑み、煙管を手に取る。


 椿が膝を立てた。

「おいおい。」


 舌をぺろりと見せて煙管を置く。


 朝霧は再び撥を振り三味線を叩き始めた。


 べん、べん、べん……と。




 べん、べん、べん……。

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