勉強と出会い
私は勉強したいと思った。早く学校に通いたい。
きっと知識がなければ喜翔への有効な復讐が思い浮かばない。
私は携帯で真っ先に親友のニアに連絡をした。
『ニア、お願い。私に勉強を教えて』
ニアは自分の復習になるからと快諾してくれた。
小学校で勉強していたのは国語、算数、理科、社会。
それが中学生になると算数は数学になり英語が加わる。
一番苦労したのは英語だった。
知識レベルが小学六年生で止まっている私は今まで英語に触れたことがなくて、
どう勉強していいのか分からなかった。単語を覚える他にも文法も覚えなきゃいけなくて、
それがどうにも思い通りにいかなかった。
それでもニアは根気強く何度も何度も説明してくれた。
問題集は端が擦り切れて膨れ上がるくらい繰り返し解いた。
全ては喜翔への復讐心が原動力となっていた。
季節が変わって冬が来る頃。寒くなったリビングに暖かい暖房の風が吹く。
久しぶりにお父さんが帰ってきていて、両親と私の三人で焼肉に行った。
「しの、体調はどうだ」
「極めて良好よ。もう走れるし勉強もできるわ」
「そうか」
お父さんは満足そうに微笑んだ。
「私、法律を勉強したいの」
喜翔を法で裁きたい。それが私なりの復讐だった。
一つの季節の間ずっと復讐について考えながら勉強してきた私なりの答えだった。
お父さんもお母さんも一瞬びっくりしたような顔をして、それから嬉しそうな顔をしていた。
きっと何よりも未来のある話をしたのが嬉しかったんだと思う。
私が生きようとしているその姿を見て安心したんだと思う。
例えそれが復讐心からくるものだとしても、そんなこと両親は知る由もない。
「しのならできるわ」
「ああ、俺の娘なんだから当然だ。全面的に応援するよ、しの」
両親は背中を押してくれた。
その次の週から私は塾に通うことになった。
お父さんが見つけてきたその塾は私が中学生になったら通おうと思っていた塾で、
マンツーマンで勉強を見てくれるところだった。そこに加えて家庭教師もつけてくれた。
それで週に二回やってくることになったのが如月先生だった。
如月先生は有名な大学の出身で、お父さんの仕事仲間の息子さんだった。
「こんにちは、初めまして。如月京です」
初めて家に来た時、玄関で如月先生は挨拶してくれた。
くるくるに巻かれた黒髪の、眼鏡をかけている高身長なお兄さんという印象だった。
サラサラの金髪の喜翔とは真逆のタイプだった。
如月先生はまずは小学校の頃の勉強から、全部の教科を見てくれた。
小学校の内容の勉強を一通り終えると、中学校の勉強も始めた。
私はニアに見てもらっていたところ以外の、まだ理解できていないところを伝えると、
根気強く基礎から教えてくれた。説明がすごくわかりやすくて、
声の響きも心にそのままストンと落ちるようで、聞いていて心地よかった。




