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工場地帯 決着

 大喜びの観客・運営とは反対に、参加者の心境は最悪であった。

特別イベントと称して突如戦場に投下された敵機10機は、空からこちらの場所を見ていたのか、俺たちのいる場所に正確に砲弾を落としてきた。被害は小さくなく、しかし一発なら致命的なほどではない。砲撃してきた方向は発砲音でわかった、反撃に狙ってやろうとスコープ画像に切り替えると……まっすぐにこちらへ向かってくる敵編隊、8機。いざ撃ち抜かんと照準を合わせた瞬間、40mm砲弾が飛び込んでくるのが見えてしまった。撃たれた、と認識したときには、砲弾が装甲を貫通していた。


「くそが! 一人やられた!


二発目が着弾。舞い上がる土煙と白煙。


「煙幕だ! 敵が突っ込んでくるぞ、プランB! 砂砲スナイパーキャノンは捨てて後で拾え!」


叫んだあとに焼夷弾が空中で炸裂し、炎を撒き散らした。散開していたためダメージこそ軽微で済んだが、これで光学センサーと赤外線の、主たる二つの照準手段を封じられ、有効な攻撃ができなくなっている。しかも敵チームはまっすぐ突っ込んでくるし、砲弾が5秒に一発のペースで降ってくるせいで集まっての防御態勢をとれないでいる。おまけに相手からの機関砲掃射も始まった。

 このままでは分断された状態での乱戦となる。機関砲の射程にまで入られているのなら、足を止めての狙撃はハチの巣にして殺してくださいアピールと同じだ。動きながらの砂砲は反動を吸収しきれず弾が明後日の方向に飛んでいくから命中が期待できない荷物でしかない。捨てても後で拾えるんだし、今は捨てておく。


「反撃しろ!」

「Yes Sir!」


 チームメイトの力強い返事を聞きながら、機関砲を撃ち返す。煙幕の中でもハイレートで撃ちだされる曳光弾の軌跡はよく見える、飛んでくる方向に敵がいるのだから、その方向へとにかく弾をばらまけばいくらかは当たるはずだ。下手な鉄砲もなんとやらと言うしな!

 そうやって敵の方へと機銃を撃ち返していたら、至近距離に砲弾が落ちてきて、爆風が煙幕を散らす……急激に開ける視界。煤まみれの敵機が、ブレードを振りかぶって近距離に。一発も撃たずに近づかれたせいで気付かなかった。

―あいつら味方の被害も気にせず砲撃を―

 驚きながらも、とっさにレーザーブレードで振り下ろされる刃を受け止めて防御。溶断された高周波ブレードの先端が装甲に弾かれて、敵の攻撃は不発に終わる。次の攻撃が始まる前に、防御に使ったレーザーブレードをそのまま敵に突き刺して撃破。だがあと最低でも9機残っている、ここまで近づかれているなら格闘戦も覚悟するべきだ。モタモタしていれば工場に引きこもってるチームが出てくる。


「後退だ! 後退!」

「クソが! ガトリングが伏せてやがった!」


 こちらが曳光弾の火線を追って攻撃したように、相手も同じく攻撃してきた。ただし相手はガトリングタンク、こちらが放つ銃弾が何倍にもなって返ってきた。バーナーめいて輝く2本のマズルフラッシュ、加熱される2つの銃身が巨大な熱反応を放ち、我ここにありと存在を示す。反撃していた仲間が鉄の暴風によりいともたやすくぼろ雑巾にされ、撃墜マークが点灯する。


「くそ、クソクソ! こんなはずじゃ……!」


 悪態をつき終わるころにはスクラップがまた一機増えた。もちろん仲間の。敵が何機くたばったかはわからないが、何機やられたにせよ今の俺たちよりは多いだろう。すでに勝敗は決した……せめて、煙幕さえなければ。せめて、敵の追加が1チーム分なら……女々しい考えが頭をよぎるが、ただで殺されてたまるか、ととにかく敵のいそうな方向へ撃ちまくる。

 ……敗因は色々あった。上空を飛んでいくヘリを見過ごしたこと。障害物のない開けた場所に陣取ってしまったこと。煙幕を撃ち込まれる前に相手を撃てなかったこと。反撃せず一目散に撤退指示を出さなかったこと……そうすれば無傷は難しいにしろ生き残れた芽もあっただろう。

 だが、もうどうしようもない。何をするにしても遅すぎる。勝ち目はない、逃げ場はない、仲間もいない。できることは豆鉄砲で悪あがきか、敵に突っ込んでレーザーブレードで切って回る程度。

 じゃあ、せめて最後まで悪あがきを……と思ったら。いきなり銃声が途絶えた。

 まさか降伏勧告を出すわけでもあるまい……煙幕の向こうへ銃口を向けたまま後退を続ける。

 時間の経過につれ薄くなる煙幕。だんだんと戦場の様子がつかめてきた。


「なんだよこれ」


 煙幕が晴れたら、敵味方入り乱れるスクラップが転がっていた。銃弾に穴をあけられたものもあれば、上下真っ二つに切断されたスクラップも、小さな穴が胸部に空いているのもある。焼夷弾がまき散らした可燃物がいまだに地面で燃えていて、煙幕の薄曇りの中、残り火が鉄の骸を照らす。まさに地獄絵図。ツキジめいた光景に驚愕し、言葉を失い、放心する。


「……戦場で呑気に棒立ちとは。ずいぶん余裕じゃないか」


 彼が試合最後に聞いたのは、敵からの嘲るような声。背後に反応があり、振り向いたら、胴体を二本のブレードで串刺しにされていた。



 工場地帯で最後に生き残ったのは、侍たち。乱戦を察知して突撃し、煙幕の中を後ろから刺し殺して切り殺して回った。もちろん何人かは犠牲になったが、勝てばいいのだとリーダーは言う。その通りだ。


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