零戦改造計画
それでは、これからこの機体の修復及び改造計画の会議をはじめます。
司令室の長テーブルに京子、はるみ、美希、幸雄の四人が座り、対面に俺一人が座っている。
結局、俺は疑問を持ちながらも流されるままに話を聞いている形だ。
ちなみに京子は、水原京子という名前らしい。この部隊のチーフとのことだった。
まず最初に幸雄が発言する。
「思ったよりも機体の状態は良いな。ま、どちらにせよ半分は作り直すから、どうって事もないんだがな。とりあえず、計画としては、機体の補強、エンジンの高出力化、無線の最新化、レーダー取り付け、あと武装だが、少しオーバーテクノロジーだが高波長域レーザーをメインにレイルガン装備、取り付けを行う予定だ。」
「なんか凄い事になりそうね。」
はるみがつぶやいた。ぽっちゃり体型のはるみは愛嬌のある顔立ちをしている。
「良いのよ、今回の任務は失敗する訳に行かないんだからね。」
美希は、ふんすと、拳を握りながら呟いた。スレンダーな体系の美希は少し、目元がアガあり気味なので若干きつく感じるが、口から出る声は、アニメ系の可愛らしい声だ。
「とりあえずこちらを見てちょうだい、」
京子がみんなの視線をモニターへと促す。
モニターには零式艦上戦闘機の完全なる設計図と、4方向の俯瞰図が映し出されている。マウスのポインターが近ずくとその部分が拡大投影されるので非常に見やすい。
「それではこの方向で機体を改造します。いいですね?」
「異議なし!」
幸雄。
「異議ないわ!」
はるみ。
「問題ないわね!」
美希。
3人が同意する。
「慎一はどう?」
京子が聞いてきた。
「どうするもこうするも、俺は未だについていけてないんだがな!」
憮然とした顔で俺がいうと、京子はニヤリとした。
「仕方がないわね。なんとか慣れてちょうだい!」
きつめの口調で言う京子の言葉に俺は、「うっ、、」と次の言葉を飲み込んでしまった。
確かにこの状態で何を言っても事態は変わらないだろう、俺はもうこの時代で生きていくしかないようだからな。それにしてもこの三上の体は一体なんなんだ。
もう傷は完全にふさがり、傷跡さえなくなっていた。
「なあ、ちょっと聞いていいか?」
「何かしら?」
京子が聞き返してきた。
「俺の、と言うか、三上の体なんだが、一体どうなってるんだ?確か12.7mmの弾丸が右肩を貫通してたよな。それがいつの間にかすっかり塞がっちまってるんだが、、、」
「ああ、まだ説明してなかったわね、それはあなた、いいえ、あなたと三上慎一の複合作用なのよ、、、、、 つまりなんて言えばいいのかしら、三上の体にあなたの精神が移ったことにより、あなたはこの世界では不死の存在になったの。」
「は・・・・・・・・・・・・・?」
イマイチまた理解ができない、ラノベの世界ならわからなくもないが、ここは異世界なんかじゃないよな、確かにタイムスリップ事態異常な出来事だが、ここは単に今から80年前の世界で、魔法もスキルの概念もない、科学と物理の世界のはずだ。人間が不死になるなんて事があるのか?
「イマイチ理解ができてないようだけど、私たちがあなたを選んだ理由がそれなのよ」
京子は俺の目をじっと見ながらそう言った。
「今回の任務は、第二次世界大戦に干渉し、歴史を大きく変える、一体どう言う風に変えるのかは今は言えないけど、、この計画を成功させるには、何があっても生還して任務を達成できる人間が必要だったわ。今回の任務で4回目、もう失敗は出来ない、今まで3人の強靭な肉体の持ち主を選び出し、任務に当たってもらったけど、あと少しのところで彼らは命を落としてしまった。
そして、出た結論が死なない人間がいればいい、と言う結論に達したの。
それから私たちは地球中の人類の中から、不死、またはそれに近い人間を探していた、、そしてやっと見つけた、あなたと、三上慎一を、、」
一つ大きく息を吐くと京子はまた語り出した。
「三上慎一の遺伝子にあなたの精神体遺伝子が重なった時、三上慎一の体は不死となる。そう私たちのコンピューターは解析した。そして、三上慎一が死にゆく瞬間あなたの精神体を時空を飛ばして送ったの、究極の実験だったけど、本当に成功してしまった。最初は私たちも半信半疑だったけど、あなたは、三上慎一は生き返った。」
「いやいや、本当にすげえよなあ、あれだけの傷を受けて生き返っちまうどころか、今じゃ傷跡すら残ってないってよ、全く空いた口が塞がらなかったぜ、」
幸雄が呆れたような顔で俺にそう言った。
「どうやら実験は大成功というわけね。まだあなたの体を正確に見たわけではないけど今の所あなたは私たちの期待以上の成果を挙げているのよ。」
京子はそういうとまたモニターへと顔を向けた。
第二次世界大戦の真っ只中、どうやら彼らは何かとんでもないことをしようとしているみたいだ。そして俺はなぜか不死の体を手に入れた。
この先どうなるのか、もうなったようになれ、なかば開き直って俺もモニターを見る。
モニターには、今度は東京のような、そうでは無いような、何か変わった感じの都市が映し出された。
「これが私たちが住んでいる世界、2053年の東京よ。」
京子は、少し寂しそうに小さめの声で言った。
「そして、この都市はもう、無いの!」
「えっ?」