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その者、強欲の成れの果てにつき

「明らかに、誘ってるのが見え見えだ。闘気が漏れてんぞ・・・。近寄った所を、大剣でぐさりか?油断した瞬間、鎖で拘束するか?」


「・・・・・・ふ、ふっはは・・・騙し討ちは効かんか。」



亡霊は重力などないように、平手で地面を叩く、それだけの動作でスクリと立ち上がる。



「お前の強さはよく分かった。正直、あの情報体の事などどうでもいいと思えるほど、お前の持つその戦闘技能情報は実に興味深い。素手で戦う者は過去にも居たが、ここまで追い込まれたのはお前が初めてだよ。」



亡霊は頭を両手で抱えて、何がおかしいのか、くつくつと笑い始める。

やっぱり、膝で顔面、蹴り上げとけばよかった・・・。



「・・・・・・あぁ、初めてだ。こんなに、我を追い込んだ人間は初めてだ!恐れを抱かせる相手は初めて!屈辱を受けた相手は初めて!こんなにも、相手を憎いと思ったことは初めて!そして何より、その相手を欲しいと思ったことは初めて!欲しい!欲しい!欲しい!欲しい!お前が欲しいぃぃぃぃーー・・・!!」


「え・・・・・・あ、いや。男のハーレム加入はノーセンキューなので。とっとくたばりくださいませ、クソ野郎。」



俺は、猛烈な勧誘活動に俺は半ば引き気味で、今にも駆け出して来そうな相手を手で制して断りを入れる。



「男?我が?誰が、そんなこと言った・・・?我は我ぞ?欲しいものを手にして、様々な人種、能力、地位、名誉、金、女、男、大人、子供、老人、赤子、全てを取り込んできた・・・。我は全にして個。665の魂の複合体なのだァァァァ゛・・・!!」


「っ!?」



頭を抱えて天を仰いた亡霊は、その兜の隙間という隙間からドス黒いヘドロを吹き出す!!


「「ううおぉぉおぉぉおお・・・!!」」


「うお!?おぞましい・・・。」



一つ二つとその声は増えていき、まるで、大勢の人間たちが阿鼻叫喚する地獄の底を覗き見たかように、苦しみに悶える叫び声が辺りに響き渡る。


なるほど、複合体とは、そういうことか・・・。


確かにそれでは、“男”と呼ぶにははばかられる。

そして、当然、“女性”ですらない。


目の前のこれは・・・もう・・・人間とは呼べないものだった・・・。



【強欲】故に、コイツはあらゆる物を欲し、それを手に入れ抱えて、更に長い年月を過ごすうちに、こうも歪んだ一個の個体になったのか・・・。


黒いヘドロはやがて一つの塊になると、徐々にその姿を表していく。


その姿はまさに・・・【強欲の化身】と言っても相応しい姿だろう。


ボタボタと、黒いヘドロを地に垂らしながら、先程より一回り大きな【蜘蛛】となって、俺を見下ろす。



「おぞましいか?恐ろしいか?おどろおどろしいか?ならば、(かしず)け。(ひざまず)け。我を敬い、贄となれ。」



巨大な蜘蛛は、前脚を地面に打ち付け、タイルの床を打ち砕く。


その行為はまるで、自身の力が鎧の時よりも何倍にも跳ね上がったのだと、力を鼓舞しているようにも見えた。


しかし、男、栄咲遊助に二言はない。



「傅く?跪く?敬い、贄となる?冗談じゃないね!もう一度いうぞ。お前は俺がぶっ飛ばす。跡形もなくDELETEだあぁぁー・・・!」


「よく言った人間・・・。それでこそ、我が欲する史上最大の愚か者だ・・・。では、遠慮なく・・・奪い尽くしてやろう!!貴様の全てを!!」



振り下ろされる蜘蛛の爪はあまりに鋭く、地面に刺されば、簡単に穴が空くほどだ。


直撃すれば、並の人間など簡単に貫き、切り裂くこともできるだろう・・・。



「(身体強化Lv3とはいえ、現実世界の肉体は、どこまで耐えられるやら・・・。こうしてる間も負担が相当かかっているはずだ。時間もない。こうなれば、一気に片すまで!)」



俺は興奮で上がりそうになる呼吸を整え、精神を統一する。


隙を突く、ただ渾身の一撃!

これにかけるしかない・・・。


武器もない。あるのはこの身のみ。

だが・・・俺にあって、奴にはない、ものがある・・・。


この胸中の想い。彼女たちがくれた想い。


そうだ・・・そうだった。


俺は彼女たちから“もらったんだ”・・・。


たくさんの想いをもらった・・・。


守りたい・・・彼女たちの記憶も、彼女のくれた思いも、彼女たちを!!


それこそ、俺の強み。たくさん持ってるのに、常に満たされない、目の前の寂しい蜘蛛とは違う点。


寂しい・・・蜘蛛・・・?


ふと、俺は思う・・・。



本当に倒すべきなのか?

DELETEして、終わりでいいのか?


相手が欲しているのに、その手を振り払い、蹴散らすことが本当に正義なのか?と。


ならば、どうする。栄咲遊助。



『ユウスケ。』

『ユウくん。』

『ユウ。』

『サカエ。』

『サカエさん。』


俺を認めてくれた、たくさんの女の子たちの声が聞こえる。

彼女たちの優しい声、怒った声、楽しそうな声、悲しそうな声が頭に響く・・・。


そして最後に ー


『ユーちゃん。』


ー 観月の声が聞こえた気がした・・・。


そうだ・・・。


何を悩むことがある・・・。

ずっと、ずっと・・・大切な彼女たちが教えてくれたじゃないか。


その答えを!!



「奪うんじゃない・・・。そうだ。奪えば、お前と一緒だ。だから、“与える”。慈愛を持って、お前を救う。」


「な・・・なんだ?その恐ろしい気配は・・・なんの魔法だ!!?」


ートクン・・・!ー


目を開け、蜘蛛を視る(× エッチ!× )


▷条件を達成しました。

《 必艶技 》が発動します。


リライアと同じ声が天から響く。

リライアは後ろで倒れている。

ということは、あのリライアはやはり本体ではなく、端末。

本体は別にいるってことか。

俺は少し安心して、小さくほくそ笑む。


そんな俺の様子など、気付かないのか、蜘蛛は俺を見て、ただただ、驚愕していた。



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