処刑台で草マヨを食う
「——被告人、メリィナ・シロノワーレ・コマンタレブー! 貴様の罪は万死に値する!」
(いきなり絶体絶命~)
現在、私は処刑台の上。
目の前で王太子殿下が顔真っ赤にして叫んでる。
周囲の群衆からは「殺せ」だの「悪女め」だの、罵声飛びまくり。
腐った野菜とか石ころも飛んできてる。
ドレスも顔もボロボロ。痛いし、汚い。
でも、今考えてるのはぜんっぜん別のことなんだよね。
(……カロリーが足りねぇ)
私の名前は、メリィナ・シロノワーレ・コマンタレブー。
略してメシ子。
ふざけた名前すぎる。でも、さっきまで公爵令嬢で、王太子の婚約者でした。よくなれたな。
どうやら私は、聖女様イジめたり、国庫横領したりした「稀代の悪女」らしい。
身に覚え? ない。
でも、弁明する気力はない。
三日前から牢屋入れられて、水一滴すら飲んでないんだからさ。
とにかくカロリーが欲しい。カロリーは正義。
「そのふてぶてしい態度、もはや更生の余地なし! 直ちに処刑を執行する!」
王太子の合図で、マッチョな処刑人が出てきた。クソでかいギロチン斧持ってる。
兵士たちに、断頭台に押さえつけられる。
(あーあ。死ぬんだな、私)
(最後にせめて、なんか味の濃いもん食べたかったな……)
(そう、ここはやっぱりマヨネーズを……)
前世の記憶のせいで、無性に「マヨネーズ」が恋しい。
頭の中はあのコクで埋め尽くされてる。
来世は赤いフタに生まれかわろう……
あ、黄色(業務用)のほうがいいかな?
「死ねェッ! この悪女ッ!」
処刑人がギロチンを振り下ろした。
——ズドンッ
凄い衝撃が首に来た。
「きゃああああああッ!!」
観衆が悲鳴上げてる。
(こりゃ完全に死んだわ。人生あざした)
……にしては、首から下の感覚あるし、視界も良好なんだけど。
ゆっくり瞬きして、自分の体見下ろしてみた。
「……あれ?」
首、繋がってた。
五体満足。痛みもなし。
──バーンッ!
と思ったその瞬間、ドレスが消し飛んだ。
「なんで?」
キャミソールとかぼちゃパンツ姿になっちゃった。
これ、正式にはシュミーズとドロワーズっていうんだっけ? 私の感覚だとパジャマだけど、異世界基準だと下着姿。
純正令嬢だったら悶死していたよね。
まがい物でよかった~。
そんで、足元には、粉々に砕け散ったギロチンの刃が転がってた。
「な、なんだ……!? 何が起きた!?」
「刃が……砕けた……!?」
王太子が腰抜かしてる。
処刑人も斧取り落として、震える指でこっち指さしてるし。
でも、そんな彼らは無視。
だって、目の前に変な半透明の文字が浮かんでるんだもん。
『害意ダメージ(物理)を無効化しました』
『通販スキル《ハタゾン》が解放されました』
『初回ボーナスとして500ポイントを取得しました』
(……んん?)
通販?
ハタゾン?
理解するまえに、文字の羅列が流れてく。
『利用規約:当スキルは使用者の……』
『免責事項:配送中の事故については……』
(うん、規約大事大事。読んだ読んだ)
脳内で「同意」ボタン連打!
すると、商品検索ウィンドウっぽいのが出現。
私は迷わず、念じた。
(マヨネーズ。業務用。一番でかくて安いやつ)
『検索結果:1件』
『業務用マヨネーズ(1kg) 価格:500ポイント 購入しますか?(残高:500ポイント)』
(即決!)
『購入を確定しました。配送を開始します』
ポーン、って気の抜けた電子音が鳴った直後。
虚空に亀裂が走って、そこから茶色い物体が落ちてきた。
——ドサッ。
処刑台の上に段ボール箱が着地。
歪んだ笑顔が書かれてる。
広場がシーンと静まり返ってる。
処刑失敗の衝撃。
爆裂下着姿の令嬢。
突如振ってきた謎の箱。
うん。情報量が多すぎ。そりゃ誰も動けないわ。
(……今だッ!)
ともかく箱だ、箱!
バリバリバリッ!!
ガムテープ剥がす音が響く。
王太子がビクッとする。
「き、貴様……何を……」
「テッテレー」
箱の中身を取り出す。
黄色いキャップのついた見慣れたチューブ!
で、カラになった段ボールは素早く畳んで、処刑台の隅に置いた。
資源ごみの分別、大事だからね。
次に私は、処刑台の隙間から生えてた雑草をむしり取った。
(うん、食えるやつ食えるやつ)
マヨネーズの蓋開けて、銀紙の封剥がして。
チューブ握りしめて、雑草に白濁した液体をたっぷりと絞り出す。
「なんだそれは! 何かの儀式か!」
王太子が叫んでるけど、今はそれどころじゃない。
むわっ、と漂う酸味と油の匂い。
これだよ、これ。
涎が止まらないよね。
「くぅーっ!」
「な、何を叫んでいる! なんだこのニオイは! おい!」
1秒でも早くかじりつきたい!
でも。
「いただきます」
正座して、しっかり手を合わせる。
育ちが良いからね!
私は雑草を口に放り込んだ。
青臭い草の味。そして信じられないエグみ。
まあ、雑草だね。
でも、それを全て塗りつぶすような、マヨネーズの圧倒的なコクと酸味が口いっぱいに広がる。
「……んんっ、最高〜!」
味覚じゃない、脳髄を痺れさせる最高さ。
カロリーと脂質が、乾いた体に染み渡るわー。
「な、なんだあれ……」
「処刑台で……草食ってる……?」
「しかも下着姿で……」
なんかみんな戦慄してるけど、知ったことじゃない。
私は一心不乱に雑草マヨネーズを貪り続けた。
『周囲からの恐怖を検知しました』
『100ポイントを取得しました』
システムログが流れてく。
こうして私の異世界破綻飯生活が始まった。
***
【今日の破綻飯】
やあみんな! メシ子だよ!
今日は私のとっておきの破綻飯を紹介するよ!
ちなみに破綻飯っていうのは、生活破綻者でもおいしく(?)頂ける最高の食べ物のことなんだ!
日常が終わってても、お腹は空くからね!
今日のメニューはこれ!
テッテレー!
★No.0001『その辺の草にマヨネーズかけたやつ』
材料: その辺の草、マヨネーズ
調理時間: 3秒
破綻度: ★★✩✩✩(毒に気をつけよう)
食べられる雑草って意外と生えてるんだよね!
なるべく地面から遠い部分をちぎるのがコツかな!
でもマヨネーズがだいたいコーティングしてくれるから、気にしない気にしない!
マヨネーズってすごいよね!
生活が破綻してても食卓を整えてくれる! 神の調味料!
それじゃあ、次のエピソードで会おうね!
面白かったら「お気に入り登録」と「高評価(★★★★★)」よろしくね!
ハタンキュ~(挨拶)




