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「いらっちゃいませ~」

「あっ! アウレリア様だぁ」

「院長先生~!」

 入口付近に居た子供たちの中から、比較的年長さんが急いで入口横の院長室へ駆け込んだ。

「あう?」

「ん~」

 この前来た時にはいなかった男女の双子、あるいは年子がぼんやりした顔こちらを見ている。

 二人とも綺麗な顔をしていて、父親か母親かは知らないけれど、遺伝子が相当強いのだろう。

 二人は性別こそ違えど、まったく瓜二つだ。 

 この世界で双子を見たことはないけれど、これは昔の日本のように双子を忌諱しているのか、ただ単に確率のせいないのかはわからないけどれど、ちょっと目がいってしまう。


 小さな子たちの視線は、私が両手で抱えている箱に釘付けだ。

「アウレリア様、ようこそいらっしゃいました」

 戸口から院長先生が顔をだし、にっこりとほほ笑んだ。


「あの、これ、子供たちに」

 そう言ってホールケーキの入った箱を院長に渡す。

 箱の動きに合わせて子供たちの顔が動く。

 頬っぺたを赤くして、目がキラキラだ。

「まぁまぁ、いつもありがとうございます」

 そう言って箱を受け取った院長は、先ほどの年長の子に手渡した。

 その子は小さな子たちにおしくらまんじゅうされるかのように囲まれ、奥にある調理場へ向かっていった。


「では、こちらへどうぞ」

 院長にそう誘われて中に入ると、前よりは見場がよくなった院長室。

 ソファにきれいな布が掛けてあるのだが、その下は今までと同じボロボロのソファだと思う。

 ゆっくり座ると、今度は扉がノックされ、別の年長の子がお茶を運んできてくれた。


「どうぞ」

 そう言われて口を付けたお茶は、以前よりも味が濃く淹れてあり、ちゃんとお茶の味がした。

 院長先生は、にこにこしながらも、こちらの出方を待っている。

「先生、料理大会では、ホットドッグ屋の名前を使わせて頂いて、ありがとうございました」

「いえいえ。実はあれから大会優勝者を下した店だからと、お客が増えているようで、ウチも助かっているんですよ」

 

 優勝できなかったので、その報告とお詫びに来たのだが、院長の方が気を利かせてくれている様子。

「いえ、優勝できずに申し訳ございません」

「いえいえ。本当にお客様が増えて、ありがたいんですよ。ただ……」

「ただ?」

 思わず怪訝な顔をしてしまったのだろう、院長はケタケタと笑いながら、顔の横で手を振った。

「あの大会で作っていた料理を出して欲しいという要望が多くて……」

「まぁ!」

「大会の中で、屋台戦があったので、あの料理をと言うお客様が結構な数いらっしゃるのですよ。でも、子供たちにはあの料理は作れませんから……」


 優勝できず迷惑だけを掛けてしまったと思っていたけれど、これは……何かできるかもしれない。

 大会と全く同じ料理でなくても、子供立ちでも作れる料理……。


「院長先生!」

「はい」

「大会と全く同じ料理とはいきませんが、子供達でも作れる料理を何か考えてみます。屋台で出すことを考えて頂けますか?」

「まぁまぁ、もちろんですよ。何か催促したようで、すみませんねぇ」

「いえいえ。今回名義を貸していただいたお礼を何かしないとと思っていたので……」

「お礼なら、先日頂いたばっかりなのに……」

「少し、お時間をください。あまり高い材料だと子供たちも委縮しちゃって、失敗しやすくなると思うので、手に入りやすい材料で何が作れるか考えてみますね」

「本当にいつもありがとうございます。子供たちも喜ぶと思います」


 孤児院を出て、家への道を歩きながら町を行きかう人を見る。

 ホットドッグ屋がある通りも覗いてみる。

 本当だ。院長先生が言った通り、お客は結構いる。

 今日の店番たちはニコニコと良く動いている。

 客に料理を手渡すときも、ちゃんと両手で渡している。

 気持ちの良い接客をちゃんと身に着けているのが分かる。

 うん。これなら、接客は大丈夫。

 あの子たちでも作れる美味しい料理……。


 揚げ物は火傷しやすい。

 でも、火を使わない料理ってそんなにない……。

 生ものを嫌がる客も多いし、葉物野菜は自分たちで育てたものでなければ、安全ですらない。

 肥料の問題があるものね。

 ホットドッグとは似ていない料理。

 でも、道を歩きながら食べれる料理……。

 お米が広く流通しているのなら、お結びっていう手もあるけど、お米は漸く流通するようにはなっていても、安い食材ではないし……。

 サンドイッチ?

 それもいいかも?

 挟むものでバリエーションが生まれるし……。

 ベタなのはハンバーガーとか?

 でも、肉をミンチにする手間が機材がなければ大変。

 スキルで作ったミンサーを渡してもいいかも。

 それとも、ケバブをナンのようなもので挟む?

 ケバブなら見た目でお客を呼び込むこともできるのでは?


 よぉ~し。家に戻ってから相談してみようかな。

 サンドイッチとハンバーガー、ケバブ……香辛料は少な目に?

 ピリッとしなくてもおいしいケバブ……。

 使えるのは……ショウガ、にんにく、塩と……あっ! 玉ねぎ!

 まず、肉そのものに少しくらい焼き目が付くようにしっかりと焼いて、味のアクセントになる玉ねぎをしっかり炒めて、う~んと少量だけ火を通していない玉ねぎのスライスを上に乗せてみるのはどうかな?

 いいかもしれない!

 なんかすご~く美味しい料理になりそうな予感!


 思い立ったが吉日!

 急いで家に帰る!


「奥様、お帰りなさいませ」

「ええ、ただいま」

 メイドのタバサが驚いた顔でこちらを見ている。

 そうだよね。普段、こんなに急いでいることはないものね。

「どうされたのですか?」

「ちょっと思いついたことがあって……。ユーリはもう帰ってきている?」

「いいえ、まだでございます」

「そう。じゃあ、今夜の料理を作っているので、戻ってきたら教えてね」

「はい」


 さぁ、作るぞ!

 ケバブもサンドイッチも、ハンバーガーも!

 何とか今週末に間に合いました!

 今後も、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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