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ちょっとモヤモヤした休日を過ごして、明けて青空の広がる朝。
生き残った参加者全員が再び城前広場に集合。全部で21組。
「いよいよ第三試合だ! 今回から全員大聖堂前の広場での戦いとなるっ。自分の調理台番号を確認してから移動せよ!」
いつものお役人さんの声に、ざわめきが広がった。
二つの掲示板に参加者が群がる。
今回も少し時間を置いて、人が少なくなってから大きな板を見上げる。
『ホットドッグ屋 11番』
何故か対戦相手は書かれていなかった。
ナスカと一緒にいつもの道へ。
「お嬢様、旦那様が一緒に行こうかっておっしゃっていたのに、何故断ったんですか?」
「え? ああ、ユーリは人混みが苦手なのよ。なのに来るって。だから、父さんのお店で待っててって言ったの」
「それでも来てもらえば良かったのに……」
「でも、ドムも来てないじゃない?」
「いえ、ウチの人は仕事がありますから……」
「ふふふ、女二人で頑張りましょう!」
「はいっ!」
気合を入れ直しつつ、大聖堂前広場に着いた瞬間、思わず足を止めた。
舞台が――ない。
代わりに広場の左側にずらりと並ぶ屋台。
それぞれの上には、大きな番号。
……料理を売る? のかな……。
イベントだから司会者用の舞台はある。
そしていつもの調味料を置いてある台も2つある。
それ以外に広場の右側は大きなテント3つ。
相も変わらず観客の数は多い。
みんな自分の仕事とかはどうしているんだろう?
今日の司会者は女性だ。
彼女もペペんところのタレント。ウチのテーマパークでも良くイベントの司会をしてくれているベテランさんだ。
「いよいよ第三試合となりましたぁ。参加者の数も大分少なくなりましたねぇ~。今回のテーマは――”価格”です!」
件の男性司会者よりも癖がない、どちらかと言えばほんわかした口調で話す女性司会者。
だが、ペペによると、こう見えて彼女はやり手さんなんだそうだ。
機転が利くし、タイムキーパー的な部分でも強いらしい。
「さて、今回の対戦方法は、料理を1皿2000ペリカ以内で作ること!」
「「「「「おおおおお!」」」」」
何故ここで観衆からの雄叫びが上がるのか意味不明だが、娯楽の少ないこの世界、早くも楽しまなきゃ損々的なノリなのかな?
「2000ペリカを越えなければいくらでも良いですが、食材はそこのテントの中にあるお店で購入してくださいね。買う度に領収証が発行されますから、絶対に貰うのを忘れないで~。領収証の無い食材は使用禁止ですからぁ」
「「「ザワザワ」」」
参加者から戸惑ったような声が上がる。
そう、上限の金額があるとして、産地まで行って買えば安く買える。でも、店を指定されてしまうと、そういった類の工夫はできない。
値段も品揃えも不明。しかも混雑や売り切れの可能性まである。
早いもの勝ち。運も絡む。
純粋な料理勝負じゃない……。
参加者は私も含め、皆戦々恐々となっている。
「調味料の台はテントの両脇に1台ずつ用意されています。無料です! 時間中であれば何度でも取りに行けます。調理時間は90分!」
90分かぁ……。
買い出し込みで、よね……?
テントの店の品揃えと料金を確認してから料理を考えるとすると、結構ギリギリの時間な気がする。
参加者が一斉に店に殺到する図が見えるよ。
「料理は最大で50皿まで。でも、90分が過ぎても大半の材料が未調理の場合は失格となるので気を付けてくださいねぇ~」
妨害目的での大量購入防止かな?
「では、今回のルールの説明をします。皆さんはご自分の番号が付いている屋台の後ろで1食2000ペリカ以内の料理を作って下さい。今回の審査員はこの広場に居る観客の皆さんです。先着100名の皆さんには、予め青札3枚と赤札2枚を渡しています」
2種類の札?
「いいですか? これは札を持っている観客の皆さんへの説明ですよ。青の札はどの屋台でも良いです。食べたいと思った料理と引き換えて下さい。全部同じ店でも良いですよ。で、赤の札は気に入った料理のお持ち帰り用です。こちらも、全部同じ料理でも良いし、全部別でも構いません」
ん? どうしてその場で食べるのと、お持ち帰りに分けているんだろう?
ペペの狙いが良く分からない……。
リピーターを作れってこと?
「で、ここからは参加者への説明ですよ~。今から仕入れと調理に90分。笛を吹いたら調理を終了し、屋台で販売して下さい。お金ではなく、札を貰ってくださいね。販売時間は60分。終了時にも笛が鳴ります。その時点で人気のあった店、つまり、青と赤の札を足して多い店が高い得点を得ます!」
「さらに! 本試合は上位15店舗のみ得点! 1位10点、2位9点、3位8点、4位から15位は一律5点! そして、第四試合には、今までの二試合の得点と今回の得点を合わせて上位10名のみ、次へ進出です!」
いよいよ大幅に参加者を削りに来た。
しかし、ペペめぇ……。
私の料理は、スキルで呼び出す食材や調味料、調理器具あってこそ。
しかも高級路線。
安く仕入れて、多く売る。
一番慣れていない領域……。
完全に弱点を突かれてる。
でも。
視線を屋台へと向ける。
客は100人。札は5枚。
最大で500票!
全員に売る必要はない。
選ばれる料理を作ればいい。
そして、もう一つ。
赤札は持ち帰り。冷めても食べたいと思わせる料理。
難しい。
でも、面白い。
ペペ、負けないわよ~。
「ナスカ」
「はいっ」
「ちょっと忙しくなるわよ」
――このルール、攻略してみせる!




