加純さん、香炉峰の雪を見る
香炉峰の雪。ところで香炉峰って、どこにあるのかごぞんじですか?
中国の廬山の峰のひとつなのだそうです。中国江西九江市南部にある名山で、現在は世界遺産にも登録されています。古来より有名な観光地ではありますが、簾をめくったくらいで観れる景色ではありません。この言葉には中宮様のある思いが込められていて、少納言がそれを汲み取って(中宮様の)希望をかなえて差し上げた――というエピソードなのですが、白居易が詠んだ漢詩の一節を引用して中宮様が少納言になぞかけをしたんですよね。それに見事に答えた少納言とそのことにご満悦の主人(中宮様)。「雪景色が観たい」を漢詩の一節になぞらえて問いかける才気煥発な中宮様も素敵ですが、それに見事に応えた少納言も素晴らしいと思いませんか。主人の気持ちを汲んで、言葉でいうのは容易いですがなかなか実行できることではありません。
さて、2月。
どうにかこうにか連載2本立て、毎週更新を続けながら(奇跡ッ!!)お絵描きも続けています。
みこと。様へ、お誕生日のフルーツタルト。
豪華かつかわいらしくまとめてみました。もちろん、美味しそうも忘れてはいけません。
つぎに、クレープ。
キッチンカーなどで見かける手持ちスタイルではなく、ちょっとおしゃれにお皿の上にフルーツとソースを添えて。ブルーベリーのお花を添えたのですが、ナイフとフォークを添えるべきでしかかしら。
2月22日の猫の日に。
「テスクリ」のふたりを猫っぽく仕立ててみました。まだ女の子キャラが描けなくて、悩んでいた頃です。スランプのトンネルは長いぜ!
22日ですよ! にゃんにゃんにゃんどころじゃありません。25日の企画用のイラストを描かなければ!
ごぼうかえる様主催「#新12ヶ月の小品集2026」。2月のお題「大雪」&「防寒着」でした。このお題を見た時、「エムこん」を書いているせいなのか、最初に浮かんだ構図は、ゴージャスな毛皮の防寒着を着たドレスのお嬢様――というか、イワン・クラムスコイのトレチャコフ美術館蔵の「忘れえぬ女」だった。
おそらくロシア絵画としては日本で一番有名な絵かもしれない。馬車の上から高圧的な視線でこちらを見るブラックコーデの冬の装いの女性の絵なのですが、これが2月のお題にぴったり過ぎて!
多分これ以上のモノは描けないだろうと予想が付いたので、このプランはボツ!となった。
そこからが、大変よ。
「エムこん」を書きながら、あーだこーだと悩んだのだけれど、これ!ってものが出てこない。
そんな時、ふと、思いついたのよ。……って言っても、この時点ですでに締め切りまでのカウントダウンは始まっていたのだけど(泣)
「大雪」って、雪がたくさん降り積もった……ってことよね。
「防寒着」って、厚着でもいいんじゃない?(←加純さんは冬は厚着で防寒対策している)
あ、ならば!
おそらく企画参加メンバー内ではわたししか描かないであろう絵があるじゃん!
まず、描こうと思った絵について説明。
「大雪」→「雪がたくさん降り積もった」→「雪がいと高う降りたるを」
「防寒着」→「厚木」→「重ね着」→「十二単」
――ということで。
「枕草子」の299段、かの有名な「香炉峰の雪は簾を掲げて見る」の風景にトライしてみようと思ったんです。ただねー、どのアングルから描こうか悩んでいたのよ。大抵この図を描いた先人たちの構図だとこうなる。
女房装束(十二単)の清少納言が簾を掲げようとする姿。室内からの眺めですよね。美しく特徴的な装束の色目を描けるから、絵描きとしてはこの角度はとっても魅力的。でもね。今回はもう一つテーマがあって「大雪」なのよね。となると、やっぱり大雪も、厚着(装束)もひとつの画面に収めたいじゃない。
香炉峰の雪は
大胆にこうしてみた。しかし描くにあたって、装束の資料はそれなりにたくさんあるのだけれど、建物の資料って京都御所。でもね、加純さんの所在地から京都は気軽に「見学に行ってきます!」って距離ではない。
当時の邸宅は現代とは全く造りが違うからその資料集めが大変だったのよ。まず格子を上げて……って、どういうこと? じゃない。今風に言えば、窓の(雨戸替わりの)シャッターを上げる、感覚かな?
で、御簾を上げる。カーテンを開く、くらいだろうか。あと寒い朝だったので、灰櫃という暖房装置を置いていたと299段に記述があるのですが、この灰櫃がどんなものか?で、探しまくった。(昭和の子なので)火鉢ならまだわかるんだけど、灰櫃ですものね。鉢(現代風に云うと形状はプランターに近い?)と櫃(一般的に櫃とは箱のこと)だから。別ものかもしれない。それに当時のトップレディーのお部屋の家具なので、そんじょそこらの櫃ではないのだろうなぁ……なんて、悩みは深くなる一方。
言葉にすればこのくらいの説明で済むのだけど、描くとなると構造がわからないと描けないのよ。
まあね。平安時代のお部屋の調度品なんて、ほぼみんな見たことないないのですから、適当におおよそこんな感じだったんじゃないくらいで良いのかもしれませんが、それにしてもあまりにいい加減じゃウソっぽくなってしまう。イラストって、ダイレクトに視覚に訴えて来るから、第一印象でウソっぽいと感じられてしまったら、その後その後どれだけ説明重ねても、ウソの上塗りにしかならないでしょ。
創作だから、ある程度ウソも入ることは否めないけれど、最初からウソ感が漂っていたんじゃ、観る方は違和感しか膨らませることができないじゃん!
だから、出来るだけこだわりたいのよね。おそらくこのイラストを観てくださる方の中で、灰櫃に目を止める方は少ないと思う(画面の隅っこにちょこんと見えているだけだし)けれど、それでもこだわりたいのよね。この段では灰櫃も立派な登場御道具なので!(※個人の意見です)
で、その灰櫃は、おおよそこんな感じのものだったらしい。結局、それっぽいものを引っ張ってきただけなんだけど、さ。
火鉢タイプでもよかったんじゃ?と今は思っているけれど、この時はどうしても、なぜか高脚付きの(下のような)デザインにしたかったのよ。
イラストは、実質ほぼ2日で描き上げ。これまでにコツコツと集めておいた資料用写真のファイルが、役に立ちました!
も~時間が無くって、Xでも間に合わない~! と悲鳴上げていました。よくがんばったぜ、わたし! 自分で自分を褒めてあげた、わ。
おかげさまで、このイラストは好評で、多くの方から「いいね!」をいただきました。ありがとうございました。気を良くした加純さん、「エムこん」の連載もがんばって更新し続けた。とにかく3月31日までに「エムこん」を完結させるのよ――! もはや執念。
ご来訪、ありがとうございます。
とにかく時代物は資料集めが、大変。洋の東西・時代によっても違う(そこが面白いんだけど)ので、集め始めると、資料がどんどん増えていく。ちなみに「香炉峰の雪は」の装束も、柄とか、色目とか、身分や季節によっても細かい決まりがあるんだけれど、まぁこのあたりだったら華やかさもあって、それっぽく見えるかなあたりで良し!としています。時間が無かったし。少納言と几帳の奥にいる中宮様以外は着物の柄を入れず、差別化。
とにかくわからないことだらけで、この後また資料本を買った。本棚が……。灰櫃とか、有識者の方、教えてください!
ちなみに昭和の子の家では、火鉢に火を起こして五徳の上にやかんをかけて加湿器代わりになったり、五徳の上に網をセットしてお餅を焼いたりもしていた。ただ燃料が炭なので、二酸化炭素を吸わないようにと、あまり顔を近づけてはいけないとしつこく注意されていた。ファンヒーターとかストーブとは違い、遠赤外線効果でじんわり暖かくなるので、大好きでよく火鉢に張り付いていっけ。昔の日本家屋は恐ろしく寒かったのだよ、明智君。




