目、つむって
無防備にとじた瞳。その信頼を壊してしまいたくなる。彼女を色づかせるのは、全て俺の手だ。
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「目、つむって」
無防備にとじた瞳。その信頼を壊してしまいたくなる。けれど、彼女は俺の手なら綺麗になれると俺に身をゆだねているんだ。
顎に手を添えて、唇を開かせる。薄く開いた唇に紅をのせた人差し指でなぞる。なぞる感覚に彼女はまぶたを震わせた。別に人差し指で口紅をつけなくてもいい。これは彼女への腹いせだ。少しでも意識してくれればいい。そう思ってやっているのに効果がない。
彼女を色づかせるのは、全て俺の手だ。手にリキッドファンデーションをなじませて、彼女の肌に塗る。俺の体温に慣れてしまえばいい。アイシャドウで彼女のまぶたを色づかせるようになぞる。縁には小指でアイライン。まつ毛はビューラーで上向き。彼女の目を魅力的に。頬をうっすら染めたようにチークをなぞりながらつけて。出来た。
「目開けていいよ」
俺が知る、最高に可愛い彼女の出来上がりだ。彼女の視線はいつも俺を素通りする。けれど、彼女が俺を見る瞬間がたまらなく好きで、未だに彼女に化粧をしている。
「可愛くしてくれてありがとう!」
今日も可愛い笑顔だ。よかった。見たことのないワンピースに、今日はデートなのかもしれないと思った。それなのに、彼女は部屋を出ていかなかった。居座るようにソファーに座る。
「今日はどこかに行かないの?」
「別に。今までは洋服選びのコツ勉強してただけだし」
「ふーん? 今までのも悪くなかったけど」
「またそうやって甘やかす! 隣にいるため、なんだからね」
好きな子を甘やかしてどこが悪いのだろうか。よく分からなくて頭をかしげる。
「分かってないなぁ、もう。いいよ、長期戦でやるから」
意気込んでる彼女が可愛いので頭をなでたら、彼女は柔らかく頬を緩めた。




