笑顔の作り方
いつものように作り笑顔で笑っていたら、「おっまえ、笑顔下手くそだな」と言われた。
『卑屈』と『音』を使用した140文字小説を書きましょう。 #novel_odai http://shindanmaker.com/244907
いつから卑屈になったのだろうか。よく出来る姉と比べられたくない一心で、姉のやっていないものを選んだ。部活に励んでいる時だけ煩わしい音が遮断され、静寂を感じた。
「お姉さんすごいね」
「自慢のお姉ちゃんなんだよ」
私は歪んだ笑みで、いつもの言葉を言う。何度このやりとりをしただろうか。もう、笑うことさえ苦痛になっていた。
「おっまえ、笑顔下手くそだな」
いつもの言葉を言った後に、知らない人に絡まれた。ネクタイの色から三年生だろう。失礼な人だな。思わずイラッとして睨んでしまう。すると、彼はおもしろいものを見つけたかのように笑った。
「失礼じゃないですか」
「天才の妹とお近づきになれるチャンスだって、浮かれてるヤツらには分からないだろうが」
話を途中で切った彼は威圧感たっぷりに笑う。その迫力に気圧された。ほらみろとばかりに彼は鼻を鳴らす。
「印象をよくする笑顔もあるし、今みたいな笑顔もあるだろ? 笑顔一つで先手がとれるんだ。だから笑顔って大事ってわけだ。分かったか、下手くそ」
急にほっぺたを摘まれ、ぐるぐるとこねられる。人にここまで接触を許したことがないので、イラッとした。手を振り払おうとした時、彼は遠い目をして小さく零す。
「俺もよくできた弟がいるわけ。だから、なんか放っておけなくてな。俺がお前に笑顔教えてやるよ」
そう言って笑った彼の笑顔が眩しくて、彼を信じようと思った。
それから、私の笑顔講習は始まった。鏡を見ながら笑顔の練習。顔をほぐしたり、口角の角度を計算したりした。すると私のぎこちない笑顔が、次第に笑顔の可愛い子と言われるようになる。それは隣にいる彼のおかげだろう。感謝している。私の視線に気づいた彼は輝かんばかりの笑顔で笑い、私もつられて笑った。




