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セカイは想いで満ちている♪  作者: 春隣 豆吉
君想いショコラ編
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3/5

甘くて無骨な手

「彼も誰かを思ってる」の彼がユニットを組んでいるメンバーのCMで君想いショコラ話です。

 うちの会社のビルの屋上には、会長の趣味で作ったというサンルームつきの庭園があって、会社で働いている人は屋上に出入り自由だ。

 パソコンを見て疲れた目に植物の自然な色は優しい。ちょっと落ち込んだときには空を見上げる。思いっきり伸びをして深呼吸すると、気持ちいいことこのうえない。


「あ~・・・・疲れた」

 屋上に置いてあるベンチに座って首をまわすと、買ってきた栄養ドリンクと君想いショコラを取り出す。

「梓。その組み合わせってどうなのよ」

「いいの。今の私には両方必要なの」

 同期で友人の奈里子の呆れた口調をスルーして私はいそいそと君想いショコラのフタを開ける。

 ちなみにこの友人が買ったのは栄養ドリンクと肉まんの組み合わせで、私にはそっちのほうが理解できない。

 私たちはそれぞれ別のチームで仕事をしていて、互いにプレゼンの時期が近く残業が続いていた。

 今日も残業は確定で、星空を見ながら帰ることになりそうだ。

 君想いショコラは「初恋ショコラ」の上に小さいハート型のバニラマカロンを乗せた可愛いスイーツで、いつもマカロンを食べる順番で迷う。今日は最後にマカロン食べるコースにしようとフタにマカロンを置く。

「なんか残業のときはいっつもそれ食べてない?太るよ、梓」

「それを言うな。その代わり、これを食べたらあとは常備してある野菜スープしか食べないようにしてるもん。奈里子だって肉まんに栄養ドリンクばっかじゃん」

「・・・このプレゼンが終わったらさ、まともな食事しに行こうね。ところで、なんで梓は君想いショコラがそんなに好きなのさ」

「あー、それは・・・」


 私がこんなにも「君想いショコラ」を残業の友(既に親友レベルかも)にしているのは、一人暮らしの部屋でだらだらしているときに偶然見たCMのせいだ。

 残業終わりで少々お疲れ気味の会社員らしい女性がドアをあけると、同棲中(と私が勝手に決めた)の彼氏が出迎えてくれる。

『おっかえり~。残業おつかれさん。ご飯出来てるよ・・・・そんなに驚かないでよ。いつもは俺のほうが遅くてきみに任せっぱなしなんだから、俺が早く帰れたときは家事をするのは俺。これって当たり前だと思わない?』 彼氏がにっこり笑顔。

いいなあ、こんなオトコ。どこを探せばいるんだろうか。

 そこで私はこの彼氏が、初恋ショコラのクリスマス限定品CMに出ていたアイドルユニットの一人だと気づいた。

 画面が切り替わり、食事が終わった場面になる。

『ほら、デザートも買ってきたんだよ。君想いショコラ・・・どうした?』

 そこで彼氏は手を伸ばし、彼女の髪や頭をなで話を聞いている様子。

『うん・・・そうか。でもあまり無理はしちゃだめだよ。そうだ、ショコラを食べるまえに』

 そこで彼氏の顔がキス顔になって暗転・・・キャッチコピーの“君に想いの分だけキスしてあげる”が流れて、君想いショコラの実物が出てきて終わる。

「・・・・髪をなでてくれるあのCMがね、好きなんだよ。ショコラを食べればその気分が味わえそうじゃない」

「なるほど。梓さんは少々お疲れで癒しがほしいわけね。確かにあのCMはいいよね~。もっとも私は別のアイドルがやってる“さっさと君想いショコラを食べてくれないか。そして思いのぶんだけキスをさせろ”っていうやつも好きよ」

「奈里子がそのCM好きなの、なんとなくわかる」

「そりゃどういう意味よ?・・・ふふっ、さてそろそろ仕事に戻るか」

「うん、そうだね」

 私たちは立ち上がった。



「松本も食事に行ってたのか?」

 奈里子と途中で別れて歩いていると、後ろから声をかけられた。見なくても誰だか分かる。

「武田も食事行ってたの?」

「まあな」

 いつの間にか私の隣に並んで歩いているのは、奈里子や私と同期の武田。私と同じ部署で少々強引なところはあるけど仕事は抜群にできるし、性格も悪くない。

「今日も残業だなー」

「そうだね~」

「俺、絶対プレゼン通してみせるからさ」

「うん、頑張ってよ。同期の星」

「おう」

 そう言うと武田はなぜか周囲を見まわし誰もいないのを確認するとふいに立ち止まった。

「武田、どうしたのよ」

 私が言うと同時に、武田の手が私の頭をなでる。

「は?武田??」

 大学時代まで剣道をやっていて、今もときどき道場に通っているという武田の手はどちらかというと無骨な手だ。

 そのまま武田は何も言わずに私の頭をぐりぐりとなでる。

「た、武田?」

「・・・・さすがにこれ以上はここではできないよなあ・・・・俺さ、屋上にいたから松本と吉岡の話聞いてた」

「えっ・・・あれ、聞いてたの」

 うわー、それはちょっと・・・いやかなり恥ずかしいぞ。

「俺の手は癒しにならない?君想いショコラもつけるぞ」

「えーっとですね・・・考えたこともなかったですよ」

 私が正直に言うと、武田はふっと笑って手を離した。見慣れた笑顔のはずなのに、どきっとする。

「じゃあ考えてよ。プレゼンが通ったらまともな食事しに行こうな。俺と2人で」

 そういうと、武田は手をひらひらさせて先を歩いていってしまう。


 武田の手、嫌じゃなかった。2人で食事かあ・・・私は少しだけ甘い気分になってる自分に驚いていた。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


トムトム様との共同企画『コンビニスイーツでI Love You』参加作品です。

まだまだ参加者募集中です。

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