データよりも確率よりも-チェックメイト-
拙作「クリスマス限定初恋ショコラ」の「データよりも確率よりも」の続編になります。
かなり長文です。すいません!!
クリスマス前のある日を境に、直孝と一緒にいることが増えた。クリスマスには参考書を買うから本屋に行こうと誘われ、ついでに駅前のツリーを一緒に見た。お正月には初売りに行くから付き合えとなぜかスポーツ用品店に連れて行かれ、なぜか初詣も一緒に行った。
もしかしてお見舞いに来てくれた日の「覚悟してくれ」ってこれ?私は直孝に対しての自分の気持ちがよく分からない。直孝の気持ちも分からない・・・でも一緒にいるのは、嫌じゃない。
2月になり、図書室もチョコレート作りの本やラッピングの本の貸し出しが増えている。
受付カウンターを片付けていると、なぜか橋野さんがうふふふと笑いながら私を見た。
「森原も池野くんにチョコあげるんだよね。彼氏だもんね~」
「橋野さん、あれは幼なじみです。彼氏じゃないです」
彼氏といわれると、なんか違う気がするのでここは否定。チョコも用意してないし。どうせヤツはたくさんもらうんだから。
「え、そうなの?松尾、彼氏じゃないそうよ。聞き間違えたんじゃないの?」
私の返答に首をかしげた橋野さんは隣にいる委員長に聞いた。
「え?てっきり森原は池野くんとつきあってるもんだと。ねえ?」
委員長が周囲にいたほかの委員の人たちもうんうんとうなずいてる。
「違います。もー、誰ですか。そんな大嘘ついてるのは」
「希乃ちゃん、本当に知らないの?だって池野くんが自分で言ってたよ。だから池野くんにチョコあげようとしてた子たち、かなりがっかりしてたって話だよ?」
「・・・はああああ~~~~っ??」
同じ1年生の委員の子から聞いた私は耳を疑った。な~お~た~か~~~~~、いったいどういうつもりだ。
あいつ、きっちり問い詰めてやるっ!!・・・・でも今日はやめておこ。帰りにコンビニ寄って予約した「君想いショコラ」受け取る日なんだから。腹を立てるのは、明日にしよう。
「絶対自分のほうが好きだって?それはおかしいな。どうみても僕のほうがきみを好きなのに」
そう言うと彼がポーカーフェイスから微笑む・・・・うううっ、普段が普段なだけに破壊力抜群なんですが!!これがギャップ萌えなのねっっっ。
「納得いかない?そうだなあ・・・・じゃあ、君に想いの分だけキスしてあげる。恥ずかしい?しょうがないなあ。でもきみの恥ずかしがりやなところも大好きだよ。じゃあ僕のキスの代わりに」
そこで彼が手に取ったのは「君想いショコラ」。
「ほら、口をあけて?」
そこで暗転して商品名と「君に想いの分だけキスしてあげる」とコピーが出てきて、最後には恥ずかしそうに下を向く彼女と食べ終わった容器と、「僕のほうがきみを好きだということ、わかってくれた?」と彼が微笑んでCMは終わる。
やっぱり彼は素敵。ここでなぜか直孝が頭に浮かんだけど、急いで追い出す。
初恋ショコラのうえにちっちゃなハートの形の白いバニラマカロン。最初は見た目重視かと思ったんだけど、合う。ハートを食べるってのがいい。
今日は以前の「初恋ショコラVeryBerry」のときみたいに、途中で直孝につかまることもなく私は予約した「君想いショコラ」を家で食べている。
するとインターホンが鳴った。お母さんが宅急便でも頼んだのかな・・・モニターをのぞくと、そこには直孝の姿が。この時間だと部活帰りか・・・いったいなんの用事だろう。
ドアを開けて顔を出すと、マフラーをぐるぐる巻きにしてダッフルコートを着た直孝が立っていた。
「希乃、まずはインターホンで応対しろよ。危ないだろ?」
「だって直孝だから。何か用事?」
「いま、少しつきあえるか?」
お母さんは夜勤で、お父さんも遅い。夕飯は私だけで、とっくに済ませてる。少しくらいならいいか。
「いいよ。ちょっとコート着てくるから、待ってて」
私は急いでコートとマフラーを身につけて外に出た。いい機会だ、図書室で聞いた話について問い詰めてやる。
直孝ときたのは、近所にある小さな公園だった。昔、よくここで直孝とよく遊んだ。小さなすべり台、一緒に並んでこいだブランコ。直孝と一緒に一つしかないベンチに座る。
「あのさ、もうすぐバレンタインだな」
「そうね。あ、直孝!変な話ながすのやめてよね」
「話って?」
「・・・・私とあんたがつきあってるって・・・図書委員の子から聞いてびっくりしたんだから」
言ってるこっちが恥ずかしくて下を向いてしまう。
「は?つきあってるじゃないか俺たち。それを公表して何が悪い」
「・・・つきあってる?誰と誰が」
「俺と希乃。一緒にクリスマスにデートして、初詣も2人きりで行ったじゃないか。
俺は女の子と2人で駅前のツリーなんか見に行ったこともないし、初詣だってそうだ。希乃、俺が見舞いに行ったとき“覚悟してくれ”って言ったの覚えてる?」
「・・・覚えてる」
あのときは、なぜか彼よりコイツが浮かんできて不本意だった。だけどくすぐったい気持ちで。
「やっぱり、はっきり言わない俺が悪いのか。そうだよな、昔から鈍いし・・・」
小声でブツブツ言ってるつもりなんだろうけど、丸聞こえなんですが。だけど、口を挟めなくて私は黙って座ってる。
直孝が私のほうを真剣な表情で見つめる。
「希乃。俺は小さい頃から希乃が好きだよ」
ふんわりと私を包む直孝の腕。この間みたいに強引じゃなくて、ちゃんと優しい。
直孝は幼なじみで気楽に接することができる相手。そして一緒にいると、どきどきして心が躍る。何より彼の腕の中は嫌じゃない。
もしかして、これが好きってことかなあ・・・なんか流されてる気がするんだけど。でもパズルの最後の欠片がうまったときのようなすっきりした気持ち。
「私も、直孝のこと好き」
言葉にだしてクリアになる気持ち。
2人で並んで帰る道で直孝がほら、と私に左手を出す。きょとんとする私の右手を強引につなぐ。
「手をつなぐなんて、何年ぶり?」
「さあな。でも、あの頃とは違うから。ところでさ、今年のバレンタイン俺にチョコくれないの?」
「あ・・・ごめん。用意してないや」
「ひでえなあ。彼氏なのに」
「き、急に言われてもっ。まさか、こうなるとは思ってもなかったしっ・・・あ」
ここで思い出したのは2個買った「君想いショコラ」。そっか、あれはバレンタイン向けの商品だったよ。
ちょうど家に到着したので、私はちょっと家の前で待っててもらい「君想いショコラ」を冷蔵庫から取り出した。袋は・・・ん~、初恋ショコラVeryBerryの袋でいいか。雰囲気はまあ合ってる。
家の前で待っていた直孝に袋を差し出す。
「ちょうど2個買って、さっき1個食べたんだけどさ・・・バレンタイン向け商品だから」
「君想いショコラ・・・希乃の好きなアイドルが宣伝してたよな。おまえ2個食べるつもりだったのか」
「え?へへへへへ~」
私が笑ってごまかすのを見ていた直孝がしばらく考え込んだあと、妙に嬉しそうな顔になる。
「・・・なるほど。希乃はなかなか大胆なんだな」
「は?」
「だって“君に想いの分だけキスしてあげる”だろ、これ。先々楽しみだなあ」
「ち、違うよ!そんなつもりじゃ・・・・」
黙ってしまったのは、直孝に抱きしめられたから。
「知ってる、ありがとうな。じゃあ、また明日」
「・・・・うん。また明日」
きっと、これからの私たちは想いの分だけキスをする。
読了ありがとうございました。
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続編なので青い衝動再び(笑)。
前作より甘くなってるといいな~。