31.旅の道中
「リフィ! 後ろ!」
「任せて! ランタ!」
最初の夜はなぜか魔獣や獣が出ることもなく、無事街道を抜けたリフィリーゼとイスランタは、その日から鍛錬を積み、少しずつ弱い魔獣や獣を倒せるようになっていった。
「リフィ! 魔法はダメだ!」
つい魔法に頼りそうになりがちなリフィリーゼに対して、イスランタは手慣れた様子で次々とスライムを薙ぎ払う。
「……ファイア……じゃなくて、えい!」
「これで全部倒した、か?」
「うん、倒したと思うよ」
「……魔力で探知していないか?」
「してないよ!」
息を荒げながらも、周りを見渡して無事に全て倒したことを確認した二人は、水筒から水を飲む。
「あ、水がなくなった」
「じゃあ、近場の川に汲みにいくか」
「……水一つにも困るなんて、魔法が使えないってこんなにも不便なんだね」
リフィリーゼの言葉に、イスランタがため息を落として言った。
「リフィ。その発言は、魔法を使えない人たち全てを敵に回すぞ?」
「あ、ごめん……」
リフィリーゼの謝罪に息を吐いたイスランタが、地図を開いて川の方角を探す。地面に座り込んだリフィリーゼがふと視線を向けると、村人たちが二人を見ながら少しずつ近寄ってきた。
「……ランタ」
リフィリーゼが座り込んだまま、イスランタの服の裾を引く。
「ん、なんだ? あぁ、こんちは! この辺りに飲み水の汲める場所ってあります?」
イスランタが笑顔を浮かべ、村人に近づく。イスランタの笑顔に、村人たちがホッとしたように話しかけてきた。
「お前ら、旅してるんか?」
「そうなんすよ。職場のお使いみたいなものっす」
「あぁ、このあたりはそういう人が多いからなぁ。水なら、この先に綺麗な湖があってなぁ」
イスランタが村人と交流している横で、リフィリーゼの方を見ながら木の影からちらちらと様子を伺う幼い女の子に、リフィリーゼは首をかしげて視線を送る。
「こ、こんにちは」
リフィリーゼのそんな興味のなさそうな様子に、女の子が少しずつ近づいてきて、挨拶をした。
「……こんにちは?」
挨拶を返したリフィリーゼは、女の子から目線を外し、自分の手足を揉み始める。
「あ、あの、お姉さん」
さらに声をかけてきた女の子に、リフィリーゼが顔を上げ、目を細めてその様子を見る。そして、バッと立ち上がると、女の子の元に近寄り、その両手を取った。
「へ!?」
思わず声を上げた女の子に、リフィリーゼはお構いなくその周りに広がる魔力を見る。思わず魔力を通して確認しおうとしたリフィリーゼの頭を、イスランタが思いっきり叩いた。
「リフィ。怖がっているぞ」
イスランタの目は「魔法禁止」とはっきりと書いてあって、リフィリーゼはすごすごと手を離し、女の子に問うた。
「あなた、魔法の才能があるわ。ご家族は? 魔法使いや魔女はいるの?」
「え? えっと、」
困ったように俯いた女の子に、村人がリフィリーゼを訝しげに見ているのをイスランタは心の中で舌打ちしながら様子を見た。
「お、お父さんとお母さんとお兄ちゃんとお姉ちゃん、弟がいるよ。……魔法なんて使える人はいないよ。だって貴族じゃないもん」
首を傾げた女の子に、リフィリーゼは首を傾げた。
「……貴族の方が発現率は高いけど、遺伝は関係ないわよ。魔法の才能は個人に寄るものよ」
リフィリーゼの言葉に、女の子が首をさらにかしげる。そんな様子を見ていたイスランタが、笑顔を浮かべて女の子に言った。
「このお姉ちゃん、魔法の才能を見抜く力があるんだよ。君のご家族が魔法を使えなくたって、君だけ魔法を使えてもなにもおかしいことじゃない。……君は今、幸せかい?」
イスランタの言葉に、不思議そうにしていた女の子が笑みを浮かべて答えた。
「うん! お父さんもお母さんも怒ると怖いけど優しいし、みんな仲良しで楽しいよ」
「……そっか、よかった」
イスランタはそう言って、女の子の頭を優しく撫でて、村人に言った。
「また、この子が大きくなった頃にきっと来ます。その時にこの子の将来の選択肢の一つに魔女というものがあったら、修行先を紹介するので、ご両親にそう伝えておいてください」
「お、おう」
強引に連れ去られるのではと怯えていた村人たちは、ほっとしたように息を落とした。
「お名前は?」
リフィリーゼの強い視線に怯えたように大人の陰に隠れた女の子が、その問いに小さな声で答えた。
「ミリィ……」
「そう、いい名ね」
リフィリーゼの言葉に安心したように村人たちもミリィも小さく笑ったのだった。ミリィが強引に連れ去られないように、対策を村人に教えたイスランタに、村人たちが感謝して手を振って見送ってくれるのに手を振りかえしながら、二人は教えてもらった湖に向かう。
「おい! リフィ! せっかく俺が村人と親交を深めていたのに、お前が子供を怯えさせてパァになるところだっただろ!?」
怒るイスランタにリフィリーゼは不思議そうに首を傾げた。
「わたしなりに子供と仲良くなろうと思ったんだけど。魔力もあったし」
リフィリーゼの言葉に、ため息を落としたイスランタが頭をガシガシと掻きながら言った。
「ああいうときは、変に距離感を詰めるんじゃなくって、笑顔を浮かべておくのがいんだよ! リフィはもう笑っているだけでいいから! 余計なことは言うな!」
湖に着くまでイスランタのお叱りは続き、リフィリーゼは頬を膨らましながら話を聞き続けるのだった。
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