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宮廷魔法使いリフィリーゼの救世譚〜馬車から捨てられた欠陥令嬢が、宮廷魔法使いの座についた理由。  作者: 碧井 汐桜香


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20.和解? 同盟

「あの、殺そうとするつもりはなくて、すみませんでした。イスランタさん」


 リフィリーゼがイスランタに謝罪した。王宮のすみ、誰も来ないような場所にいたイスランタはリフィリーゼに見つかったことに驚きながら、リフィリーゼの様子を盗み見る。


 両手を重ね、その手を握りしめながら俯いているリフィリーゼは本当に殺そうとしたわけではなかったようだ。


 そんなこと、なんとなくわかっていたけどさ……。そう思ったイスランタは、リフィリーゼに問いかける。


「……あんたは、メルタリア・ジョセフィーングは、実の息子イスランタの魔力を奪ったという説を信じているのか?」


 力無く、そう言ったイスランタの表情を盗み見るも、リフィリーゼにはイスランタが俯いていることしかわからない。正直に言うしかない。そう思ったリフィリーゼは真剣な眼差しでイスランタに答えた。


「イーリア様のおっしゃった二人分の魔力を守るメルタリア・ジョセフィーイングの息子があなたで、あなたの魔力が水魔法以外一切見当たらない……この状況とお師匠様の説を信じて、わたしはメルタリア・ジョセフィーングは、実の息子イスランタの魔力を奪った説が最有力だと思っています」


 リフィリーゼの言葉に、イスランタは息を呑んだ。あのメスラリア・ジョセフィーングのことを恐れ、他の者なら断言しない言葉を、リフィリーゼは断言した。直感がイスランタに訴えた。彼女は信じられる、と。それと同時にイスランタはリフィリーゼのことを羨ましくなった。師匠と呼ぶ存在のことをそんなに心の底から信じられるだなんて……。自分には、そんな存在、どこにもいないのに。


 風が吹く。草が揺れた。イスランタは顔を上げ、リフィリーゼに問う。


「……メルタリア・ジョセフィーングへの復讐、手伝ってもらえないでしょうか? リフィリーゼ先輩」


 そこまで言ったイスランタは自分でも何を言っているのかわかっていないように口を押さえた。


「……いいでしょう。でも、条件があります」


 リフィリーゼが肯定を返したことに息を呑み、驚いた様子を見せたイスランタを一瞥したリフィリーゼが言った。


「わたしとしては、あなたの魔力が増え、メルタリア・ジョセフィーングの力が削れることは本望です。ただし、敵討はわたしにやらせてください」


 リフィリーゼの真剣な表情に、イスランタは思わず父親に問いかけたくなった。お前は一体なにをしてこんな恨みを買っているのだ、と。同時にこうも思って頭を振った。あのメスラリア・ジョセフィーングを嫌わない人間はいない、と。















「……リフィリーゼ先輩的には、おや……メスラリア・ジョセフィーングをどうやって仇討ちしようと思っているのですか?」


 イスランタの問いに、彼の方をチラリと見たリフィリーゼが答えた。


「……まだ計画は考えていないけど、まずはイスランタさんの魔力を取り戻すことから始めたいな。……裏切るとは思っていないけど、念の為、イーリア様立ち会いの元魔法契約を結ぼうか?」


 しばらく語り合った結果、リフィリーゼの口調はすっかり打ち解けたものとなった。その様子を見て、イスランタが言う。


「あの、“イスランタさん”じゃなくて、イスランタでいいっす」


 イスランタの言葉に笑顔を見せたリフィリーゼが笑って言った。


「一緒に計画するのに、名前が長いと面倒だもんね。じゃあ、わたしのこともリフィリーゼ先輩じゃなくて、リフィリーゼでいいし、もっと砕けた口調でいいよ?」


 リフィリーゼの言葉に、イスランタは頬を少し赤く染めて言った。


「ありがとうござっす……リフィリーゼ」


 イスランタの言葉にリフィリーゼは笑ってイーリアの元を目指した。


 殺し合いをしていないかと他の職員たちに心配されていたリフィリーゼとイスランタが仲良く帰ってきたことに、皆が驚く中、イーリアが一緒ニヤリと笑って、二人を呼び出した。


「なぁ、あんたたち。これが仕事中ってことはわかっているよねぇ?」


 イーリアに散々雷を————物理的にもだが————落とされた二人が慌てて自分たちの仕事に戻る頃、窓辺に止まったカラスの目から二人の様子を見ていたメスラリア・ジョセフィーングがワイングラス片手に笑みを深めるのだった。



「……搾りかすの無能息子が、ワイナーの弟子と組むことになったか。……まぁ、あの無能には大したことはできんだろうが、念の為、国に戻るのは中止しよう。弱い犬にキャンキャン吠えられたら、耳が痛む」


 飲んでいたグラスを一瞬でどこかに消し去ったメスラリア・ジョセフィーングは、そう言って姿を消したのだった。







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