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宮廷魔法使いリフィリーゼの大掃除〜馬車から捨てられた欠陥令嬢が、宮廷魔法使いの座についた理由。  作者: 碧井 汐桜香


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18.後輩の反抗

「あ、リフィリーゼさん」


「ルミアさん! お疲れ様!」




「リフィリーゼさん、またパンを食べに行ってやってください」


「お言葉に甘えさせてもらいますね」



 薬草園へと向かう通り道、リフィリーゼがいろんな人から声をかけられるのを見て、イスランタが驚いた表情を浮かべる。そして、後ろから小声でリフィリーゼに問う。


「リフィリーゼ先輩。宮廷魔法使いって……そんなに王宮内の人と関わることがあるんすか?」


 イスランタの問いに、リフィリーゼが困ったように笑い、答えた。


「うーん、あまりないですね。わたしの場合は特殊で、事情があって彼らの頼み事を聞いたことがあるので」


 照れたように頭をかきながら答えるリフィリーゼに、イスランタはギョッとした表情を浮かべた。


「……魔法使いの私的利用ってことっすか?」


「……い、一応イーリア様立ち会いの元、魔女の契約を結んでいるよ?」


「魔女の契約があるならいいのか……」


 焦って答えたリフィリーゼの回答に、イスランタが顎に手を当てて俯きながらぶつぶつと呟く。


「と、特別な事情があって、わたしの目的と利害が一致したから、イーリア様が認めてくださった、っていうことろかな? 普通は頼まれません」


 イスランタの心がわからず、リフィリーゼが慌てて言葉を紡ぐ。イスランタの表情は変わらず、リフィリーゼに反論した。


「……つまり、彼らはたまたまリフィリーゼ先輩と利害が一致したから、魔女の私的利用を行い、願いを叶えてもらえた、っていうことっすか? ……不公平っすね」


 それだけ言い捨てて歩みを早めたイスランタに、なんと言えばいいかわからず、リフィリーゼはイスランタを追い越すように歩みを早めた。









「これが風邪薬の薬を作る薬草で、こっちが傷薬の薬を作る薬草です。水はあそこに……」


 リフィリーゼが指さす先を無視して、イスランタは杖を構えた。思わず、リフィリーゼが警戒したように腰を下げると、イスランタの杖からはキラキラときらめく水が溢れ出た。


「……水魔法?」


 リフィリーゼが首を傾げる。イスランタは植物の様子を見ながら、水を強めたり弱めたり調節を加え、撒き続ける。


「……っうす。こんな無意味な魔法しかうまく使えないんで」


 イスランタが水を自由自在に扱う様子を見て、目を輝かせていたリフィリーゼが言う。


「すごい! 水が出し放題なら、食べ物に困ることはあっても水に困ることはないね! すごい! しかも、その繊細な魔力調節、とっても上手い!」


 手を叩きながら喜ぶリフィリーゼに、照れたように頭を掻いたイスランタがすぐに表情を暗くして言った。


「……水魔法なんかで繊細な魔力調節ができたところで、無価値っすよ」


 イスランタの言葉に、リフィリーゼは首を傾げた。


「お師匠様が言っていましたよ? 水魔法は全ての魔法の起源であり、優れた水魔法の使い手は優れた魔法の使い手となるって。なら、イスランタさんも頑張れば他の魔法も上手くなるんじゃないでしょうか?」


 リフィリーゼの言葉に、イスランタはリフィリーゼを睨みつけながら怒声を上げた。


「嫌味かよ! 俺が水魔法以外使えないって魔法使いはみんな知っているんだ。()()父親の息子なのに、魔法が使えない無価値な奴だって! お前だって知っているだろう!? メルタリア・ジョセフィーングのことくらい!」


 イスランタの言葉に、リフィリーゼは首を傾げた。初めて聞く名前な上、イスランタが水魔法以外使えないなんて知らなかった。しかし、リフィリーゼの興味はすでにイスランタの魔法に注がれていた。水魔法があれだけ使えるのに、他の魔法が一切使えないなんておかしい。ワイナーが言っていた。水魔法は全ての魔法の起源だから、水魔法の適性が高ければその分、他の魔法の適性も高くなる、と。


「……これだけ水魔法を使いこなせるのに、他の魔法が使えないなんておかしい。見せて!」


 リフィリーゼが強引にイスランタの杖を掴んだ。怯むイスランタの様子など、一切気が付かず、リフィリーゼは杖に魔力を通す。


「イスランタさん。少しずつ魔力を込めて」


 リフィリーゼの指示に、イスランタが嫌がって杖からリフィリーゼを振り解こうとするが、集中したリフィリーゼの腕が杖から離れることはない。


「早く!」


 リフィリーゼの声に、解放されるにはやるしかないと腹を括ったイスランタが、魔力を込める。少しずつ魔力を込めていくと、リフィリーゼの魔力が逆流してきて、それを強引にこじ開けようとするような奇妙な感覚に襲われた。


「り、リフィリーゼ先輩! 生意気言って悪かったっす! 許してください! 気分が悪いっす! 吐きそう……」


「黙って。あと少しでわかる気がする」


 リフィリーゼが魔力を込めていくと、イスランタの顔色は悪くなっていく。そして、リフィリーゼが気がついた。


「……水魔法以外の魔力が全くない?」


 そんな現象があり得るなんておかしい。まるで封じられているようだ。……それにこの違和感、まるで過去見の鏡を調べた時のよう……そう思ったリフィリーゼがさらに魔力を込めようとした瞬間、リフィリーゼの頭に衝撃が走った。


「あんたはいったい何をしようとしているんだい?! リフィリーゼ!」


 異常を完治したイーリアが薬草園に駆け込んできて、リフィリーゼの頭をぶん殴った。そして、リフィリーゼの手が離れた瞬間、倒れ込むイスランタを人を運ぶ魔法で抱え込んだ。


「え、イーリア様?」


 首を傾げるリフィリーゼに、いーリアは特大のため息を落として言った。


「後輩殺しでもするつもりだったのかい?! リフィリーゼ! ご覧! イスランタの顔色を!」


 イーリアに言われて、リフィリーゼはハッとした。土色のような顔色でぜぇぜぇと息をするイスランタ。イーリアの怒った表情に、これは自分が行ったことだと気がついたリフィリーゼは素直に謝った。


「……ごめんなさい」








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