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 ソフィア視点→ウィリアム視点




 急遽決まったウエロスニア王国の歌劇団の訪問。準備は早急に進められ当日を迎えた。


 国王陛下と王妃殿下は訓練場に設けられた観覧席でご観覧される。王子殿下は特別な授業があるため、本日はいらっしゃらない。


 訓練場には第一騎士団が配備され、ウエロスニア王国王太子殿下が入場された。


 準備が整ったとの合図があり、国王陛下と王妃殿下が入場された。わたしたち侍女は王妃殿下に続き観覧席へ向かった。


 訓練場には王宮で働く多くの者がつめかけていた。


「あら?」


 配備された騎士の中にルーカスを見つけた。ルーカスは第三騎士団所属のはずだけれど、なぜ第一騎士団にいるのかしら。



 宰相に続きガードナー団長がお言葉を述べられ、いよいよウエロスニア王国の歌劇団が訓練場入口から姿を現した。


 現れたのは王女役と騎士役の役者だった。手に手を取って中央に設けられた舞台に駆けあがり、観客の視線を集めた。


 物語は王女と恋仲の騎士が追手から逃げている場面から始まるようだ。




 物語が終盤に差し掛かり、逃げる王女と騎士を追う兵隊が現れた。兵隊が王女と騎士に迫って行き…………兵隊は逃げる二人の前を通り過ぎ、ウエロスニア王国王太子殿下に襲い掛かった。



 え?



 キィンと剣がぶつかり合う音が響いた。ウエロスニア王国王太子殿下に振り下ろされた剣は、近衛騎士であるロードン様が受け止めていた。


「きゃぁぁぁぁぁ」


 訓練場には悲鳴があがり、つめかけていた者たちが逃げ出していた。


「国王陛下、王妃殿下、こちらへ」侍従の声に、国王陛下と王妃殿下が避難される。

 わたしも王妃殿下に続いて避難しなければならないのだけれど、思わず足を止めてしまった。



 ——ルーカスは、そして……、彼は無事なの……!?



 場内のあちらこちらで剣と剣がぶつかり合う音が、そして怒号と悲鳴が響いている。訓練ではない実際の戦闘。彼等に何かあったらと考えただけで、恐怖と不安が押し寄せる。


 大丈夫。大丈夫よ。ルーカスも彼も強いもの。そう思っても、わたしの震えは止まらない。


 そんなときに聞こえたのは——




「ルーカス!! フィーを守れ!! フィーが擦り傷一つでも負ったら殺すからな!!」

「はいぃぃっ!!」


 “フィー”


 懐かしいわたしの愛称。お父様もお母様もわたしを“ソフィー”と呼ぶ。わたしをフィーと呼ぶのはレオナルド様だけ。


 今のは何……? 頭の中が真っ白になり立ち竦んでしまった。


「姉上!」


 いけない。避難しなくては。ルーカスの声にはっとして動き出したところで足を踏み外してしまった。

 わたしの身体は傾いて……わたしはそこで意識を手放した。




 ***




 ウィリアム視点




 あれが“双剣の獅子”……!!


 イローリス王国第一騎士団副団長、レオナルド・ウィームズ。

 あの男が双剣を手にして現れた途端、驚くべき速さで事態は収束した。数十人いた敵は一人残らず倒されている。


 五年前のカメロット王国の侵攻をわずか一日で抑えたというのは過大評価だと疑っていたが……。あれが他国にも名を轟かせる騎士なのか……!! 同じ人間とは思えない、凄まじい強さ……!!



「ウィル」

「ヘンリー、無事か!?」

「ああ、大丈夫だ」


 俺は振り返りヘンリーの無事を確認した。ヘンリーに何事もなく一先ず安心だ。


 今回の件は第二王子派壊滅への大きな鍵となるだろう。





「エマーーーっ!!」

「ここですわ!! アーサー様!!」

「無事か!? 怪我はないか!?」

「ええ、傷一つありませんわ」

「良かった。お前に何かあったら俺は生きてはいけない!!」

「アーサー様……」

「「「「「「えぇーーーーーーっっ!?」」」」」」


 場内に響く一斉の叫びに顔を向けると、一組の男女が抱き合っていた。あれは、第一騎士団長……だよな。相手の侍女は妻だろうか? 恋人? 周りにいる者たちは目を見開いて二人を凝視している。


「エマ……先……輩……?」

「妊娠してる……んです……よね……?」

「何を言う!? 今エマは月の障りで俺は我慢中なんだぞ!!」

「きゃぁぁぁ! ア、アーサー様ったら……っ」

「「「「「「はぁーーーーーーっっ!?」」」」」」


 場内には再び一斉の叫びが響いた。





「おい」


 声を掛けられ顔を向けると、そこには双剣の獅子が立っていた。


「これは返す。彼女は()()()()()()()()()()


 彼は俺がソフィア嬢に贈ったハンカチを落とし、それを剣で突き刺した。


 …………は?


「ルーカス!」

「ここです! 義兄上」

「フィーは無事だろうな?」

「……ハイ……」


 彼は彼女と同じ色を持つ騎士に近づくと、気を失っているソフィア嬢を抱き上げ、訓練場を去って行った。


 ぽんっと肩を叩かれ振り向くと、今度は第一騎士団長である「大陸最強の盾」が立っていた。


「申し訳ない……。ヤツは“双剣の獅子”などと呼ばれているが、“双剣の”の前に“残念な”と付くんだ……」



 …………は?







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