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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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戸川祥子の日常(10)

 現在、第十階層にてリンダヴルムと戦闘中。


 火、吹いてる。体の構造どうなってんのと思ったら、胃液が可燃性で、口の中のどこぞに火打ち石みたいなのがあって、それを擦って引火させてるらしい。ゲップも可燃性ガス。我々は燃えたゲップを喰らっているのかと思うと不快感が増す。


 スキルレベルが低い状態だとクロもさすがに怯えてしまった。手出し無用とコートさんに言われたので我々は見学である。


 これくらいの強さになると群れないらしい。むしろ同族でやりあうこともある。力こそ正義、みたいな脳筋社会を形成している。もう少し強いドラゴンになるともっと理知的。ドラゴンは燃費がいいで有名なので余り積極的に狩りをしないそうだ。


 さすがのコートさんもそれなりに時間をかけている。跳躍に関してチラリと聞いてみたところ、ゼーキン家の血が薄っすら入っているので常人より身体能力が高いそうだ。軍部寄りの派閥は現在他の人の名前になってはいるが、元々はゼーキン派と呼ばれていた。コートさんの父親であるムーケイ国家治安保全局長は現在派閥のNO.3らしい。

 軍部寄りと言っても冒険者ギルド本部もそちら寄り。まあ、国軍と密接な関係があるって言ってたからな。そこで反目しあっても効率が悪くて仕方ないんだろうけど。支部はその土地土地の気風やギルマス次第。ウチのマッタさんはそういうのに興味ないんだよな。出来れば関わりたくないと言っている。


 お、目を突いた。左目が潰れた。咆哮を上げてのたうち回るリンダヴルム。剣は突き刺さったままだ。あ、頭殴った。コートさんの手につけてる装備、アレ、小手っていうよりメリケンサックだよな。アレもお高いんだろうな。

 その後、脳震盪を起こしたリンダヴルムの首を頭ごと捻ってボキリ。何て保存状態のいい素材なんだ。尊敬する。


「さて。そろそろ戻ろうか。」


「え、次行かなくていいんですか?」


「いいよ。ハイクラスの可能性はもう充分分かったしね。第九でワイバーンだもんなぁ。オークエンペラーも出たし。あれ、ロークラスのボスでもおかしくないからね。」


 うわぁ、これはまたコッティラーノ支部の体制が変わるんじゃないか?ハイクラスになると常駐の高位ランカーの数を増やさなきゃいけない。他領の支部からならともかく、マッタさんは本部から人を寄越されるのが嫌らしく、せめてミドルクラスで止まってくれ!と願掛けしていた。


「本部からAランクパーティが派遣されて来るんでしょうか。」


「その可能性が高いね。今、コッティラーノにAランクパーティいないからな。あと二か月やそこらで育てられないでしょ。でも、所属冒険者の指導も含めて仕事だから悪いことばかりじゃないよ。私は個人的に面倒なだけ。」


「コートさんの父親の派閥寄りなのに面倒だと思うんですか?」


「面倒でしょ。おべっか使われるの。」


 ああ、そういう。とてつもないボンボン発言だったわ。


「バルトもね。だから、ショウコもだよ。タブロイド、載っちゃったもんね。」


 セレブリティ、碌なことないな。


 その後はまた中層階で狩りをしまくり、翌朝も狩りをしながらダンジョンから出て支部に戻った。


「ハイクラスか……。」


「コッティラーノにハイクラスダンジョンってなかったんですか?」


「第三がミドルクラスなくらいだ。あそこも中の中って感じだしな。」


 ゴズさんも頭を抱えてる。一応、Bランクパーティの中でもアテはあるらしいが。ジンさんもその事に触れる。


「昇格の見込みがありそうなパーティは二組いるが、まだまだだね。」


「でもウィンドー隊は手堅い仕事しかしてないだけだろ。彼ら慎重過ぎるよ。もう少し下を経験させてやればすぐ昇格出来るんじゃないか?」


「二か月で行くか?」


 ゴズさんは不安要素が多いと言う。一組はキョウちゃんのいるパーティだ。キョウちゃんもわたしが旅に出てる間に個人ランクがBランクに昇格した。逆を言えば、Bランクになったばかりの冒険者がいる、ということ。それはもう一つのパーティにも同じことが言える。そちらに至っては個人ランクがCのメンバーもいる。


 一言で言えば〝パーティとして未熟〟ということだ。


「行かせるしかないよ。コノ出身だし、ここを離れる希望はまず出さない。一番いい。」


「後はアレか。年間目標額。」


「そこは心配してない。ショウコが頑張ってくれればいいんだからね。ね?」


 マッタさん。見たことない笑顔を向けないで欲しい。とても威圧感のある笑みだ。


「頼んだよ、スーパールーキー。」


 わたし、まだルーキーなんですかね?


「ハイクラスか……。」


 ダンジョン連泊したので今週はもう休みにすると言ったら泊まりに来いと言われたので領司館に来ている。明日もバルトは仕事だけど、わたしはわたしで佐山くんの手伝いをすることになった。漢検一級といえど、依頼に合わせた文言を考えるのは大変らしい。


「領都防衛に予算を割かねばな。」


「兵士を増やすってこと?」


「それもあるが、スタンピードの際に籠城出来るように備蓄を増やしたりだな。」


「他も周って思いましたけど、第一ってすごい街に近いですよね。」


「コッティラーノ第一はずっとロークラスで歴史も古い。そろそろ死にダンジョンになると推測されていたからね。だからこそ、コノに領都を置いたんだ。」


 第一は絶対安全だと思われていたってことだな。他の領はどこのダンジョンも領都からそこそこ距離があった。支部は本当に事務手続きする場所というところもある。


「死ぬどころか復活したよ。」


「困ったことにな。クロ、おいで。」


「にゃにゃっ。」


 バルト、また忙しくなるのかな。領司様も大変だ。


「戦力的にはどうなんです?」


「はっきり言ってしまえば、私がいればどうにかなる。普通は領司が前へ出るなんてことはないんだけどね。だが私も任期がある。いずれは首都に戻されるだろう。」


「あ……。」


 そうか。領司の任期は最長でも十年。バルトの任期が終わったら、わたし、どうしよう。


「私はコッティラーノ領司任期満了になったら官吏を辞めようと思ってる。」


「え、なんで。」


「ショウコはコノにいたいんだろ?私が官吏を続けるならどうしても首都に戻らなきゃならない。」


「そんな……わたしに合わせてくれなくても」


「いいんだ。色々と考えた結果だ。」


「その色々と考えてることを教えて欲しかったんだけど。」


「仕事は生きていく糧さえ稼げればいい。資産なら既にあるし、冒険者になってもいい。官吏はやりがいはあるが、元々特に思い入れがあるわけでもない。何となく、父や兄と同じ仕事を選んだだけだ。出来れば……。」


「出来れば?」


「ショウコと共に過ごす時間を優先したい。何度考えても、そこに行き着くんだ。領司を引き受けた以上、私は責任を果たす。責任を果たしたら、辞める。それが一番、タイミングがいい。」


 結婚、したいってことだよな。


〝誰といても独りぼっちなんて寂しいじゃないか〟


 コートさんの言葉が頭に響く夜だった。

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