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ダンジョンは危険がいっぱいだけど、全部スルーしていきます  作者: 里和ささみ


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第二ダンジョン(1)

 モーギュ家を訪ねてから二日後。ダンジョンの更新が本格的になり、漏れ出たモンスターの掃討戦が行われた。三日で終了。コノに残留する冒険者で残党狩りをするそうだ。予定通りというゴズさんの言葉通りになった。

 更新自体はどうやら前例と比べると長期に及びそうなので、乗り合い馬車ではなく大型馬車をチャーターしてギルド所属の冒険者と共に移動することになった。みんなはダンジョン近くの宿泊所に泊まるというのでわたしもそうしたいと言うと、家族が来訪者に会いたがってるからと予定通りミルックの実家に泊めてもらうことになった。パンダ扱いだな。

 モーギュ家も一緒に移動している。人が多いから子ども上二人も飽きずに楽しそう。小さなヨーグくんはちょっと辛いかな。上が下の面倒を見るが当たり前の社会なので、子どもの興奮した高い声にもみんな不快感もなく過ごしている。わたし、ダメだな。ちょっと苦手だ。


「ショウコ、眠かったら寝てていいぞ。」


「そーだよ、無理しないで!」


 いや、寝らんないよ。さっき寝落ちしそうになったところにウシーくんに突撃されたし。


「まだ平気だから。」


 良くも悪くも誤魔化すことには慣れている。隣にはウロウロするのに飽きてわたしにびったりくっついて指編みでマフラーを作るモウシーちゃんがいる。わたしのために作ってくれているらしい。黒髪に合う色を考えても思い浮かばず、結局自分の好きな色を選んだみたい。桜の花びらのように薄いピンクだった。ピンクのマフラーは年齢的にキツイ気もするが、野暮なことは言わないでおこう。時々首に巻き付けられて長さを確認されるのもまた眠りの妨げだが。そんなちょくちょく試しても変わらないよという言葉は飲み込んだ。


「ショウコは黒髪だけど、ショウコのいたところは黒髪の人しかいないの?」


 ハナちゃんの彼氏が水を向けてくれたので、大人の会話に戻ることにした。


「わたしのいた国はね。他の国にはここと同じ茶髪や金髪もいたよ。」


「ショウコの国はみんな黒かったってこと?」


「そうでない人もいるけど純粋な日本人は大体黒いね。」


「黒髪っていうとマ総統だよなー。」


「マ総統は魔族じゃん。違う世界なんでしょ?」


「あー、わたしと同じ世界から来たのは佐山由紀人だけだよ。多分だけど。」


 他の国の名前なんて見たって分かんないし。


 ゴンという大きな音がした。なんだ?


「え?」


 みんな仰け反ってる。誰かが頭ぶつけた音か。


「サヤマ・ユキヒトって…….ユキヒト・サヤマ?」


「そのまんまだろ。姓が先に来る文化圏なんだから。」


 ハナちゃん、彼氏にツッコまれてるけど呆けたまんま。


「人も国もスキルも違うんだ。怯えるこたぁねえよ。」


 あ、そういうこと。わたしのスキルは他害出来る能力じゃないからな。


「ごめんね、ショウコ。」


「いいよ。気にしてない。」


 その後は何となく気まずくなって、話の分からない子どもの声だけが村に着くまで響いていた。


 馬車はそのままダンジョンへ向かうので、わたしたちは手前の村で降ろしてもらった。

 わたしは村を上げての歓待を受け、馬車の中との温度差に寒気を感じた。これからは佐山氏と同郷ってあんまり言わない方がいいな。


「また帰りにお世話になります。」


「ええ、がんばってね!」


「気をつけてな。」


 ミルックのご両親はとても良い人だった。ミルックと同い年ということで、実家だと思ってくれていい、これからも第二に来る時は泊まってと言ってくれた。おじいさんもおばあさんも兄弟もその奥さんや子どもたちも、ミルックの家族はあったかい。ゴズさん、見る目あるな。わたしと大違いだ。


 馬を借りてダンジョンまで向かう。乗馬も訓練に入っていた。全力疾走させてあげることは出来ないが軽く駆けることは出来る。山道ではあるけど道路が整備されているのでそこまで難しくはなかった。


「ここだ。」


「おお。」


 馬屋に馬たちを預け、待ち合わせをしている第二ダンジョンの入口まで歩く。ここに常駐している冒険者もいるので、そういう人たちからの視線を感じた。


「来た来たー!おはよー!」


 ハナちゃんは昨日のことなどなかったかのように朝から元気だ。こういうところがこの子のいいところだと思う。


「お昼ごはん楽しみだなぁ!」


「もう昼メシかよ。」


「だってショウコの料理美味しいんだもん!」


 必要に駆られて身についたスキルだが、意外なところで役に立った。料理を仕込んでくれたおばあちゃんに心の中で感謝する。あの頃はおじいちゃんが入院しておばあちゃんひとりで大変だったからな。


「もういっそ調理台入れときなよ!その中、何でも入るでしょ?」


「贅沢に慣れたらダメだ。すぐに心が折れるようになるぞ。」


 ゴズさん、厳しめだな。どんな状況がやってくるか分からないのがダンジョンだ。便利になれるとそれがなくなった時に大変な思いをすると言われた。マジックバッグの紛失とかね。わたしのは厳重な保護がかけてあるからモンスターに踏まれても爪を立てられても壊れはしないそうだけど。なので、装備の中にも携帯用食料を仕込んでるし、飲み水も水筒に入れている。


 第二ダンジョンの中は第一と確かに似ている。通路が若干狭いな。天井も低い。第一が初心者向きというのはこういうことか。狭いと戦いにくい。定番スライムを始め、低ランクモンスターがわらわらと出てくる。出現率は第一より高いし群れで出てくる。本来はこれが普通らしい。同行者が多いので私はまだスキルを使わず、なるべくエンカウントしたモンスターを一匹は自力で倒すことにしている。


「大分慣れて来たな。」


「はい。」


「息も上がってないし、悪くない。お前ら!このままのペースで行くぞ!」


 わたしに合わせて歩いてるのでかなりゆっくり目ではあるが、みんな付き合ってくれている。その分、ゴズさんがじっくり指導してるけど。


 昼食はサッと済ませた。ダンジョンにいるときはみんな大体簡単な物で終わらせてるそうだ。マジックバッグからそれぞれ持参した弁当を食べている。これは宿泊所の人が用意してくれた物。わたしとゴズさんはミルックとミルックのお母さんが作ってくれた弁当だ。それに寮で作っておいた瓶詰めのおかずを追加する。一人だけで食べるのは悪いので人数分用意した。もちろん、ハナちゃんたちにも手伝ってもらって作ったものだ。


「うまいっす、ショウコさん!」


 最年少マッチ・ボウくんがいい笑顔で褒めてくれた。みんな若いから食いっぷりいいな。


「マッチ、食べんの早っ!」


「だってうめーもん。ハナのメシと違って。」


「それは言えてる。」


「あ!トーイひどーい!」


「ショウコにちゃんと料理習っとけよ?花嫁修行として。」


「えっ!?」


 急にラブっぽい雰囲気になったな。まだ先の話だぜ?とハナちゃんの彼氏、トーイレット・ペイパくん、通称トーイくんが照れ笑いしながら言った。君はあのドクズみたいな男になるなよ。


「若ぇな。」


「ですね。」


 わたしとゴズさんの遠い目はそれぞれ違うものが見えてる気がするが、若さに当てられたことには違いない。二人の未来に幸あれ。

トーイレット・ペイパ(18)

ハナちゃんの彼氏

パーティのリーダー

おっぱい星人

庶民には珍しいスキル二個持ちの冒険者ギルドコッティラーノ支部の若きエース

ただし、パーティとしての成績はハナちゃんとマッチに足を引っ張られている


マッチ・ボウ(15)

成人したてのルーキー冒険者

お調子者

ゴズと同じ一撃必殺スキル持ち

気配と空気を読むのが苦手

万年彼女募集中

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