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冒険者になろう(10)

「フッ!」


 キョウちゃんは息を吐き出すと共にスキル〝俊足〟を使ってコボルトに急接近。そのまま長剣を抜き、袈裟斬りにした。筋力は女の子だからか、真っ二つとまではいかない。鍛えてるけどね、ちゃんと。風呂で見た。


「ハッ!」


 二太刀目は突きで人間で言う心臓部に剣を突き立てた。ズッという重めの音と共に剣を引き抜く。前のめりに倒れたコボルトの耳を切り落とした。鼻につく血と独特な内臓の匂い。日本では非日常の世界。余りに惨く、思わず顔を顰めてしまう。


「こんな感じ。慣れりゃどってことないよ。」


 人型ではあるがモンスターだという認識なので、不快感はあるが嘔気までは出なかった。顔も犬だし。肌も青いし。ゴブリンと同系だけど、ゴブリンと呼ばれている方は顔も人っぽい。図鑑で見た。そっちはよくあるイメージ通り緑色だったな。というか、カーキ?


「ショウコ、眠気は?」


「大丈夫です。」


 最近は八時起床、二時に眠気が来て四時まで昼寝。四時から八時までは起きてられる。起床時間は日々変化して、十一時から二時まで昼寝してたのが二時から四時になった。ゴズさんには申し訳ないが、二時から四時はギルドの仮眠室を借り、四時から五時半までは座学をやってもらってる。

 今日は九時の便の馬車に乗り、十時に到着し、十時半にダンジョンに入った。歩き出してまだ一時間も経ってない。帰りの馬車では爆睡する予定。


「ヨシ。じゃ、予定通り進むか。」


 その後の一時間はコボルト二体、ゴブリン一体、スライムたくさんと遭遇。途中、それまでなかった抜け道を複数発見。そろそろダンジョンの大幅な更新時期が来てるのかもしれないとのこと。スライムはともかくコボルトやゴブリンが群れで移動していないのが根拠となる。ヤツらは弱いが故に常に群れを作る。

 長けりゃ数年、早けりゃ数か月で更新があり、一週間から一か月はそのダンジョンが不安定な状態になるので中には入れないらしい。そういう時は他のダンジョンに行ったり、更新に合わせて再吸収されるのを逃れたい生きたモンスターが外に出て来たりするのでその討伐に向かう。再吸収は胃液で消化するみたいに生きとし生けるものも一気に溶かすので、屍肉でなくとも栄養にされてしまう。


「次回は別のトコに行ってみっか。」


「お供します!」


 キョウちゃん、また着いてくんのか。まあ、いいけどさ。


「ショウコが十二時間起きてられるようになったら泊まりがけで行くけど……」


「その時もお供します!」


「お前のメシは食いたくねえな。」


「あ、それはわたしがやりますんで。」


「よろしくお願いします!」


 わたしにまで敬語になった。相当苦手なんだな。


「異世界メシかぁ!いいな!」


 あんま変わんないと思うけど。味は薄めか。二人はわたしより汗かくから少し味を濃いめにするように心がけよう。塩分気になるなら食べる量減らせばいいし。それまでにマジックバッグが届いてりゃいいな。


「ショウコ。期待してる。」


「不味かったらごめんね。」


 そんな会話をしていたら、見るからに不味そうな色のトロールが出て来た。ゲームよろしくデカイだけの愚鈍なモンスターなので、速攻で惨殺死体となる。一つ目(モノアイ)ってリアルで見るとキモさ倍増だわ。


「なんか全然平気そうだね?」


「そう?普通にキモいなって思ってるよ。」


「おハナなんて最初の頃ゲーゲー吐いて大変だったよ。今は嬉々としてモンスターバッキバキに折り畳んでるけど。」


 バッキバキに折り畳まれたモンスターに心の中で合掌。ハナちゃん、可愛い顔して案外エグい。


「まあ、迂闊だから見誤ってよく怪我するんだけどね。ちゃんとトドメ刺せって何度言ってもダメなのよ、あの子。たまに見かけるとパーティの子たちにも怒られてる。いつになったら治るんだか。」


 確かにそういうところあるね。せっかちなんだよ。料理がヘタだった原因もそれだわ。


 ハナちゃんは怪我療養の為に一時離脱したキョウちゃんのパーティのパワー系ポジションを補充するために新人一年目にスカウトされて一年くらい一緒に活動していたそうだ。今は同世代でパーティ作ってる。男三人、女二人。みんな十代。若いわ。


「ショウコ。次にスライム出たらお前やってみるか?」


「殺ってみます。」


 わたしのヘボい筋肉では長剣を持てない。クソ重い。普通の槍は低層階に行くことを期待されているわたしには恐らく邪魔になる。人ひとり通るのがやっとの場所もあるから。なので、護身用としてダガーと短槍を持つことにした。ダガーは殺傷能力はあるが、私にとっては解体用と言われた。低層階だと解体するのも一苦労なモンスターばかりだし、持っていても無意味な気もする。

 わたしは飽くまでトレジャーハンターを目指しているので、みんなみたいにモンスターを討伐するつもりはない。(わたし)が何処にいるか分からなくて闇雲に攻撃されても敵わないし。まあ、レベル10以上なら当たんないけど。そもそも相手が無防備でもボスクラスのモンスターにトドメ刺せる自信がないわ。


 というわけで、スライムが出て来たので短槍でグサリ。表面の膜を破ればビシャッと音を立てて潰れる。


「カンタンだろ?スライムは倒してもポイントにはならんし、いちいち相手にすんのもめんどくせぇとは思うが、遭遇したら必ず討伐しろ。高層階でもスライムが合体して大型に変化したことあったからな。規定にゃなってないが、ダンジョンに潜る冒険者の暗黙のルールだ。無視出来りゃ一番だが、小蝿みたいに沸いてくると煩わしいからな。みんなで数を減らしていこうってワケだ。」


「分かりました。」


「んじゃ、この後はスライムはショウコに任せる。他のはキョウが倒せ。」


「はい。」

「ご指導お願いします!」


 お前の分の金はもらってねえんだけどな〜と言いながら、キョウちゃんの戦い方にアドバイスするゴズさんはお人好しだ。引き合いにキントーさんが出てくる辺り、仲間を尊敬してるんだろう。


 キントーさん、惜しい人をなくしたよ。死んでないけど。

ハナ・ガーミン(17)

祥子さんについて料理修行中

スキル〝怪力〟

小柄なのに大食漢 栄養が胸に行くタイプ

E65 まだ成長中

せっかちでおっちょこちょいでちゃっかりさん

同じパーティのトーイレット・ペイパ(18)と交際中

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