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▼1000階 悪魔のネムル燃え尽きぬ鎌▼



ここに置かれた燭台に石を持って突っ込めばカギになる技を習得できる……。


美玲は攻略情報通りに古びた大きな燭台のひとつそのいつまでも燃え尽きぬ炎に石を握りしめた右腕を突っ込んだ。


一人静かに────目を閉じる────石のレーダーの宇宙的平面感覚それに似たものを頭の中に展開しつつ────────


ただの火じゃないみたいだこれは……誰かの火……? この塔の……ココロの火?

なんかそんな気がする……。


いつまでも、あたたかい────────



よし。ありがとう。

ってこれ……。



たしかに似た……石の技をひとつ習得した感覚が、脳内で、まだ熱い石を握った手の中で、


その技を使う絵がハッキリと浮かぶ、この熱い石をどう使うかがわかる。

既に何度も知っている……。だが、決定的な違いは分かる。



そんな感覚に一人突っ立ち入りびたる青年の元へと、

黒のライダースーツでキメた、自慢の長い黒髪もさっぱりと塔に臨んでからはショートにした、

大人が一人先行してゆっくり近づいていった。


「また可笑しな儀式をしているな。本当にヤルんだな美玲?」


「あぁ、俺は父さんを信じる。必ず習得してみせる」


ぶわり、持っていた石を消しケイコの方へと黒い瞳は向いている。

そのこちらを見ていてもどこか先を見ている青年の表情にケイコはニヤリと笑った。


「フッ盲目的だな、初めての大物をみんなに我慢を強いてまで自分だけが強くなりたいのか? その奇妙な話をイチマイの紙ごしにするそれもことごとく不気味にも当てるヤツ可黒零児はやはり信用できないと言わざるを得ないぞ、その内破滅にも」


そんなどこかニタニタとしながら発するいつもの調子の警部を見て、話途中に美玲は釣られて笑い返した。


「ここまで来て破滅とか奇妙かどうかなんてどうでもいいさ、俺はオカルト探偵部で父さんはずっと俺の俺たちの見知らぬところで戦ってきたんだろう。当ててくれて構わない、知っていてくれて構わない、もったいぶらず教えてくれて構わない!!! いつまでも俺にネムっているだけのオカルトなら不気味でも正解があった方が断然いい! 断然まだまだ強くなれる! だからケイコさん、みんな、これは俺の獲物だ一切手を出さないでくれ!!!」


そして強く、可黒美玲の瞳はみんなをケイコ警部の目を見返して、その発言に見合う強いイシを己の瞳に宿して────。


古びた燭台の火に照らされた女性陣各々の顔は、各々のワラう表情で────。


「フッふふふ。やはりお前は私と塗るイロが逆のようだな」


「可黒、もちろんお前の鍛錬私が宴陣学園のセンパイとして一人の剣士として見届けさせてもらうぞ……!」


「可黒くんが決めたことならそれがイチバンいい、先生も皆もそれを望んでいるから、うん!」


「勝手にそう言われましてもね。マァ、わざわざヤル気ある者の成長の機会を奪うのはたしかに非効率ですわね、1年B組の副委員長として可黒美玲失敗は許しませんわよ!」


「王子ぃぃぃ!!! わたしの事なんて気にせずやっちゃってくださいデス!!! 特大じゃないぽいんとですよ!!!」




ハッキリと告げた彼のやり方を彼の意思を根っこから否定する者はいなかった。

好意的な返事、好意的な表情、今の可黒美玲に向けられているものだ。


青年はぐっとソレを噛み締めた、握りしめた。



「あぁ、────行って来る!」





ミジュクセカイの塔1000階、入り口の先へと、暗がりの先へと、

燃え尽きぬ火に照らされた青年の面とやがて見えてきた一対の死神の鎌と、



大きな一匹の黒紫色の蟷螂と。



接敵。



鎌をもたげる、おどろおどろしい不快な鳴き声を発した虫型モンスターが鋭くその武器を振り下ろす前に。

ぶちあたった紅い8の石。


「【クロスガン】! じゃなくて……【サン弾】!!」


高速で達した燃える石は、エビルデス蟷螂の電子体を傷付けなおも怯まない鎌は振り下ろされた。


ガーーンと鋭い鎌の1セット二撃が石床を刺さり砕き割る。


反応はよし、更に避けているその間にも使い慣れた技炎を纏いパワーアップした技【サン弾】の連射が蟷螂の硬い黒紫の外殻に突き刺さる。


ぽつぽつとカラダから白煙を上げる化物ボスと、着地し無刀。

剣の代わりに拳を構える真剣な表情だが手応えと状況にワラう、可黒美玲。



「もえる石だと……か、かぐろ」


「剣士としてというより、可黒美玲ですわね、ふふ」


「石なのか玉なのか、まったく奇想天外な……親子だな、フッ」


武器を仕舞った仲間たちは遠目から彼の戦いを見守る。

彼の挑戦は、

ミジュクセカイの塔1000階ボスである塔の門番決して弱くはない幾人ものプレイヤー達を返り討ちにしてきたエビルデス蟷螂を【石】だけで倒すという無理難題の縛り。


しかしこの電子のセカイに生きる可黒美玲の強さは、すでに、



「サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾サン弾────」



未知の領域、システムを超えた未知の石捌き。

メラメラと赤熱した石の雨が、巨大蟷螂を蜂の巣にしそのダメージは加速していく。

血となり肉となった技は失敗しない。

これまでの並々ならぬ敵との戦闘経験は無駄じゃない。

幾度も刻もうとする鋭い鎌の縄跳びを越えて、この鍛錬挑戦を越えていく!






▼▼▼

▽▽▽






▼1001階 野原をゆく王獣と猛獣▼



ひらいた左手は狙いをつけるために前に、


左足をまえに半身に、


後ろに溜めた最強のエメラルドはバチバチと紅く熱帯びる。



のどかな野原に会敵した猛獣グランドチーターナイトの群れと、

聳え立つ王獣デスラヴキリンホワイト。


ビビビビブブブビー、合図の効果音。限界まで溜めたモノを前に全力で突き放った。



「【クリティカルショットオオオオッ】!!!」



あまりにも鋭いチャージし放たれた特大炎熱線は兜鎧を纏った彼に接近したチーターの小隊を呑み込み勢いそのままに白い巨大キリンのクビをマルマルと斬り裂き、

その直線軌道上の敵を貫き遠くまでを一瞬にて焼き払った。




「吹っ切れたような炎だ、フフ、気持ちがいい」


「鍛錬か……これが蒼月にはない炎! それだけじゃない可黒の……ッ美玲の極め鍛えた炎!」


「うん!! びゅっと伸びて素直でいい炎」


「やれやれですわね……ここにきてからトバシすぎですわ」


「ひゅえっ王子ぃ!? じゃない過ぎます!?」



青い空の下の、のどかなはずの野原は紅く激しく貫き染め上げた衝撃的なイチゲキが舞った。

仲間メンバーたちはその可黒美玲の習得した新たな炎に期待以上に心震わせた。

その新たなチカラが目に焼き付いたのは技を自ら放ったこの青年も同じ。


底無しに吐き出し切った彼の炎に彼は最強のエメラルドの切っ先を見つめて笑った。


「あぁ、これが俺ッ、可黒美玲バージョン2か父さん!!! はははは!!!」


清々しい青空に似合う白煙のぼるエメラルドハルバード────────





ついに習得した【クリティカルショット】。


近中遠スベテの戦闘レンジにおいて可黒美玲の最強技であるこの技。

チャージしなくてもその威力は絶大である。


可黒美玲が可黒美玲たる所以の技。


隠し技である、なくても強い、だがあればもっと可黒美玲は強い。

可黒美玲バージョン2ともファンには呼ばれている並々ならぬ縛り石蟷螂の儀式を無事突破した真の可黒美玲の姿。


これほどの炎を技としてチカラとしてフツウに撃てる彼が、

この世界でフツウじゃない学生の彼が、

正体不明の死神マリカスに次ぐ脅威であるのは明らかである。


それが古井戸のバケモノ、可黒美玲。

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