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53/89

51⑫

エリアA。ケイコ警部が石の罠を張るように言いつけたのは全て9階建てのマンションだった。


マンション3階から落ちても人は助かる可能性の方が高く、4階、5階、6階ならば死の確率は上がっていく。


転落死体が最も多かったのは9階建て。それは犯人にとって丁度いい高さ、またはなんらかの面白いゲン担ぎであるとケイコ警部は目をつけ、そこに的を絞った。


更に確認されているのは最初の8歳の子供の転落事故以外はいずれも男女問わず成人。女性に至っては確認可能なその件数は少なく容姿の良い者を事前に下調べしているものだと刑事の勘、彼女のアイドルファンとしての勘は告げていた。


5階建て、10階建て、14階建て。建築基準法と消防法による規制により日本ではこれらのギリギリの高さを攻めたマンションが比較的多く。9階建てはさほど多くはない。古井戸町内にあるまだ狙われていない9階建てマンション、そのエリアAで。




「なんなんだコイツは!!」


「なんなんだこのガキ」


「ただのチンピラがなんでそんな!」


「俺様をまたチンピラ呼ばわり」


「サン弾!!」


「チッまたソレか」


改造鉈を振り回してきた敵の接近戦を改造した鍋のフタで火花を散らしながらいなす可黒美玲は、華麗な足運びとシールドバッシュで敵の体勢を崩し距離を取り。


すぐさま鍋のフタは電子の荷へと仕舞われる。


隙を見て【サン弾】の技を放ち敵の回避行動を間に合わせない。出どころの読みづらい弾速の速い範囲攻撃、サン弾につかまったネズミフード。


可黒美玲は着実にチンピラ男にダメージを負わせていた。



「ッてぇな……おい石投げ小僧。お前の妙な動きただ者じゃないな」


「ミレー!」


「下がっていつも通り隙を狙え子春! コイツは頭と動きがおかしい! 付き合いきれないと斬られるだけだ」


「うんわかったミレー!」


子春は美玲の命令通りに従っている。既にバトル開始早々その男に仕掛けたが拳は空を切り鉈で斬り返され返り討ちにあってしまい、これ以上安易な仕掛けで体力を無駄にするわけにはいかなかったからである。

美玲の表情もいつもの怪異退治とは違い真剣そのもので子春もそれを分かっていた。


「対人で踊るか発想自体は悪くないな、そのステップもオリジナルか? その歳でどこにもない型に石と鍋のフタが武器? 俺様が頭おかしい呼ばわりならお前はクレイジーだろガキ」


「はあ? 俺はオカルト探偵部でフツウだあんたこそ意味不明な動きばっか狐かよ!」


「ククその通り俺の今の師範は人間じゃない狐だ。よく騙されずについて来れるな。そこのメスガキより才能あるぜお前」


「何の才能だよボケ!」


「戦ってみて分かった。お前みたいな戦うために生まれたガキは決して表では生きれない」


「分かるわけないだろ! ぶつぶつと頭のおかしいチンピラ!」


「殺しすぎた俺には分かるのよ。ただ殺すだけじゃもうモヤモヤしかしねぇ、だが分かってから殺せばスッキリティータイムだ!」


「やっぱ頭おかしいだろあんた!」


「そりゃ分かる前に魚屋行きのヤツしかいねぇからだろガキ、この頭も性格も生活も究極的に俺のせいじゃねぇ」


「化かしてばっかかよ! 自分でも何言ってるかわかんねぇだろオマエ! 魚屋、ウオヤって! 何か知らねえけど現代人JK的に言いたいだけだろ! このウオヤ馬鹿!!」


「クク化けてるのはお互いだろクレイジーが! だが……お前の弱点は分かった」


「石ならまだまだあるぞウオヤ!」


「下手な駆け引きまでしやがってガキのくせに」


子春を無視し再び美玲に仕掛けてきたネズミフード。美玲が今まで見たこともない妙な動きでゆらり揺れ動きながら走り石のマシンガンを掻い潜り、長い刀身の鉈は迫る。



「【狐】【狐】【狐】」


しなるような、鞭のような、尾のようなよく分からない斬撃が美玲に襲い掛かる。

右手に革のベルトで固定された鍋のフタはその化かしに食らいつき。


「これっ、はッ、なんなんだよ!!」


右手で勢いよく鉈の腕を払い飛ばした、瞬間。



「【猫】」


ネズミパーカーがしなるように伸ばした手、猫パンチのように素速い一刺が可黒美玲の開いた右肩を貫いた。




「石は上手だが盾の方は俺様にはそこまでだ」







「お前も気付いていたか技を編み出しているようだが俺は高校生か? お前ぐらいの歳で7つの技を作り出したまさに裏のバトルマニアってヤツだ。チンピラかと思ってくれたようだが生まれも環境もそのエリ」


「いってええ……」



【猫】の一刺をもらった後、接近戦には付き合ってられないと石を投げつつ距離を取った可黒美玲。苦痛の表情で右肩をぐるりと回し。


「鉈で斬られてイテェで済むかよガキどもが」


「散弾って言ったな。ひとつ教えてやろう俺がさっき見せたヤツのような技には使用限度がある。お前のその技が無限に使えないことは分かっている」


「石はまだあるっての!」


石を電子の荷から取り出しこれみよがしに手の上で軽く跳ねさせた。

敵の強さは未知数、実力は極めて高い……下手に仕掛けはしない可黒美玲。


「下手な駆け引きはよせ。石の問題じゃない、お前の得意武器のつもりのようだが」


ネズミ色のパーカーは不意に、鉈をどこかへ仕舞い。ソレは美玲を真似て踊るように投げ放たれた。


「手裏剣!?」


バラバラと、迫る鉄。美玲は慌てて鍋のフタを構えたが予想外の飛び道具が黒ジャージに突き刺さる。弾く音と肉に刺さる鋭さ、苦痛が伝い流れる。


「それが出来るのはお前だけじゃない。殺し過ぎたヤツならいずれその引き出しに気付く」


「石は両腕が使えない俺には合わなかったがな、ソレも俺様は既に試している、牽制目的ならまだしもそいつを器用にもメイン武器にする馬鹿がいるとは思わなかったがな」


「ハァハァ……さっきからよくしゃべり過ぎだろあんた」


可黒美玲のダメージは重なり。まだ戦えるが読めないネズミパーカーの攻撃を耐え凌ぐのにいつもの戦闘より余計な体力を使っていた。このままでは非常に危ないと分かる。

これっぽっちも出し惜しみの出来る相手じゃない……。


「そりゃしゃべる前に魚屋行きになるヤツしかいねぇからな、おかげで俺様はこの有様だ」


「どの有様だよ……!」


「ククさてもういいか。石と鍋のフタ、そいつは面白かったが対人向けじゃない。それに戦った俺様にはお前よりお前の事が分かる。石はお前に合った武器とは言えない、もう気付いているだろほんとは? 石でその強さなら自分に合う武器、例えば剣のひとつでも鍛えておくべきだったな面白いガキ」


「……充電って知ってるか」


「後ろで技を溜めてるヤツのことか。そいつはソロの俺様にはなかった必要なかった発想だがわざわざ食らってやる趣味もねえよヒーローごっこじゃないんだ」


「オルゴナイトって石を知っているか!!」


「ハァ? ははははこれ以上知ると情が湧くかもしれねぇじゃあな魚屋行きだ」


「ロックオン!!」



「だと?」


「ッフグッ!?」


男の右脇腹に猛スピードで突き刺さった意識外のイチゲキ。


石だ。


「サン弾!!」


更にここぞ、サン弾の連射32の石。出し惜しみはない一気呵成。


「【孔雀】【孔雀】【孔雀】!!」


突き刺さる石の技の雨に、男はオリジナルの剣筋で鉈で半円を描くようにその剣の残像が不思議にも石を弾き防いでいく。


「あんたネガティブ過ぎたぜ、行けサヤカアヤカノドカ!!!!」


サン弾は防がれても構わない。ここは俺の宇宙的感覚テリトリー。


「ンナ防がせただと!!」


更に3方からネズミパーカーに飛び迫った石のミサイル。


裏のバトルマニアは2つに反応し避けたが、ノドカが汚い金髪の顔面に見事突き刺さった。


「【オーラ張り手】!!!!」


この隙を逃すヒーローはいない、黒ジャージが作った好機に白ジャージは男の土手っ腹にぶち込んだ。

相撲では反則グーパンチがめり込み、青いパーの特大オーラが敵を盛大にぶっ飛ばしていった。

 

「これが私の技だよ!!」


これ見よがしに充電されていた子春の技オーラ張り手、そして秘かに戦場のネガティブエネルギーを充電していた美玲の石のレーダー兼石のミサイルによる、オカルト探偵部の連携技が厄介な裏のバトルマニアの戦い方を上回った。

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