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ミジュクセカイの塔4000階、真の1位を手にし太陽の下熱砂のレース道に現れスタートを切った新たなモンスターたち。


七枝刀から放たれた黄月色の枝は伸び、敵陣を花々しい景色で覆い尽くした。


サムのリミットメルト技によりメタリックなボディー、硬い装甲にオールデバフがかかり攻撃、防御、俊敏性が下がり敵のステータスが弱体化した。父親の指示通りに獲物にデバフがかかり父親パーティーはレース道を逆走しながら新手に対し総攻撃を仕掛けた。


水の魔法と炎の剣刃が入り乱れ素早く動くレアモンスターを殲滅していく。逃げ惑う敵に対しお構いなしに巨大な炎球が辺りすべてを焼き尽くし。


金銀ノーマル各色のちくわモンスターたちは見事にすべて熱砂の地に葬られた。


今度こそ美しい刀白蜜は電子の荷へと仕舞われ。


「終わりですか王?」


「戦闘はしばらく終わりだな」


「ふぅ……フツウに戦うよりも疲れましたよこれ」


「ハハそうだな」

「じゃあ行くぞ」


「行く……? どこへ?」


「カレー屋」


「カレー屋!?」







ここでしか食べられないメニューがある。


それはカレーだ。


ミジュクセカイの塔4000階。このために来たと言っても過言ではない。


メニューはオリジナルカレーのみだ。


熱砂のレース道をゆるりと歩きながら辿り着いたスナネコたちの小さな屋台。赤い線模様の入った砂色布地の日除け屋根が異国の雰囲気を演出している。


財布を空にし爆走爆破した真の1位の特典は金と経験値をくれるちくわだけではないようだ。レース道にポンと生えてきたスナネコたちのカレー屋台。


ピンと立つさんかくの耳が愛らしいスナネコ店主と店員たち。白と赤チェック柄のカフィーヤを被り更に可愛さが倍増している。


「どうしたサム?」


「あの猫さんはなんなんでしょうか……」


「スナネコらしいぞ」


「スナネコ?」


「あー、日本にはいないもんな。最近は動物園にいるみたいだが」


「し、知りませんでした……猫さん知識で王に負けるのは不覚です……」


「負けるって大袈裟な。え……猫が好きなのか?」


「いえ、どっちかというと見ると少し鬱になってしまいます!」


「なんだそれ……!? 嫌いすぎだろ」


「うーん、でもでも職業柄珍しい猫さんを見ると猫さん特集の血が騒いでしまって!」


「そ、そうかぁー」


何の職業だよ……。まったく謎が多すぎて……いやマリカスが欲しがるぐらいだ猫を見ると鬱になる、何か繋がりが────。


そうこうやり取りをしている内に愛らしいスナネコ店員により運ばれて来た注文の品々。


「カメラと絵心がないのが悔やまれます!」


二足歩行するスナネコたちをギラギラとした黒い瞳でじっと見つめるサム。王からいただいていた紙を折り曲げメモ帳代わりにし鉛筆を手に取り謎の猫さん情報を書き込んでいく。


「女神スペシャルはまりょくUP、サムスペシャルは体力UP、カードスペシャルは防御力UPだ。よし、全員食らえ!!」



「ハイ王!! カレーなんて猫さんよりお久過ぎます!! あ、カレー特集も! イヤ、猫カレーさん特集!」


ご馳走を前にグルリと石の板は宙返りしご機嫌だ。


おーっ、とスプーンを掲げた女神石像。



比較的最近になり見つかった裏の技、砂漠レース真の1位。そのイカれハッチャけた特典の数々。


ラヴあスの攻略ではために貯めた成長のひまわりの種はここで全部使うのが鉄則だ。


というのは。


出てきたスナネコのオリジナルカレー。


じゃがいも、人参、玉ねぎ、豚肉。


オリジナルとのたまう割には具材はシンプルだ。


オリジナルカレーは成長のひまわりの種を消費することでしか注文できない金もちゃっかり取られるが先程金銀ちくわの群れを滅しておいたので金の方は安心だ。やつらを逃すとここでカレーを食う資金が無くなるので絶対に逃してはならないというわけだ。


普通に種を食らうより10倍の効果を期待できる、このカレーを食せば。


自己流のゲームの楽しみ方として、ゲームバランスが崩壊しそうな過度なドーピングはあまり好みじゃないんだが致し方ない。


出来る事はなんでもやらないとな。マリカスに対抗出来るのは剣よりカレーなのかもしれない……。



砂漠の上に敷かれた赤いマットに座りながら……どこかの文化なのだろうか、地べたでカレーを食うのは何気に初だ。手でいかなくていいのは助かるが。


「王、これサムスペシャルなんです?」


不思議そうは顔でこちらを見つめるサム、父親は何かと思い。


それぞれの容器に入ったカレーを見比べると。


「しまった!? どれがどのステータスアップカレーか分からねぇ!!」


成長のひまわりの種を消費し注文したスナネコのオリジナルカレーの品々は見た目が全てカレー色でどのステータスアップの種を使ったのか見分けのつかないものだった。


ゲームの外と中とのギャップによりミスを犯してしまった父親こと山田燕慈はすぐさま。


「まいいや、食えサム」


クールな渋い声でそう言った。


「あっさりデスね!? ……わかりました王」


女神石像は器用にスプーンを使いこなし楕円形の深い器に盛られたカレーを食していく。


「女神石像……器用だな。眠りすぎて人間の頃でも思い出したのか?」


ソレを食しながらうんうんと頷く女神石像。


「うんうん……ってマジかよ!?」


「メガミさんは人間だったんです!?」


女神石像は少し考え込み……さぁ? と両手を広げるジェスチャーをみせた。


元々人間だったとかまぁありそうではあるな……。ラヴあス完全版の女神ルートとサムルート同時進行なのかもしれん……。


「……よく分からないが……とりあえず今は、カレーを食べよう」


「……デスね!」


 

赤いマットの上に仲良く集まった一行は銀のスプーンを各々手に持ちオリジナルカレーを頬張った。




「「辛っ!!!!」」




ジリジリと肌を灼く太陽の下熱砂の上でレースはまだ続いている。オリジナルカレーという食のドーピングレースが。




輝く銀のスプーンを手に、10杯目のカレーは平らげられた。


「辛さには慣れた……! さぁここからだ!」


既に各々が腹を満たし父親の挑戦をパーティーが見守る形となっていた。この日のために仕上げてきていたこの男の鉄の胃袋の中に、延々と食され入っていく攻撃力の上がるオリジナルカレー。


「ところで王これ食べなくても持ち帰ればいいのでは?」


「サム甘いぞ、カレーは熱い内にだ。そんなズルができるわけ……」


物は試し、電子体になり芽生えた感覚で念じた父親。

その一瞬、オリジナルカレーは電子の荷へと仕舞われた。


「よし女神石像コーヒーにしよう! ……げぷ」







いつまでもジリジリと照りつける熱い太陽と広がる熱砂の海。

夜の訪れることのないこの砂漠のステージでまたも激しい爆炎の攻防が繰り広げられていた。


固められ形を成している二対の砂の巨大フリッパーは召喚された宝石のボールを弾く。それらは絶妙なコントロールで熱砂に立つ黒スーツへと連続で撃ち放たれた。


「【爆炎斬】【爆炎斬】【爆炎斬】【爆王斬】!!」


敵ボスモンスターの強力な飛び道具はタイミング良く炎の斬撃に斬られ相殺されていくが、付随の爆発を伴う宝石の爆撃はプレイヤーに徐々にダメージを重ねていった。


「ぐぴぴ……ハァっ! ゴリ押しもいいが……」


小高い山のように積もった砂を乗り越え。


石の板の上に乗ったピンク髪がポニーテールを激しく揺らしながら仕掛けた。


「サムスペシャルな一撃です!」


リミットメルトが解放され黄月色の枝が刺さりエナジーを吸い取り赤く花々しいアートがボスモンスター【サハラワニフリッパー】を包み不毛の地に咲き誇った。


そして作戦にはまだまだ続きがある。


更にピンク髪は砂の山を利用し射出されるように空に飛び上がった石の板から飛び降り敵の砂で出来た大きく長い鼻の上に乗り。


砂漠のワニはサムの【さくら斬り】と【よしだ斬り】で滅多斬られた。サハラワニフリッパーはデバフによる効果で桜色と吉田色に鈍く光り変色していく。


「王おおおお! やりましたーぁ!」


父親がカードと彼女に言い渡した作戦は成功した。多重のデバフを敵ボスモンスターの本体に与え準備は整った。


異物に気付いたのかその場に鎮座していた砂漠の巨大ワニは顎をバクバクと開け閉めしその勢いで鼻先で七枝刀を振り回していたサムは吹き飛ばされてしまった。


「あはははは! わわわッ!?」


上空へと舞い上がりやがて熱砂へと突き刺さる。

そして本体に近づいた異物サムは砂のフリッパーにピンボールのように弾かれていく。


「ぎゃああああああ」


更にクールタイムを終えた宝石の砲弾を撃ち放ち滅多斬りにされた分をやり返し始めたサハラワニフリッパー。


二度砂漠へと珍妙な格好で頭から突き刺さった彼女に容赦なく飛び迫る砲弾。


それをカバーするように盾役の石の板は彼女の前方へと間に合いご自慢の防御力で全てを受け止め役目を果たしていく。


「べっべっ……。うぅ口の中にじゃりつくゥ……」

「そしてイタさん、相変わらずの彼氏様力(かれしさまちから)です」


「よし十分だサム。行くぞ女神石像」


前衛の父親に守られていた女神石像はみずいろの巨大な魔法陣の構築に成功した。


発動されたのはアクアバイバイ∀。


押し寄せる大波がすべてを呑み込む。フリッパーに弾かれる宝石爆弾とお邪魔ギミックの4000階砂漠仕様の雑魚モンスターたちが天級魔法に滅されていく。


そしてその(かん)

この男も黙って見ている訳ではない。

水の大盾を利用し一気に対象に悟られず接近。

射線上に並んだターゲットに対しリミットメルトは解放される。


「成したぜ、斬波爆王斬!」


紅い斬撃エネルギーは猛スピードで飛び。父親唯一の炎の飛び道具が二対のフリッパーを貫く。

本体のデバフの影響を受けた、左右のフリッパーはほぼ同時に豪炎に両断され燃やされ消滅した。

すぐさま【サハラワニフリッパー】は、再生を試みる。緑のキラキラ粒子が右のフリッパーを復活させようとする。

が、粒子は霧散し消え右の砂フリッパーの再生は失敗した。


「フリッパーを同時に失った場合復活はしない。これがこのボス、サハラワニフリッパーのイカしたスタイリッシュ攻略法だ!」


まぁ、そんなことしなくてもこのパーティー戦力ならゴリ押しすれば勝てただろう。……けど、このゲーム世界。


「経験ってのは経験値だけじゃない」


ざざざっと、砂漠を走り駆け寄って来た立てた作戦のため別行動をしていたサムと石の板たち。


「王! これでもう吹っ飛ばされません?」


「あぁよくやってくれた」


「あはははわたしにしては上手くいきすぎました! あはは」


サムのデバフはやはり心強い。……マリカスもこの神にも通じそうなデバフが目当てか? NPCが知りもしない仕様を上手く運用出来るとは思えないが。それは舐め過ぎだろうか。


「よしあとはワニをしばくだけだ、炎神全開でやるぞ女神石像、カード、サム!」


フリッパーの再生に失敗し開いた口の塞がらない間の抜けたサハラワニフリッパーに対し父親パーティーによる、より一層元気の良い総攻撃が仕掛けられた。

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