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茶畑の上空をゆっくりと飛ぶ白いクリームと苺を基調としたカラフルな【巨大ショートケーキ戦艦:甘多(あまた)】から続々と地に降下してきたケーキを彩っていた敵影。


そのご自慢のスピードで茶畑を荒らし先行してターゲットへと迫り来た【オールドファッショナー】たち。


「もうドーナツ屋は閉店したろ! ここ最近」


さらに敵艦は大部隊を展開する。

戦艦の底にべったりと張り付いていた円形のお菓子は出撃した。

上空を犯し襲来してきた様々な種類のクッキーの編隊。


「タフなドーナツ屋は俺がヤる。サム、カードは女神石像を護衛してクッキー星人を砕け!」


「的確に分かりました王!!」


女神石像はうんうんと頷き、石の板はその場で宙返りしてみせた。







アクアスナイプでちまちまと厄介なチョコチップクッキーを砕き、特攻を仕掛けてくるバタークッキーを七枝刀は凪払った。


連携というよりは役割分担をきちっとこなし各々の能力を存分に発揮している3体のモンスターたち。



「あーもう! ソレやめてってええ」


厄介なチョコチップクッキーから垂れ流された黒い固体の雨が地へと打ち付ける。回避不可能な甘いバルカンに打たれ、


すぐさま石の板が傘となりパーティーに向けられ垂れ流されたチョコチップバルカンを防いだ。非常に頼もしい盾役はちっともダメージを受けていないようだ。


「ッッ……あれ? イタさんなんという彼氏様力(かれしさまチカラ)を!?」


突如、煎餅の里からおかきミサイルが発射された。

住処を荒らされた煎餅の里の住民も黙ってはいない。

乾燥させた薪のように積み上げられていた細長いタイプの海苔巻き煎餅はぼたぼた煎餅婆さんの指示により次々と空へと打ち上がっていった。

煎餅ミサイルは空を支配するクッキーを追尾し醤油味の爆発花火を咲かせ空を彩った。


三軍が入り乱れるカオスな状況が続く。







「やっぱり愚直に接近してくるタイプの方がマシだな」


焦げた小麦片が辺りに散らばり電子のセカイのもくずへと還っていった。


白蜜を仕舞う余裕はない。


現れた。前線で暴れる父親の撃退を命じられた新手、【チョコりんぐスプレーナー】。煎餅の里の土地をタイヤ痕で汚しながら爆走しターゲットに対し一直線だ。


「またドーナツ屋かよ!!」


地をゆく異物の接近に対し既に仕掛けていた【爆柱斬(ばくちゅうざん)】は起爆し大地から炎の柱がほとばしる。


が、空に伸びた炎の柱をものともせずへし折りながら【チョコりんぐスプレーナー】は車輪を回し父親に肉薄してきた。


「おいスーパーアーマー付きかよプレイヤー泣かせだな!! 敵のエース級か、よっと!」


ギリギリまで引き付け素早いステップを踏みカラフルな柄のドーナツタイヤの物理攻撃を華麗に回避してみせ、さらにすれ違いざまに乗車していた黄色いカスタード人形(ひとがた)に紅い斬撃を浴びせオマケの巨大な爆発花火がのどかな地に咲き誇った。


鮮やかなゲームプレイで初見の敵に対応してみせた父親こと山田燕慈。

 

「いいぞ最高にVRだ!! ハハ」


通り過ぎていく巨大ドーナツの車輪を見据えながらガチャリと白蜜を構え直し次に仕掛けてくるであろう敵エースの攻撃に対して備える。


「ん?」


大地を踏み締めた父親はそのスタイリッシュな革靴の底に違和感を感じソレを見つけた。

ちらばったカラフルなチョコスプレーマキビシが起爆し、ターゲットを巻き込みながら色鮮やかに爆発した。


「あがぁああ!! ────」


さらに小豆色の質量のハンマーがケーキ戦艦甘多から投げ捨てられ父親を襲った。

降下してきたキンキンに冷えた巨大な硬い小豆の和風アイスはその凄まじい威力で大地を砕き冷やす。

巨大戦艦は完全に父親をロックオンしているようだ。


カラフルなマキビシ爆弾と巨大質量小豆アイスハンマーによるただでは済まない大火力攻撃がその厄介なプレイヤー一点に集まった。


そんな甘いが甘くない威力の跡を。


巨大な炎球が幾度も繰り返すように咲き乱れた。

地に突き刺さった小豆色のアイスバーは狂った炎の連撃に溶かし尽くされ。むせかえるような甘ったるい蒸気の中その姿を現した黒いスーツ。



「……イてぇ!!!!」



回復アイテムは消費され敵のイカれた猛攻により大幅に失った体力を取り戻していく。空も大地も甘く支配していく巨大ショートケーキ戦艦:甘多、まだまだその巨体を彩る洋菓子はSOLD OUTとはいかないようだ。





「ふいぃ。まったく」


幾度もプレイヤーを轢き殺そうと躍起になっていた【チョコりんぐスプレーナー】は焼き払われ光の粒へと還っていった。


敵のエース洋菓子モンスターはそのスーパーアーマーで縦横無尽に大地を爆走するもチョコスプレーマキビシのギミックを黒スーツに完全に攻略されあえなく敗れた。


「さっさと合流した方が良さそうだ……。あのあずきアイスは頭がおかしすぎる」





「王ーー!!」


遠くから駆け寄ってきた父親に元気よく手を振っている女神石像とサムたち。


「おお予想以上だな、おっけーだ!」


空飛ぶ珍妙なクッキー編隊は女神石像、石の板、サムの働きによりあらかた砕かれ尽くされていた。


「ハイ! でなんでこちらに?」


「状況が変わった。4人である程度固まった方が対応しやすい防ぎ切れない危ない技がある」


「ほーほー、従うまでです!」


「前衛は俺で、カードは女神石像サムを乗せろ」


「りょうかいです!! って乗る!?」


石の板は地に対して並行に寝そべり2人をその身に乗せた。

フロートする石の板に乗りサムはその浮遊感に両手でバランスを取り驚いている。


「イタさんに不可能はないんですか!?」


「ないな、まな板にだけはしてやるなよ」


「ハイ……」


「……」

「つっても最悪ここを放棄して逃げるぞ」


「え、いいんですか王?」


「……すまん。クッキーも品切れのようだし飛び道具もあるにはあるがアイツを倒しきれるかは微妙だろうな」


「あ、なるほど……大丈夫です王! 今日のじゃないぽいんとノルマはもう大幅超えてますので!」


なんだよそのぽいんとは……誰が設けてくれた、余計なことを!

思いっきりサムの要らぬ原動力になってるじゃねぇか。


「そ、そうだな……俺の作戦ミスってことで次の階を目指して蹴散らすぞ、あとあずきアイスに気をつけろ。降ってくるぞ」


「ハイ王!! て……小豆アイス? 降ってくる?」


とりあえずの進路を倒し難い巨大ケーキ戦艦から逃れる方へと舵を切った父親パーティー。父親は前方を走り、石の板はサムを前の座席女神石像を後部へと乗せて大地をホバー走行しながら父親と歩幅を合わせた。







順調に足の速い洋菓子モンスターの追手を蹴散らしていった父親パーティーは、大きな障害にぶつかってしまった。


空を裂き降ってきた巨大な抹茶パフェ。そのずっしりとした重量を乗せた透明グラスの底で焼き菓子の道路を砕きながらその場にどっしりと鎮座した。


「なぁ抹茶パフェってェ! どっちだ!」


「生クリーム使ったらァァ! 負けです王!」


「なるほどォォ!!」


父親とサムは宙を泳ぎ襲ってきたこぼれた白玉を斬り裂き光の粒へと還し対応。

父親パーティーは目の前に現れた緑色の置物を急いで通り過ぎていく。

何かが今にも爆発しそうなのが彼の直感で分かっていたのだ。


そしてその悪い予感は的中し。


抹茶パフェは部隊を展開した。

中身の抹茶アイス、生クリーム、白玉、小豆、香ばしく焼いたくるみ、高野豆腐、栗と南瓜のプリン、揚げたきんぴらごぼう。は弾けて爆発するように透明な器から飛び出していく。

背をゆくパーティーに対し【抹茶パフェ】モンスターの自爆総攻撃が始まった。

地に突き刺さる鋭利なきんぴらごぼうミサイルをかわし。

続けて放たれたサイコロ状の高野豆腐のバズーカを白蜜は焼き尽くす。


「飯でも炊いてろよ爆破斬!」


香ばしく焼かれた猛スピードのくるみショットガンが4人を襲う。

ドカドカと電子体にぶつかりダメージを与える硬いくるみ。


「いったーーーーい!!」


「小物は食らわせておけ爆王斬!!」


ドリルのように回転し飛んで来たキンキンに冷えた抹茶アイスは瞬時にその炎球に溶かされ無力化された。


「王うええええええ!!」


大きな影で辺りが急に暗くなる。

上空から勢いよく降ってきた栗と南瓜のプリンが父親パーティーを呑み込んだ。


電子のセカイ、一瞬の静寂をおき。


乱暴に咲き乱れる巨大な炎球はその範囲にある全てを焼き尽くす、彼の仲間以外のすべてを。


「不味い、口直しに王道バニラアイスを持ってこい」


「ぶぇっぶぇっ……クレイジーぃ!」


女神石像は跳び上がりながら拍手をし、父親パーティーは難局を焼き尽くし焼き菓子の道路を進みながら追手を蹴散らしていく。



上空を舞い父親パーティーに迫り来るクッキーの編隊。どこからか復活し再び巨大ショートケーキ戦艦:甘多から出撃した洋菓子の大部隊はターゲットを切り替えたのか煎餅の里に目もくれず父親パーティーを追いかけ続けている。


「どうやら敵さんは無限に湧いてくるらしいなゲーム的すぎる!」

「経験値稼ぎといきたいところだけどゲームじゃないんだ……ヤルか」


「あはははヤッちゃいましょーー」


「じゃあ女神石像と石の板は作戦回避で迎撃しながら留守番をたのむ、ヤバくなったら乗って逃げろよ」


父親の出す指示を承諾した女神石像と石の板。


「フツウ超えだ、行くぞサム!!」


「え、王!? わわ」


父親はサムを抱きかかえて地を蹴り敵艦の方へと向かった、お姫様抱っこだ。


ぽすりと彼の腕に収まった華奢な彼女。

突然のお抱えに、


ナ、ななな! これはおひ、おひめしゃまの特集!


お姫様待遇を味わっているその間にも標的を見つけたクッキーの編隊が父親とサムを襲う。

横回転して敵を砕きに来たバタークッキーの中心を踏み、荒々しくジャンプ。

クッキーの空中階段をスタイリッシュな革靴が跳躍していく。


「遠慮せず捕まってろサム!」


「は、はい王!」


そんな台詞! 女子が言われたいヤツランキングトップデス! これがお姫様優越感!


父親は電子の荷から白蜜を取り出し瞬時に右手に装備した。サムは振り落とされないように父親の首に両腕をまわした。


「うおおおお」


ただ叫んだ。


だが至って冷静に。


片手で宙に振るわれた白蜜が襲いかかってきた余分なクッキーを焼き砕き王は正しいクッキー階道(かいどう)を駆け上がってゆく。


「じゃ投げるぞサム」


「は、ハイ王!! ……え?」


父親は彼女の両足首を掴みぐるぐるとクッキーの足場の上で回転しながら最高のタイミングで投げ放った。


「なんぬええええええ」


遠心力でスピードを得て矢のように飛んでいったサムは。

白いクリーム甲板の上にべっちゃりと顔面から着地に成功した。


「わぷぷのぷぷ、ぶぇっぺっぺっ……!!」


サムはよろりと立ち上がりクリームまみれの状態異常になった顔をぬぐい、舐めて視界を確保した。



「王! こんなのお姫様抱っこ特集にないですよーー!」



「…………」

「あはははは!! こんなのぜんぜんフツウじゃないですよおおおお王あははは」


わたしがすべきことべきこと……ふむむ? ……あ、そっか?


「これいちめん全部敵さんじゃないですか!! あははは」


サムは自分の立っている白いクリーム床を見下ろし大笑いしている。

これ全部が敵、辺り一面の敵に。


「そしてこれはフツウじゃないですよおおおおサムスペシャルってやつです!!」


やるべき事は分かり、彼女に迷いはない。

七枝刀は妖しく光を放ちサムは黄月(きいつき)色のオーラを纏い瞬時に解き放った。


七枝刀から長くうねり伸びた7本の黄月色のオーラの鋭い枝が巨大戦艦に突き刺さり鮮やかなオーラの紅い花を辺り一面満開に咲かせた。巨大で繊細な花々しいデコレーションケーキ戦艦の完成だ。


何かを吸い取り咲いた花は消え失せ対象に大きなゲームのステータスデバフがかかる。

それが隠しヒロインサムのフツウじゃないリミットメルトだ。


「あはははははカロリーの塊じゃないですかァ」


彼女が狂ったように高らかに天に笑いかけていると──。

取り囲むように現れたドーナッツぽーる、オールドファッショナー、クッキーの編隊たち。


「あはは……え? ゲゲええええ!?」


そして巨大なあずきアイスのバーが突如、サムの目の前に現れすぐさま甲板で笑い狂う異物に対して発射された。


「小豆アイスううううう!? 降るじゃなくてェジカああああ!?」


ただコミカルな動作でアワアワと慌てふためく彼女のまえに、キンキンに冷えきった巨大あずきアイスのバーは無慈悲にもその巨大質量で彼女を押し潰そうと。


瞬間。


小豆色の巨大長方形はバターのように溶かされその中途を木の棒ごと一刀両断にされた。


凄まじい熱量の紅いエネルギーの一閃が上空から甘多を斬りつけ無数の小爆発を起こし数多の洋菓子を焼き払っていく。


彼女の目の前にすたっとスタイリッシュに着地した黒いスーツと煙を上げる白蜜。


「わりぃ待たせた!! 無事かサム!? ちょこっとチョコチップが渋滞していたみたいだ、ハハ」


「あはは……フツウにブジなんだとおもいます……あははは」


父親は白蜜をケーキの地に突き刺しながらその刀身にこもった熱量をクールダウンさせ、サムと面と向き合い笑い合った。


アイスをぶった斬る王の登場に、彼女の胸に秘めたドキドキは遠に最高潮を超えている。




「お待たせっと、そんでお待ちかねだ斬りまくれ!!」


「ハイハーーイ王!!」

「あはははじゃないぽいんと大量摂取チャンスですううあはははは」


「そ、そうだな……! とりあえず斬りながらついて来いエロいゲームのデカブツ相手の戦い方を教えてやるッ」


「ハハーイ王!!」


各々、剣を握りしめた2人は白い甲板を蹴りそこかしこを考えもなしに斬りつけながら三角型の艦の中心へと駆けていった。







ブワッと、突如電子のセカイに湧いてきた洋菓子のモンスター。白い甲板の上、その一際存在感をはなつ中心部付近から続々と現れてきているようだ。


「やっぱりな、イチゴは好きかサム?」


「フツウに好きですよおおおお王!!」


「なら食べ尽くせ!!」


「ハイハああああイ!!」


白蜜と七枝刀ふたつの剣は今までのナニかを発散するように存分に暴れ回る。

邪魔をしに来た洋菓子モンスターを一蹴し。剥き出しになっているソレをいただく。


2人の男女コンビの剣刃は好き勝手にワラい踊り乱れる。


艦を彩る存在感のありすぎるその巨大な苺は父親とサムによって食べ尽くされた。


そしてトレードマークを失ったショートケーキはその消失とリンクするように敵の洋菓子モンスターの増援が止んだ。


巨大ショートケーキ戦艦:甘多は、その多くの機能をその1点に集約し過ぎていたようだ。ショートケーキとしての譲れないプライドの表れだろう。


「ナ、簡単だろ?」


「はぁはぁ……あははははい王!! こんなに巨大なのにむきだしのガバガバですッ」


「ハハっ、まさにそうだな毎度設計からやりなおせッ爆王斬!!」







「ところでサムさァん防御デバフしたか?」


「……あはははは!! すみません忘れちゃいました!! いつもより多めに斬っときますうううう!!」


「ハハハハ、ゲーム通りにいかなくてもおおおお! 多めに斬ればたしかになんとかなァァァァるゼ」


苺を食べ尽くした2人は次に白いクリームとスポンジの土台をエロいゲームの技のコンボシステムで斬り裂きダメージを重ねていく。


そしてしばらく2人の一方的な猛攻はつづき。

父親はとなりで狂い踊るサムと鮮やかに光輝く七枝刀をちらりと一目眺めて。


「よっしゃーーぞろぞろのそろそろだ」


敵の洋菓子残党部隊がぞろぞろと甲板の中心、勝手に着艦していた父親とサムの元へと集まってきた。


「こちとらデカブツ専門家でね! 斬波爆王斬!!!!」


リミットメルト。父親と白蜜を纏う紅いオーラは解き放たれた。

凄まじい熱量の紅いエネルギー斬撃が甲板を滑りながら絶妙な入射角度で巨大な甘い艦を斬り分けていく。

無数の小爆発は洋菓子モンスターたちを呑み込み焼き焦がし。

振り下ろされた美しい白い刀、白蜜は煙を上げて深呼吸した。


巨大ショートケーキ戦艦:甘多はその機能を完全に停止し焼き菓子の道路へと鈍い衝突音を上げながら墜落していった。



「月のオカマほどにもないぜ、ハハハハ」


「あははははははは、これがわたしの王の全力!! あはははは────」



ついに決着した巨大ショートケーキ戦艦:甘多と父親パーティーの電子セカイの中の小さな戦争。甲板の上にはその巨大な戦果で得た高揚感を消化するように、いつまでも狂い笑うふたりがいた。

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